ええ、婚約破棄は構いませんが、今まで貸したお金は返してくださいね?

水垣するめ

文字の大きさ
3 / 4

3話

しおりを挟む

「きっちりと今まで貸したお金は借用書を用意してありますよ」

 私は一枚一枚ニックに見せていく。
 合計百枚くらいあるが、ニックに全部払わせるためならそれぐらいの苦労はあって無いようなものだ。

「サインが偽物だと言うなら筆跡鑑定に出しますし、指紋が偽物だというなら、今ここで指紋を提出してもらいます。どちらもしっかりと確認してもらいましょう。ね?」

 私は一歩ニックに詰め寄る。

「クソッ! 何なんだ!」

 ニックは一歩後ずさりをした。
 それをとある人物が止めた。

「おいおい、それはダサイぞ。しっかり借りたもんは返そうぜ?」
「そうですよ。借用書という証拠があるんですから、言い逃れは出来ないですし」

「サム様、ノエル様」

 その人物は公爵家のサム・ウェードと王子のノエル・ケントだった。
 どちらも学園で仲良くさせてもらっていた二人だ。
 サムは黒髪と黒目で、ノエルは金髪に青い目の、いわゆるイケメンだ。
 どうやら私が困っていると見て加勢に来てくれたらしい。

 ただ、私が知っている二人はこんなふうに協力し合うような仲では無かったはずだ。

「借りた金は返すのが道理ってもんだよな」
「そうですね。逃げようなんてするのは男の風上にもおけません。ローラには相応しくない」

 息ピッタリの二人はニックを追い詰める。

「あんなに仲悪いのに、なんで今はそんなに結託してるんですか……」

「愛のなせる業ですよ」
「愛のなせる業……?」

 私は首を捻る。
 なんで愛が今関係あるのだろうか。

「とにかく、支払うか、支払わないか、どっちなんだ?」
「支払わない、なんて言ったら、どうなるか分かってますよね……?」

 この国の権力者である二人にそんなことを言われて頷かない人物はいるのだろうか。

「は、はい……」

 ニックが怯えながら頷いた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

婚約破棄がお望みならどうぞ。

和泉 凪紗
恋愛
 公爵令嬢のエステラは産まれた時から王太子の婚約者。貴族令嬢の義務として婚約と結婚を受け入れてはいるが、婚約者に対して特別な想いはない。  エステラの婚約者であるレオンには最近お気に入りの女生徒がいるらしい。エステラは結婚するまではご自由に、と思い放置していた。そんなある日、レオンは婚約破棄と学園の追放をエステラに命じる。  婚約破棄がお望みならどうぞ。わたくしは大歓迎です。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

どうかそのまま真実の愛という幻想の中でいつまでもお幸せにお過ごし下さいね。

しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、私は婚約者であるアルタール・ロクサーヌ殿下に婚約解消をされてしまう。 どうやら、殿下は真実の愛に目覚めたらしい……。 しかし、殿下のお相手は徐々に現実を理解し……。 全五話

「婚約破棄だ」と笑った元婚約者、今さら跪いても遅いですわ

ゆっこ
恋愛
 その日、私は王宮の大広間で、堂々たる声で婚約破棄を宣言された。 「リディア=フォルステイル。お前との婚約は――今日をもって破棄する!」  声の主は、よりにもよって私の婚約者であるはずの王太子・エルネスト。  いつもは威厳ある声音の彼が、今日に限って妙に勝ち誇った笑みを浮かべている。  けれど――。 (……ふふ。そう来ましたのね)  私は笑みすら浮かべず、王太子をただ静かに見つめ返した。  大広間の視線が一斉に私へと向けられる。  王族、貴族、外交客……さまざまな人々が、まるで処刑でも始まるかのように期待の眼差しを向けている。

あなたの思い通りにはならない

木蓮
恋愛
自分を憎む婚約者との婚約解消を望んでいるシンシアは、婚約者が彼が理想とする女性像を形にしたような男爵令嬢と惹かれあっていることを知り2人の仲を応援する。 しかし、男爵令嬢を愛しながらもシンシアに執着する身勝手な婚約者に我慢の限界をむかえ、彼を切り捨てることにした。 *後半のざまあ部分に匂わせ程度に薬物を使って人を陥れる描写があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~

山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。 この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。 父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。 顔が良いから、女性にモテる。 わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!? 自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。 *沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

婚約破棄ですか? では、最後に一言申しあげます。

にのまえ
恋愛
今宵の舞踏会で婚約破棄を言い渡されました。

飽きたと捨てられましたので

編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。 計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。 横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。 ※7000文字前後、全5話のショートショートです。 ※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。

処理中です...