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3話
しおりを挟む「え?」
「あ、もちろん嫌でしたら断ってもらっても大丈夫です。簡単に見せれるものではないでしょうし」
「……いや、どうせ放っとけばあと数週間で破産するんだ。このまま何もしないより、何か足掻いて終わる方がよほどいい。ついてきな」
店主はニカッと笑うと立ち上がり店の中へ入っていった。
私もそれに付いていく。
「私から言っておいてなんですけど、いいんですか……?」
「ああ。どうせ俺じゃ何にもできなかったんだ。それにもし嬢ちゃんが商会を乗っ取ろうとしてたとしても、こんなボロ商会すぐに潰れるから問題ねぇ。結局、嬢ちゃんに任せた方が得なのさ」
「なるほど」
商人らしい損得勘定に思わず感心した。
「そうだ、まだ名乗ってなかったな。俺の名前はヒューズ・カーライル。一応このカーライル商会の会長だ」
「私は……ミアです。訳あって家名は無くなったのですが、どうかよろしくお願いします」
「よろしくお願いするぜ。これが帳簿とか、その他諸々の書類だ」
ヒューズから渡された書類はスコット公爵家で処理していた量の十分の一も無かった。それどころか、本一冊程度しか無い。
「それでは今から確認しますね」
「おう、一週間ぐらいかかるか?」
「いえ、一時間あれば十分です」
「一時間!?」
ヒューズは驚愕の声をあげる。
「嬢ちゃん! この量の書類を一時間で目を通すなんて無理だ! だって大商会に務めてるエリートですらその量は一日かかる!」
「大丈夫です。見ていてください」
私は椅子に座り、テーブルの上に書類を広げる。
そして息を吸うと集中。
思考の海に沈んでいった。
一時間後。
私は書類から顔をあげた。
「終わりました」
「おお……本当に終わったのか?」
「はい、では適当なページの数字を質問してください」
ヒューズは半信半疑ながらも質問する。
「じゃあ三八ページの売上金額は?」
「銀貨十六枚ですね」
私は三八ページを開いて見せる。
「ほ、ほんとに合ってる……」
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