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5話
しおりを挟む「あの、会計士は他に何人雇っていますか?」
「はぁ? ゼロに決まっているだろう? 何を言っているんだ」
「え……?」
商会の会長はリチャードの言葉に固まる。
「失礼ですが、公爵家の仕事は会計士一人では到底回せるとは思えないのですが……」
「ハハッ! 何を言っているんだ! 今までは一人で全部回せていたぞ!」
「そんなバカな……」
(一人で公爵家の仕事を回せる処理能力なんて、そんなのウチにもいないんだぞ!)
「いいから一人私の方に回してくれ。出来るだけ優秀な人物をな」
「は、はぁ……」
会長は戸惑いながらも頷く。
到底一人で足りるような量では無いはずなのだが、何故かリチャードは自信満々だし、自分は貴族ではないので知らないのかと取り敢えず無理矢理に納得するしかなかった。
「では今日から一人人材を向かわせます」
「うむ、これからも末永く取り引きを続けていこう
」
リチャードは会長に手を差し出し握手を求めた。
会長はその手を握り返した。
この後、スコット家へと一人会計士が派遣された。
腕利きの会計士を嘘をついて派遣しなかったことによる罪悪感から、腕利きとまでは言わないもののそこらの会計士よりは余程優秀な人材が送り込まれた。
そして一週間経った。
リチャードが突然ミシル商会へと怒鳴り込んできた。
「これはどういうことだ!」
「何か問題がありましたでしょうか……?」
「どうもこうも、お前のところが寄越してきた会計士が全く使い物にならん! たった三日徹夜しただけで不満を述べるなど言語道断だ! 軟弱過ぎる!」
「え? いや、三日徹夜……?」
会長は驚愕の情報に一瞬思考が止まる。
三日徹夜させられたら、いくらなんでも不満は出るのではないだろうか?
それも一人で公爵家の仕事をさせられているんだ。当然ですらある。
しかし暴走したリチャードは止まらない。
「私をコケにしおって! もうお前のところとは取り引きを行わない! そして今回のことを公表してやる!」
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