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14話
しおりを挟む「くそっ! このままでは終わらないぞ!」
想像を絶する屈辱から、俺は拳を街の石畳に叩きつけた。
あの後、俺は速やかに王宮と学園から追放された。
貰えたのは一ヶ月生活ができるかどうかの金だけ。
「クーデターを起こしてやる……!」
あの場では流石に形成が悪すぎたから大人しく従っているフリをしていたが、当然俺はこの理不尽な仕打ちを受け入れた訳ではない。
幸い、皇太子という立場なので今の国王に不満を持っている貴族や、市民グループにはある程度知っている。
プライス夫妻がその一例だ。
そういった奴らに声をかけて、政治的、もしくは武力的に今の国王追放することが出来れば、俺はまた王族として返り咲ける……!
「しかし、まずは金だ」
何をするにもまずは金がいる。
生活するために働かなくてはならない。
俺は立ち上がり、ふらふらと街を歩いた。
あれから一ヶ月が経った。
結論から言うと、俺は一文無しになっていた。
どこにも雇ってもらうことが出来なかったのだ。
俺の悪評が国中に知れ渡っていたからだ。
このままでは俺は食事すらまともに取れず死んでしまう。
そうなれば王族へ戻るという野望も潰える。
空腹で空回りする思考を必死に回す。
(くそくそくそっ!)
現在、金が無くなって宿も取れなくなった俺は、公園のベンチで頭を抱えていた。
着ていた服はボロボロになり、常に腹を空かしている惨めな状態だ。
(ルナ、アイツは絶対に許さない!)
「あなた様がレオ様ですね?」
突然声をかけられた。
顔を上げると、隣に一人の女性が立っていた。
「誰だ、お前は」
「私は太陽商会の者でございます」
「太陽商会だと!」
俺はその名前を聞いて歓喜した。
太陽商会は今の国王を嫌っている勢力の中でも最大の商会と言っていい。
本拠地が王都では無く遠くにあるので会いに行けなかったが、あちらから会いに来てくれるとは……!
「今回はあなた様にお話があって参りました」
「本当か!」
「はい、あなた様を太陽商会で雇用したく存じあげます」
「雇用だと?」
「あなた様を安易に迎え入れてはこちらが謀反を起こすのではと嫌疑をかけられますので」
「なるほどな、雇用したフリをするのか」
「はい、なのでこちらの形だけの契約書にサインして頂きたく」
女性が俺に紙とペンを差し出してきた。
これが偽の契約書だということだろう。
「ああ! サインするとも!」
俺は嬉々としてその契約書にサインをした。
これで王族へ返り咲ける!
「では、あなた様のこれからの住まいに案内いたします」
「なに? 早く案内してくれ! ずっと腹が減っているんだ!」
俺は上機嫌に女性へとついていく。
この先の未来が明るいものであると信じて。
★★★
「会長、全て完了いたしました」
「ありがとう、アリアナ。あなたの演技は一流ね」
私、ルナは月夜商会の会長部屋でアリアナから報告を受け取った。
「それにしても、こんなので引っ掛かるとは思いませんでした」
「私達が太陽商会を買収したのを知らなかったのでしょう。秘密裏に行ったしね。それにしても頭が足りてないと思うけど」
私は机の前の一枚の紙を手に取る。
それはレオがサインをした契約書だった。
「おまけに、内容も見ないでサインするなんて、本当に救えないわね」
「恐らく、空腹で頭が回っていなかったのでしょう」
「それならしょうがないかしら」
レオが働いて金を得られないようにしたのは私だった。
街に悪評を流し、レオを雇わないように根回しをした。
そしてレオが疲弊しきったところで、甘い話を持ちかける。
人は追い詰められたときほど、突然現れた希望に縋りたくなるから。
「これでレオは私達のお人形も同然、好きなように使って、好きなように処分できる。ま、せいぜい頑張ってもらいましょう?」
私は薄く微笑んだ。
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