14 / 15
14話
「くそっ! このままでは終わらないぞ!」
想像を絶する屈辱から、俺は拳を街の石畳に叩きつけた。
あの後、俺は速やかに王宮と学園から追放された。
貰えたのは一ヶ月生活ができるかどうかの金だけ。
「クーデターを起こしてやる……!」
あの場では流石に形成が悪すぎたから大人しく従っているフリをしていたが、当然俺はこの理不尽な仕打ちを受け入れた訳ではない。
幸い、皇太子という立場なので今の国王に不満を持っている貴族や、市民グループにはある程度知っている。
プライス夫妻がその一例だ。
そういった奴らに声をかけて、政治的、もしくは武力的に今の国王追放することが出来れば、俺はまた王族として返り咲ける……!
「しかし、まずは金だ」
何をするにもまずは金がいる。
生活するために働かなくてはならない。
俺は立ち上がり、ふらふらと街を歩いた。
あれから一ヶ月が経った。
結論から言うと、俺は一文無しになっていた。
どこにも雇ってもらうことが出来なかったのだ。
俺の悪評が国中に知れ渡っていたからだ。
このままでは俺は食事すらまともに取れず死んでしまう。
そうなれば王族へ戻るという野望も潰える。
空腹で空回りする思考を必死に回す。
(くそくそくそっ!)
現在、金が無くなって宿も取れなくなった俺は、公園のベンチで頭を抱えていた。
着ていた服はボロボロになり、常に腹を空かしている惨めな状態だ。
(ルナ、アイツは絶対に許さない!)
「あなた様がレオ様ですね?」
突然声をかけられた。
顔を上げると、隣に一人の女性が立っていた。
「誰だ、お前は」
「私は太陽商会の者でございます」
「太陽商会だと!」
俺はその名前を聞いて歓喜した。
太陽商会は今の国王を嫌っている勢力の中でも最大の商会と言っていい。
本拠地が王都では無く遠くにあるので会いに行けなかったが、あちらから会いに来てくれるとは……!
「今回はあなた様にお話があって参りました」
「本当か!」
「はい、あなた様を太陽商会で雇用したく存じあげます」
「雇用だと?」
「あなた様を安易に迎え入れてはこちらが謀反を起こすのではと嫌疑をかけられますので」
「なるほどな、雇用したフリをするのか」
「はい、なのでこちらの形だけの契約書にサインして頂きたく」
女性が俺に紙とペンを差し出してきた。
これが偽の契約書だということだろう。
「ああ! サインするとも!」
俺は嬉々としてその契約書にサインをした。
これで王族へ返り咲ける!
「では、あなた様のこれからの住まいに案内いたします」
「なに? 早く案内してくれ! ずっと腹が減っているんだ!」
俺は上機嫌に女性へとついていく。
この先の未来が明るいものであると信じて。
★★★
「会長、全て完了いたしました」
「ありがとう、アリアナ。あなたの演技は一流ね」
私、ルナは月夜商会の会長部屋でアリアナから報告を受け取った。
「それにしても、こんなので引っ掛かるとは思いませんでした」
「私達が太陽商会を買収したのを知らなかったのでしょう。秘密裏に行ったしね。それにしても頭が足りてないと思うけど」
私は机の前の一枚の紙を手に取る。
それはレオがサインをした契約書だった。
「おまけに、内容も見ないでサインするなんて、本当に救えないわね」
「恐らく、空腹で頭が回っていなかったのでしょう」
「それならしょうがないかしら」
レオが働いて金を得られないようにしたのは私だった。
街に悪評を流し、レオを雇わないように根回しをした。
そしてレオが疲弊しきったところで、甘い話を持ちかける。
人は追い詰められたときほど、突然現れた希望に縋りたくなるから。
「これでレオは私達のお人形も同然、好きなように使って、好きなように処分できる。ま、せいぜい頑張ってもらいましょう?」
私は薄く微笑んだ。
あなたにおすすめの小説
殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~
和泉鷹央
恋愛
忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。
彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。
本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。
この頃からだ。
姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。
あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。
それまではとても物わかりのよい子だったのに。
半年後――。
オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。
サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。
オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……
最後はハッピーエンドです。
別の投稿サイトでも掲載しています。
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
【完結済み】妹の婚約者に、恋をした
鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。
刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。
可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。
無事完結しました。
ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります
奏音 美都
恋愛
ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。
そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。
それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ?
志鷹 志紀
恋愛
「すまない、キミのことを愛することができなくなった」
第二王子は私を謁見の間に連れてきて、そう告げた。
「つまり、婚約破棄ということですね。一応、理由を聞いてもよろしいですか?」
「キミの妹こそが、僕の運命の相手だったんだよ」
「そうですわ、お姉様」
王子は私の妹を抱き、嫌な笑みを浮かべている。
「ええ、私は構いませんけれど……あとで後悔しても知りませんよ?」
私だけが知っている妹の秘密。
それを知らずに、妹に恋をするなんて……愚かな人ですね。
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)