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二章
12話
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「美琴のお母様達と?ーーー」
清鷹が出勤の準備をする手を止めて、その格好のいい眉を顰める。
あれから暫くたって、相変わらず美琴は清鷹に夜半の営みでは強く当たられている。
清鷹の底なしの体力で抱き潰されて、美琴は昼前までベッドでほぼ気絶状態という日々が続いていた。
しかし、今に限っては大事なことを伝える為に美琴は気合いで起きて出勤前の清鷹を捕まえていたのだった。
夜になると話が通じなくなる。話すなら今だった。
「え、ええ。母も弟が大きくなってきて手もかからないし、その、道雄 義父様達と夕食を食べにいかないかって」
「手もかからないと言っても吾妻さんのところの子はまだ確か九つだろう…?」
吾妻というのは美琴の母、美月の第三夫の姓である。
まずい、やはり疑っているのかーーー美琴は内心冷や汗がでる思いである。
「まあ、いい…。わかった、行っておいで。
」
「え?ーーーいいの!?」
「いいの、も何も自由だし、美琴も行くつもりなんだろう?気をつけて行くんだよ。」
清鷹が僅かに微笑みを浮かべた。
「は、はい…。」
(何だか目が笑っていないけれど…、とりあえず許可を取ったということでいいんだよね…?)
数日後ーーー
清鷹には角が立たない様に家族とディナーだと伝えていたが、実はその日美琴は母親に誘われて夜会に参加をするのだった。夜会と言っても主催者の屋敷で知り合い同士が集う小規模なパーティーだと聞いている。
夕方、義父の 吾妻道雄が母、美月を乗せて車で美琴のマンションまで迎えにきてくれた。案内され車に乗り込むとめかし込んだ美月と弟の道也も乗っていた。
「道也!久しぶり~、お兄様にぎゅーってさせてよ!」
清鷹との結婚生活が始まってから久しぶりの再会にはしゃぐ美琴。
「もう、美琴ちゃん!やめてよ~!」
道也もまんざらでもない様子だった。
「道也もドライブがてら連れてきたんだよ。帰りはちょっと前に連絡くれればまたすぐ向かうから、よろしくね。」
と道雄が朗らかに言う。
「え…?道雄 義父様、参加しないんですか?」
寝耳に水の美琴は驚いて聞き返した。
「うん。僕にはあまり縁のない方々だし場違いだからね。ああ、でも主催者は美月さんとは古くからお付き合いがある方だし、よくみてもらえる様に計らっているから怖いことはないよ。」
道雄は美琴の母、美月より若く他の夫達とは違って大手企業の管理職の任に就く勤め人である。決して肩身が狭いというわけではないが遠慮しているらしい。
「美月さん、飲みすぎちゃうところがあるからよく美琴さんが見てあげてね。」
「それは昔の話です。今は抑えていますよ…。」
母が拗ねた様に言った。
「美琴ちゃん、ばいば~い。またね!」
道雄達と別れ、美琴は会場であるレトロな雰囲気の洋館を見回す。
(すごく広いお屋敷…。小規模でやるって言ってたのに。)
美琴は予想外のことにまごついた。
パーティールームに案内され、改めて主催者に挨拶をした。美琴を見て、
「いやぁ、暫くみない間にこんなにもお母様とそっくりになられて…!」
と驚いた様子だった。美琴は全く覚えていないが、昔会ったことがあるらしい。
主催者の山倉という中年の紳士は、不可思議なものでも見る様に美琴と美月を見比べた。
「お若い頃の美月さんと瓜二つですね。」
若い頃と、表現した主催者を揶揄う様に、美月が、
「おや、私はそんなに変わりましたか?」
とちくりと言った。
「まさか…!前にも増してより美しくなられたということですよ。」
主催者が言い繕い、美月がクスクス笑う。そのまましばし歓談をした。
一通り挨拶が終わった頃、
「ねえ、角谷さん!久しぶり!元気でしたか?」
母、美月よりも少し上といった具合の年頃の穏やかそうな産胎が高揚した様子で、母の角谷姓を呼んだ。
産胎は複数の夫を持つ為、夫婦は別姓である。
「有本さん!?お久しぶり!何年振りでしょう?お会いできて嬉しいです!」
母がにわかにはしゃいだ。
「美琴、この方はね。有本静流さんと言ってね、正義お父様と結婚する前から大変お世話になっている方なんですよ。最近は会えていなかったけれど…。」
「おや、そちらが例の…。噂通り、非の打ち所がない美しい子ですね。確かご結婚されたとか…。」
お世辞を言われてしどろもどろしながら、
「和泉美琴です。初めまして…」
と挨拶する。
「うちの息子も紹介しますね。奏助、こちらにいらっしゃい。」
近くにいた若い真性が、こちらに歩み寄る。
立ち止まり美琴達にお辞儀をする。
「初めまして、斎賀奏助と申します。」
美琴はこちらを見つめる奏助にしばしみとれた。奏助のふんわりして且つサラサラとした髪は色素が薄く爽快感を感じさせた。僅かに眦が下がった二重でくっきりとした目と幅狭の高い鼻をもち全体的に西洋的な雰囲気がある。清鷹よりは細身だがそれでも背が高く、しなやかな筋肉がついている。長い脚がスマートな印象を持たせた。清鷹が纏う和の美しさとはまた違った種類の美麗さだった。何よりも清鷹の凛々しい雰囲気とは真逆の優しそうな印象である。
(すごい…。何だか御伽話にでてくる王子様みたい。)
「奏助、こちらは旧友の角谷美月さん、と、そのご子息の美琴さんだよ。…次男の奏助は今年大学を卒業したばかりで…」
紹介されている間、美琴は奏助からの視線を感じて、恥ずかしくなって俯いた。
(さっき見つめちゃったから変な人だと思われたかな…。)
そんな美琴達の様子を母、美月は興味深そうに観察していた。
清鷹が出勤の準備をする手を止めて、その格好のいい眉を顰める。
あれから暫くたって、相変わらず美琴は清鷹に夜半の営みでは強く当たられている。
清鷹の底なしの体力で抱き潰されて、美琴は昼前までベッドでほぼ気絶状態という日々が続いていた。
しかし、今に限っては大事なことを伝える為に美琴は気合いで起きて出勤前の清鷹を捕まえていたのだった。
夜になると話が通じなくなる。話すなら今だった。
「え、ええ。母も弟が大きくなってきて手もかからないし、その、道雄 義父様達と夕食を食べにいかないかって」
「手もかからないと言っても吾妻さんのところの子はまだ確か九つだろう…?」
吾妻というのは美琴の母、美月の第三夫の姓である。
まずい、やはり疑っているのかーーー美琴は内心冷や汗がでる思いである。
「まあ、いい…。わかった、行っておいで。
」
「え?ーーーいいの!?」
「いいの、も何も自由だし、美琴も行くつもりなんだろう?気をつけて行くんだよ。」
清鷹が僅かに微笑みを浮かべた。
「は、はい…。」
(何だか目が笑っていないけれど…、とりあえず許可を取ったということでいいんだよね…?)
数日後ーーー
清鷹には角が立たない様に家族とディナーだと伝えていたが、実はその日美琴は母親に誘われて夜会に参加をするのだった。夜会と言っても主催者の屋敷で知り合い同士が集う小規模なパーティーだと聞いている。
夕方、義父の 吾妻道雄が母、美月を乗せて車で美琴のマンションまで迎えにきてくれた。案内され車に乗り込むとめかし込んだ美月と弟の道也も乗っていた。
「道也!久しぶり~、お兄様にぎゅーってさせてよ!」
清鷹との結婚生活が始まってから久しぶりの再会にはしゃぐ美琴。
「もう、美琴ちゃん!やめてよ~!」
道也もまんざらでもない様子だった。
「道也もドライブがてら連れてきたんだよ。帰りはちょっと前に連絡くれればまたすぐ向かうから、よろしくね。」
と道雄が朗らかに言う。
「え…?道雄 義父様、参加しないんですか?」
寝耳に水の美琴は驚いて聞き返した。
「うん。僕にはあまり縁のない方々だし場違いだからね。ああ、でも主催者は美月さんとは古くからお付き合いがある方だし、よくみてもらえる様に計らっているから怖いことはないよ。」
道雄は美琴の母、美月より若く他の夫達とは違って大手企業の管理職の任に就く勤め人である。決して肩身が狭いというわけではないが遠慮しているらしい。
「美月さん、飲みすぎちゃうところがあるからよく美琴さんが見てあげてね。」
「それは昔の話です。今は抑えていますよ…。」
母が拗ねた様に言った。
「美琴ちゃん、ばいば~い。またね!」
道雄達と別れ、美琴は会場であるレトロな雰囲気の洋館を見回す。
(すごく広いお屋敷…。小規模でやるって言ってたのに。)
美琴は予想外のことにまごついた。
パーティールームに案内され、改めて主催者に挨拶をした。美琴を見て、
「いやぁ、暫くみない間にこんなにもお母様とそっくりになられて…!」
と驚いた様子だった。美琴は全く覚えていないが、昔会ったことがあるらしい。
主催者の山倉という中年の紳士は、不可思議なものでも見る様に美琴と美月を見比べた。
「お若い頃の美月さんと瓜二つですね。」
若い頃と、表現した主催者を揶揄う様に、美月が、
「おや、私はそんなに変わりましたか?」
とちくりと言った。
「まさか…!前にも増してより美しくなられたということですよ。」
主催者が言い繕い、美月がクスクス笑う。そのまましばし歓談をした。
一通り挨拶が終わった頃、
「ねえ、角谷さん!久しぶり!元気でしたか?」
母、美月よりも少し上といった具合の年頃の穏やかそうな産胎が高揚した様子で、母の角谷姓を呼んだ。
産胎は複数の夫を持つ為、夫婦は別姓である。
「有本さん!?お久しぶり!何年振りでしょう?お会いできて嬉しいです!」
母がにわかにはしゃいだ。
「美琴、この方はね。有本静流さんと言ってね、正義お父様と結婚する前から大変お世話になっている方なんですよ。最近は会えていなかったけれど…。」
「おや、そちらが例の…。噂通り、非の打ち所がない美しい子ですね。確かご結婚されたとか…。」
お世辞を言われてしどろもどろしながら、
「和泉美琴です。初めまして…」
と挨拶する。
「うちの息子も紹介しますね。奏助、こちらにいらっしゃい。」
近くにいた若い真性が、こちらに歩み寄る。
立ち止まり美琴達にお辞儀をする。
「初めまして、斎賀奏助と申します。」
美琴はこちらを見つめる奏助にしばしみとれた。奏助のふんわりして且つサラサラとした髪は色素が薄く爽快感を感じさせた。僅かに眦が下がった二重でくっきりとした目と幅狭の高い鼻をもち全体的に西洋的な雰囲気がある。清鷹よりは細身だがそれでも背が高く、しなやかな筋肉がついている。長い脚がスマートな印象を持たせた。清鷹が纏う和の美しさとはまた違った種類の美麗さだった。何よりも清鷹の凛々しい雰囲気とは真逆の優しそうな印象である。
(すごい…。何だか御伽話にでてくる王子様みたい。)
「奏助、こちらは旧友の角谷美月さん、と、そのご子息の美琴さんだよ。…次男の奏助は今年大学を卒業したばかりで…」
紹介されている間、美琴は奏助からの視線を感じて、恥ずかしくなって俯いた。
(さっき見つめちゃったから変な人だと思われたかな…。)
そんな美琴達の様子を母、美月は興味深そうに観察していた。
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