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SS ドッペルゲンガー

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ちょっと思いついたので、またSSを書きました
これからもまた書くかも!





 ある日、俺のもとに、とんでもない案件が舞い込んできた。
 俺の治療術はちまたでも評判だ。
 だからといって……これは……なあ……?

 俺の元へ持ち込まれたのは、一体の生首だった。

「おい、なんなんだこれ……」

 持ち込んできたのは、知り合いの奴隷商の男。
 怪しいルートからいろいろ奴隷を仕入れてくる、変なやつだ。
 そいつが今回持ち込んだのは、生首だった。
 生首は、顔が誰かもわからないほど、焼けただれていた。
 鼻はつぶれ、目はえぐりとられ、歯も抜けている。
 正直いって、悲惨だ。

「実はよぉこれ、生きてるんだぜ」
「はぁ……? ほ、本当か……?」

 なんと、このボロボロの生首が、生きているのだという。
 だが、生首だぞ……?
 生首が生きているって、そんなこと、あり得るのか……?

「エルドさん、あんたならこいつを治療できると思ってな。まあ、あとはよろしく頼む」
「まあ、やるだけやってみるよ……」

 とはいってもなぁ……。
 生首を治療だなんて、そんなこと、できるのか……?
 ええい、ままよ。
 俺は、生首に回復魔法を施した。
 すると、生首の顔が、だんだん綺麗になっていく。
 目が生え、鼻がもとに戻り、歯が生えた。

 すると生首は、本当に生きていたようで、あたりをキョロキョロ見回した。
 そして、口を開いた。
 まじで生きてたのか……!

「あれ……? ここどこ……? あれ……私しゃべれるようになってる。目も見える……! あなたが治してくれたの……?」
「あ、ああ…………」
「ありがとうございます……! ありがとうございます……! 一生あのままかと思っていました……」
「あ、ああ…………」

 俺は、困惑していた。
 なぜなら、その生首の顔、その顔には、見覚えがあったからだ。
 少し前に治療した、デュラハンの少女アリーナ。
 ここにある生首は、そのアリーナの顔と酷似していた。

「お、お前……名前はアリーナか……?」
「え……? な、なんで私の名前を……?」
「やっぱりな……」

 そういえばアリーナは、斬首刑にあったのだと言っていたな。
 だが、アリーナは死ねなかった。
 そして、アリーナは首無しの身体となったのだ。
 なら、その首はどこに……?
 そう、首のほうも生きていてもおかしくないはずだ。
 ここにいる生首、それこそが、アリーナの生き別れた半身だ。

「実は……」

 俺はアリーナに、事の顛末を話した。

「えええええ……!? じゃ、じゃあ私が二人いるってことですか……!?」
「うん、まあ、そうなるな……」
「ど、どうしましょう…………」
「どうしようもないんじゃないか……? 二人に分裂したからといって、どちらかを殺すようなこともできんだろう? 二人の人間として生きていくしかないだろう」
「そ、それはそうですけど……」
「よし、とりあえず治療を完成させてしまおう」

 俺は、生首のアリーナに、さらに回復魔法をかけた。
 すると、なんと生首から身体が再生した。
 これで、この世界に完全なアリーナが、二人存在することになる。

「治療、ほんとうにありがとうございます! だけど……どうしましょう……私が二人だなんて……」
「とりあえず、会ってみるか? それで話し合ったらどうだ?」
「えぇ……!?」

 ということで、アリーナを買っていった公爵と連絡をとる。
 数日して、屋敷にアリーナがやってきた。
 アリーナとアリーナが対面する。

「まさか、こんなことになるなんてね……」
「まあでも、首も生きてたんなら、こうなるか……」
「どうする……?」
「どうしようか……」

 二人はなにやら話し合った結果、これからは双子の姉妹を名乗って生きていくことにしたそうだ。
 せっかくなので、一緒にいたほうが、なにかと便利だと思ったのだ。

「これはこれで楽しいかもね……!」
「そうね。自分が二人いるって、なんだか素敵。夢のようだわ……!」

 これにて一件落着。
 アリーナ2号も、アリーナを買って行った公爵の家でお世話になることになった。
 これからは二人仲良く、うまくやっていくのだろう。
 俺も、自分が二人いたら、って空想したことがある。
 一人は昼寝していて、もう一人に仕事させたりな。
 
 だが、物語はこれでほんとうにハッピーエンドでいいのだろうか……?
 俺はふと、疑問が残った。
 アリーナのもともとの魂は、どうなったんだ……?
 それに、もしもだ。
 
 もし、再びアリーナの身体がちぎれることがあったら、その場合はどうなる?
 もしまたアリーナが斬首されたとしたら、今度は死ねるのか?
 また、首と体にわかれて生きることになるのだろうか。
 
 その場合、また治療すれば、また分裂できるのだろうか。
 もしかしたら、アリーナはプラナリアのように、無限に分身できるんじゃないのか……?
 そんな恐ろしい発想を、実際に試す気にはならないが……。
 だが、俺の中で、ほんの少し疑問が残った。
 考えただけで、少しぞっとしてしまう。
 あまり深くは考えないようにしよう……。



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