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第38話設定を盛ってくる先輩の話
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ドンとお茶とせんべいが用意され、僕らは椅子に腰を掛ける。
向かい合うように座った安綱先輩は改めて大きめの声で自己紹介を始めた。
「よし! 俺の名前は安綱 哲夫。ごらんのとおり刀剣部の部長だ!」
初顔の神木さんに向けた挨拶に神木さんは頭を下げた。
「よろしくお願いします先輩。……あの、突飛なことを窺うようで申し訳ないんですが……安綱先輩って転生したんですか?」
「ぶふぉ!」
神木さんものすごくストレート。
僕も思わず噴き出してしまった。
僕はサッと視線を逸らして、口笛を吹く。
実は気になってしょうがなかったらしい神木さんの質問に、胡乱気な安綱先輩の視線が僕に飛んできた。
「お前な……まず最初にそれ言うか?」
「いや、面白いかなって」
「面白がってくれりゃぁ儲けもんなんだがな。……まぁそうだ。俺は前世の記憶がある」
ただ安綱先輩も隠しているわけではないので、あっさりと認めた。
「えぇ! 冗談ではなく? ……ってことは異世界とか?」
「……? 異世界? いやいや、そいつはよくわかんねぇが、なんだそりゃ?」
「……何でもないです」
神木さんは何やら思い当たるところがあったようだが赤い顔で黙り込んだ。
おおよそ察しがつくが、どうやら何かを勘違いしたらしい。
安綱先輩はサラリと後輩の発言を流してパンと自分の膝を叩いた。
「俺の記憶はだいぶん昔の話しさ。天暦……つってもわかんねぇかな。平安頃、おらぁあいも変わらず鉄を叩いてた記憶がある」
そう説明した安綱先輩の言葉に神木さんは理解を示した。
「ああ、転生ってそういう……」
「妄想の類かもしんねえけど、知ってるんだから仕方がねぇ。確かにじじいまで生きてたはずが、また赤ん坊からやり直しだ。虫やら畜生じゃなかっただけマシだがね。まぁ今となっちゃ一発ネタみたいなもんだ」
「い、一発ネタですか?」
「そうとも。面白い秘密は一つくらいネタに取っといて損はねぇ。こいつのアレだ、模型みてぇなもんだ」
ニヤリと笑い、僕の方を見る安綱先輩だがネタと一緒にしないで欲しいと僕は思うわけだ。
「ネタとは何ですか。僕のはガチのやつです」
「そうかい? まぁそうか。でなきゃあそこまで熱は入らねぇよな。未だに冗談にしか思えねぇが」
「転生ネタ一発目で突っ込んでくる人に言われたくないです。刀が本物じゃなければ信じてもないですよ」
お互い深く頷く。
もちろん僕だって、安綱先輩がすこぶるガチの職人なのは心得ているところだった。
「ともかく、もう一回鉄を叩けると思うと、おらぁ心が躍ったよ。でだ、ガキの頃からどうにか鍛冶をしようと色々走り回ってやってるわけだ」
昔を懐かしみ、何かを噛みしめている安綱先輩に、神木さんは妙に感心しているようだった。
「そんなことってあるんですね」
「おうとも。ホントか嘘かはお前さんの判断に任せるよ。どうせこいつの模型部に入ったってことは、お前さんも普通じゃあるめぇ。そういうのは都合のいいように説明すりゃいいのさ。どうせ説明したって伝わらねぇ類の話だろう?」
「……」
安綱先輩の言葉に当然神木さんも思うところはあったようだが、特に何か言うでもなく神木さんは素直に頷いていた。
「……はい。そうさせてもらいますね」
「……はっはっは。いいね。そうしときな。まぁ過去を知ってるっていうのも面白いもんなんだぜ? 昔とは違うとこもあったりな、退屈する暇がねぇさ」
「違うところですか?」
「ああ、ガキの頃にいろんな鍛冶場を回ってな? 設備はすげぇ進化してんだが、逆に肝心なもんがなくなってるって気が付いた」
「なくなってるもの……ですか?」
神木さんを気に入ったのか、安綱先輩は饒舌に語る。
ただこれに関しては、この後の話題に無関係ではなさそうだった。
「ああ。妖怪の素材だよ。昔は必ず置いてあったんだけどな」
「……うそだぁ」
そしてガッツリと妖怪がらみの話もしてくる安綱先輩。
内容については神木さんはいやいやと首を振り信じていないようだが、安綱先輩曰く昔はもっと妖怪も身近だったらしい。
「嘘なもんか。んでおらぁ刀鍛冶だが、まぁ言ったら妖刀が何より打ちたかったもんだからよ。自分で鍛冶場を開くしかねぇと……」
「ちょっと待って……妖刀って言いましたか?」
思わず聞き返す神木さんに、安綱先輩は頷く。
「おうとも! おらぁ妖刀鍛冶だからな!」
「???」
ガハハと笑う安綱先輩とは対照的に神木さんはわけのわからなさが限界突破した顔をしていた。
向かい合うように座った安綱先輩は改めて大きめの声で自己紹介を始めた。
「よし! 俺の名前は安綱 哲夫。ごらんのとおり刀剣部の部長だ!」
初顔の神木さんに向けた挨拶に神木さんは頭を下げた。
「よろしくお願いします先輩。……あの、突飛なことを窺うようで申し訳ないんですが……安綱先輩って転生したんですか?」
「ぶふぉ!」
神木さんものすごくストレート。
僕も思わず噴き出してしまった。
僕はサッと視線を逸らして、口笛を吹く。
実は気になってしょうがなかったらしい神木さんの質問に、胡乱気な安綱先輩の視線が僕に飛んできた。
「お前な……まず最初にそれ言うか?」
「いや、面白いかなって」
「面白がってくれりゃぁ儲けもんなんだがな。……まぁそうだ。俺は前世の記憶がある」
ただ安綱先輩も隠しているわけではないので、あっさりと認めた。
「えぇ! 冗談ではなく? ……ってことは異世界とか?」
「……? 異世界? いやいや、そいつはよくわかんねぇが、なんだそりゃ?」
「……何でもないです」
神木さんは何やら思い当たるところがあったようだが赤い顔で黙り込んだ。
おおよそ察しがつくが、どうやら何かを勘違いしたらしい。
安綱先輩はサラリと後輩の発言を流してパンと自分の膝を叩いた。
「俺の記憶はだいぶん昔の話しさ。天暦……つってもわかんねぇかな。平安頃、おらぁあいも変わらず鉄を叩いてた記憶がある」
そう説明した安綱先輩の言葉に神木さんは理解を示した。
「ああ、転生ってそういう……」
「妄想の類かもしんねえけど、知ってるんだから仕方がねぇ。確かにじじいまで生きてたはずが、また赤ん坊からやり直しだ。虫やら畜生じゃなかっただけマシだがね。まぁ今となっちゃ一発ネタみたいなもんだ」
「い、一発ネタですか?」
「そうとも。面白い秘密は一つくらいネタに取っといて損はねぇ。こいつのアレだ、模型みてぇなもんだ」
ニヤリと笑い、僕の方を見る安綱先輩だがネタと一緒にしないで欲しいと僕は思うわけだ。
「ネタとは何ですか。僕のはガチのやつです」
「そうかい? まぁそうか。でなきゃあそこまで熱は入らねぇよな。未だに冗談にしか思えねぇが」
「転生ネタ一発目で突っ込んでくる人に言われたくないです。刀が本物じゃなければ信じてもないですよ」
お互い深く頷く。
もちろん僕だって、安綱先輩がすこぶるガチの職人なのは心得ているところだった。
「ともかく、もう一回鉄を叩けると思うと、おらぁ心が躍ったよ。でだ、ガキの頃からどうにか鍛冶をしようと色々走り回ってやってるわけだ」
昔を懐かしみ、何かを噛みしめている安綱先輩に、神木さんは妙に感心しているようだった。
「そんなことってあるんですね」
「おうとも。ホントか嘘かはお前さんの判断に任せるよ。どうせこいつの模型部に入ったってことは、お前さんも普通じゃあるめぇ。そういうのは都合のいいように説明すりゃいいのさ。どうせ説明したって伝わらねぇ類の話だろう?」
「……」
安綱先輩の言葉に当然神木さんも思うところはあったようだが、特に何か言うでもなく神木さんは素直に頷いていた。
「……はい。そうさせてもらいますね」
「……はっはっは。いいね。そうしときな。まぁ過去を知ってるっていうのも面白いもんなんだぜ? 昔とは違うとこもあったりな、退屈する暇がねぇさ」
「違うところですか?」
「ああ、ガキの頃にいろんな鍛冶場を回ってな? 設備はすげぇ進化してんだが、逆に肝心なもんがなくなってるって気が付いた」
「なくなってるもの……ですか?」
神木さんを気に入ったのか、安綱先輩は饒舌に語る。
ただこれに関しては、この後の話題に無関係ではなさそうだった。
「ああ。妖怪の素材だよ。昔は必ず置いてあったんだけどな」
「……うそだぁ」
そしてガッツリと妖怪がらみの話もしてくる安綱先輩。
内容については神木さんはいやいやと首を振り信じていないようだが、安綱先輩曰く昔はもっと妖怪も身近だったらしい。
「嘘なもんか。んでおらぁ刀鍛冶だが、まぁ言ったら妖刀が何より打ちたかったもんだからよ。自分で鍛冶場を開くしかねぇと……」
「ちょっと待って……妖刀って言いましたか?」
思わず聞き返す神木さんに、安綱先輩は頷く。
「おうとも! おらぁ妖刀鍛冶だからな!」
「???」
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