くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。

くずもち

文字の大きさ
44 / 77

第44話踊るハニワ

しおりを挟む
「うおおおお!」

「なんじゃこりゃ!」

 すっかりマスコットから、大地の怒りを体現したような巨大怪獣へと変貌を遂げたハニワは鬼を容赦なく砲撃した。

 そして逃げ遅れた鬼の上にはとんでもない大きさの豆が鬼神を押し潰していた。

 土埃が収まり、咳込みながら僕と安綱先輩はひょっこり顔を出すと、結果に戦慄した。

「こんなことになんのか……やべぇなお前のハニワ」

 震える安綱先輩に、僕はテヘリと頭をかいた。

「まぁ鬼瓦のついでに作ったんですけど……うまくいったようでよかったですわ」

「ついでの割にギミックこりすぎだけどな。何で変形すんだよ? そんで何で豆だよ?」

「いやそりゃまぁ……鬼相手なんだから豆ぶつけるでしょう? そんで豆といえば鉄砲でしょう?」

「……そりゃあアレをぶつけりゃ効くだろうよ」

 ハニワが砲撃した弾は豆だけど、ハニワが大地の加護を授けた豆はただの豆なんてとても言えない質量兵器である。

 デカい豆に潰されて動けない鬼というシュールな絵面に戸惑いつつも、僕は恐る恐る歩み寄る。

 鬼は豆の直撃で相当弱っているようで、うめき声しか聞こえなかった。

「よいしょ」

 都合がいいので僕は予備のストラップ鬼瓦を鬼の額に押し付ける。

 すると順調に鬼の体がストラップの中に吸い込まれて、ミニ鬼瓦は動かなくなった。

 今度は罅はなし。成功である。

 これで一件落着。

 ようやくホッとしていると涙目で走って来た神木さんが刀を持ったまま詰め寄って来た。

「あんなことになるなら前もって教えておいてほしいんだけどな!」

「ゴメンゴメン。だ、だから刀を引っ込めてね」

 正直予想以上にハニワがデカくなった僕としてはえへへと作り笑いを浮かべるしかなかった。

「いやぁ。まさか僕もああなるとは思わなかったわけで」

 本当ならいったん離脱してハニワ達と交渉後、遠隔射撃の予定だったのだが、緊急事態ゆえやむを得なかった。

 さっきまで恐ろしい気配を立ち昇らせていた巨大ハニワは、心なしかスッキリしたような顔になっている気がする。

 よほど鬱憤が溜まっていたのか、それとも巨大化が楽しかったのか上機嫌で踊っているように見えた。

 地面が揺れるからやめてほしいが、残念ながら止める手段はない。

 ではこちらはこちらで僕らの仕事に移るとしよう。

 僕と安綱先輩は手早く鬼を回収して手順を確認した。

「よしじゃあ撤収ですかね? 一度弾かれたし、もう少しだけ浄化しときましょうか? 清めの水もあるから」

「それ便利だよな。俺にも後で出所教えてくださいお願いします」

「めっちゃ腰低くしてもダメですよ先輩。秘密です。……先輩、そんなことよりもうちょっときつく封印しときません?」

「……そうだな。俺のヌリカベでも閉じ込めとこう。あとは厳重に箱にでも詰めとけ。あ、封印の札のストックあるわ」

「箱、ありましたっけ? ああ、ハニワの焼き物入れておいた奴があるか。梱包材とかいると思います?」

「ワレモノだからなぁ。やっとけやっとけ」

 鬼瓦ストラップは妖刀で封印を強化され、キッチリ梱包されて、手早くリュックに押し込まれた。

 中々綺麗に収まって、これなら帰りの電車でもおかしなことにはならないだろうと確信が持てるくらいには完ぺきな封印である。

 これでこの地の汚れも自然に消滅するはずだった。

「よし! 撤収!」

「ケガしてたら言えよ! 薬持ってきてっから!」

「ああ、僕、白のやつ回収して来ますね。下の方に沢があったんで、そこで弁当でも食べて帰りましょう! お稲荷さんあります!」

「いいね! だがハニワが躍ってるからダメだ! 駅前の公園にしろ!」

 すっかり気が抜けて、レジャーモードになった僕と安綱先輩。

「めちゃめちゃ手際いいなぁ……」

 そんな僕らと巨大なハニワとを見比べた神木さんは、なぜだかとてもとても遠い目をしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...