59 / 77
第59話峠のゴーストライダー
しおりを挟む
「本当に来た!」
「任せろ!」
叫んで飛び出したヒガンの手には巨大な金棒が握られていた。
「どりゃああ!!」
気合の叫びと共にその小さな体から繰り出されたとは思えないフルスイングがゴーストライダーに飛んで行くが、金棒は空を切った。
「避けただと!」
驚愕するヒガンの頭上を飛び超えたバイクはドリフトを決めながら着地して、こちらをジッと見ているようにも見えた。
ただ―――止まったゴーストライダーは杏樹が思っていたよりずっと独特だった。
「……何アレ? カボチャの頭?」
それはライダースーツにカボチャのヘルメットをかぶったおかしな相手だったのだ。
この感触、覚えがある。杏樹が知っている妖怪とはわずかにずれた空気感は心にとても引っかかる。
ゴーストライダーと向かい合ったヒガンは、一筋汗を流していた。
「ほほう……こいつは面白い。コレも奴の作品というわけか」
「えぇ? どういうこと?」
「……見てわかるだろう?」
炎が勢いを増したことで、その全貌が露わになる。
かぼちゃ頭は妙にメカメカしく。
彼のまたがるバイクはSFじみていて、ゲーミングPCのように光っている。
そこまで視界に収めて、私はヒガンの言葉の意味を理解した。
「言われてみれば確かに……」
「お前なぁ。頭が固すぎるぞ? 人間なんだからもっと視野を広く持て?」
「……よく言われます、面目ないデス」
集中すると視野が狭くなるのは杏樹自身の欠点だという自覚があった。
アレは楠君の作品だ。
気が付いて杏樹は同時に血の気が引いた。
「……大丈夫なの?」
「いいだろう……どっちの性能が上か試してやろう」
「―――」
「ちょっと!? 友達の安全のために来たんであって、戦いに来たわけじゃ……」
場の空気に呑まれ先制攻撃を仕掛けただけでもまずいのに、そのまま流れるようなバトル展開はもっとまずい。
杏樹は慌てて止めようとしたが、すでにヒガンのスイッチは入ってしまっていた。
「何を言ってる。噂では奴は人を殺めるのだろう? 奴の作品を悪用しているのなら折檻せずしてどうする?」
「それは……」
「……何が目的で峠を走り回っているかは知らないが。せっかくの機会だ! 存分に楽しませろ!」
フリルのスカートを振り乱しヒガンが飛んだ。
尋常でないのはハリセンの時とは明らかに違う力の高ぶりだった。
ゴーストライダーはバイクを器用にドリフトさせて金棒をかわすが、命中しなかった金棒は風圧だけでガードレールを捻じ曲げた。
「! はは! すごいな! 力加減がわからないぞ!」
「加減してそこは!」
杏樹の悲鳴はもうヒガンの耳には届いていない。
そして本格的な攻撃を前に、ゴーストライダーも動いた。
彼はバイクにまたがり、猛烈な勢いで山の壁面を一気に駆け上がるとバイクから飛び出した銃口をすべてこちらへ向けて来た。
「うわ! 何アレ! 銃!?」
「はっはっはっはっ! いいぞ! 面白くなってきた!」
落下しながらぶっ放してくる。
銃声と共に撃ち出されたのはゴーストライダーが体から吹き出している炎と同質のものらしい。
レーザーのように闇夜に軌跡を描くそれがたまたま命中した丸太に一瞬で穴を穿ったのを見た杏樹はヒェッと悲鳴を上げる。
そして炎はただの炎ではない。
気が付けば炎は着弾の後も地面を走って、ヒガンと杏樹の周囲を取り囲んで退路を断った。
炎は燃え広がっていたが、周囲の物が燃えている気配はない。
それなのに恐ろしく熱く、杏樹は肌に痛みさえ感じた。
「か、囲まれた!」
「ほほう……これは、なるほどな。杏樹よ。この炎は生者を死に導くぞ。魂を焼かれたくなくば気合を入れろ!」
「この炎ってそんなにヤバいの?!」
「ああ……たぶんな」
パニックにならないようにだけ気を付けて、杏樹は両手を握り締める。
確かにヒガンの言う通り、気が付くと体から体力がごっそりと持っていかれる感覚があった。
ヒガンの方は不敵に微笑み、炎の先のゴーストライダーを見て嬉しそうに一歩踏み出した。
「この炎は覚えがある……勢いが強すぎてわからなかったぞ」
「!」
ゴーストライダーはその両目から炎を一際大きく噴き出し、構えた二丁拳銃を乱れ撃つ。
「だが甘い!」
ただあちらが楠製ならヒガンとてそうだ。
ヒガンはスカートの裾をそっと持ち上げる。
なんだろうと杏樹が視線を落とすと同時にカランコロンと落っこちたのはどう見ても手榴弾だった。
「ちょ……!」
咄嗟に伏せたら瞬間、大爆発。
「!」
地面に転がって難を逃れることが出来たのが、奇跡にしか思えなかった。
「あ、危ないだろ!」
杏樹が叫んだ時には、爆風に乗ったヒガンは高々と跳躍。
「この程度で鬼を焼こうなど片腹痛いわ!」
そして不思議な力で真っ赤に焼けた金棒で襲い掛かると、一撃でゴーストライダーのバイクを粉砕した。
「……えぇ」
衝撃で出来上がったクレーターにはぺしゃんこにされたバイクとかぼちゃ頭が倒れていて、なんか微妙にピクピクしていた。
「いや! 消火!」
「案ずるな。炎は我が妖力によるものだ。燃え広がりはせん。さて……ひとまず取り押さえたが」
「これ取り押さえたっていう? 死んじゃわない?」
「知らないのか? お化けは死なないのだぞ?」
「……」
しかし地面にクレーターが出来るほどの一撃でぺしゃんこなんだけど……これでもまだ大丈夫なのかな?
杏樹は心配しながら動かないゴーストライダーに近づくと、バイクとかぼちゃ頭から炎がモヤリと出てきて、空中で青白い炎が玉の形になった。
「ふむ、やはりか……お前鬼火だな?」
「はい……その通りでございます」
ヒガンが鬼火と呼んだ火の玉は、お辞儀をするように揺らめいていた。
「任せろ!」
叫んで飛び出したヒガンの手には巨大な金棒が握られていた。
「どりゃああ!!」
気合の叫びと共にその小さな体から繰り出されたとは思えないフルスイングがゴーストライダーに飛んで行くが、金棒は空を切った。
「避けただと!」
驚愕するヒガンの頭上を飛び超えたバイクはドリフトを決めながら着地して、こちらをジッと見ているようにも見えた。
ただ―――止まったゴーストライダーは杏樹が思っていたよりずっと独特だった。
「……何アレ? カボチャの頭?」
それはライダースーツにカボチャのヘルメットをかぶったおかしな相手だったのだ。
この感触、覚えがある。杏樹が知っている妖怪とはわずかにずれた空気感は心にとても引っかかる。
ゴーストライダーと向かい合ったヒガンは、一筋汗を流していた。
「ほほう……こいつは面白い。コレも奴の作品というわけか」
「えぇ? どういうこと?」
「……見てわかるだろう?」
炎が勢いを増したことで、その全貌が露わになる。
かぼちゃ頭は妙にメカメカしく。
彼のまたがるバイクはSFじみていて、ゲーミングPCのように光っている。
そこまで視界に収めて、私はヒガンの言葉の意味を理解した。
「言われてみれば確かに……」
「お前なぁ。頭が固すぎるぞ? 人間なんだからもっと視野を広く持て?」
「……よく言われます、面目ないデス」
集中すると視野が狭くなるのは杏樹自身の欠点だという自覚があった。
アレは楠君の作品だ。
気が付いて杏樹は同時に血の気が引いた。
「……大丈夫なの?」
「いいだろう……どっちの性能が上か試してやろう」
「―――」
「ちょっと!? 友達の安全のために来たんであって、戦いに来たわけじゃ……」
場の空気に呑まれ先制攻撃を仕掛けただけでもまずいのに、そのまま流れるようなバトル展開はもっとまずい。
杏樹は慌てて止めようとしたが、すでにヒガンのスイッチは入ってしまっていた。
「何を言ってる。噂では奴は人を殺めるのだろう? 奴の作品を悪用しているのなら折檻せずしてどうする?」
「それは……」
「……何が目的で峠を走り回っているかは知らないが。せっかくの機会だ! 存分に楽しませろ!」
フリルのスカートを振り乱しヒガンが飛んだ。
尋常でないのはハリセンの時とは明らかに違う力の高ぶりだった。
ゴーストライダーはバイクを器用にドリフトさせて金棒をかわすが、命中しなかった金棒は風圧だけでガードレールを捻じ曲げた。
「! はは! すごいな! 力加減がわからないぞ!」
「加減してそこは!」
杏樹の悲鳴はもうヒガンの耳には届いていない。
そして本格的な攻撃を前に、ゴーストライダーも動いた。
彼はバイクにまたがり、猛烈な勢いで山の壁面を一気に駆け上がるとバイクから飛び出した銃口をすべてこちらへ向けて来た。
「うわ! 何アレ! 銃!?」
「はっはっはっはっ! いいぞ! 面白くなってきた!」
落下しながらぶっ放してくる。
銃声と共に撃ち出されたのはゴーストライダーが体から吹き出している炎と同質のものらしい。
レーザーのように闇夜に軌跡を描くそれがたまたま命中した丸太に一瞬で穴を穿ったのを見た杏樹はヒェッと悲鳴を上げる。
そして炎はただの炎ではない。
気が付けば炎は着弾の後も地面を走って、ヒガンと杏樹の周囲を取り囲んで退路を断った。
炎は燃え広がっていたが、周囲の物が燃えている気配はない。
それなのに恐ろしく熱く、杏樹は肌に痛みさえ感じた。
「か、囲まれた!」
「ほほう……これは、なるほどな。杏樹よ。この炎は生者を死に導くぞ。魂を焼かれたくなくば気合を入れろ!」
「この炎ってそんなにヤバいの?!」
「ああ……たぶんな」
パニックにならないようにだけ気を付けて、杏樹は両手を握り締める。
確かにヒガンの言う通り、気が付くと体から体力がごっそりと持っていかれる感覚があった。
ヒガンの方は不敵に微笑み、炎の先のゴーストライダーを見て嬉しそうに一歩踏み出した。
「この炎は覚えがある……勢いが強すぎてわからなかったぞ」
「!」
ゴーストライダーはその両目から炎を一際大きく噴き出し、構えた二丁拳銃を乱れ撃つ。
「だが甘い!」
ただあちらが楠製ならヒガンとてそうだ。
ヒガンはスカートの裾をそっと持ち上げる。
なんだろうと杏樹が視線を落とすと同時にカランコロンと落っこちたのはどう見ても手榴弾だった。
「ちょ……!」
咄嗟に伏せたら瞬間、大爆発。
「!」
地面に転がって難を逃れることが出来たのが、奇跡にしか思えなかった。
「あ、危ないだろ!」
杏樹が叫んだ時には、爆風に乗ったヒガンは高々と跳躍。
「この程度で鬼を焼こうなど片腹痛いわ!」
そして不思議な力で真っ赤に焼けた金棒で襲い掛かると、一撃でゴーストライダーのバイクを粉砕した。
「……えぇ」
衝撃で出来上がったクレーターにはぺしゃんこにされたバイクとかぼちゃ頭が倒れていて、なんか微妙にピクピクしていた。
「いや! 消火!」
「案ずるな。炎は我が妖力によるものだ。燃え広がりはせん。さて……ひとまず取り押さえたが」
「これ取り押さえたっていう? 死んじゃわない?」
「知らないのか? お化けは死なないのだぞ?」
「……」
しかし地面にクレーターが出来るほどの一撃でぺしゃんこなんだけど……これでもまだ大丈夫なのかな?
杏樹は心配しながら動かないゴーストライダーに近づくと、バイクとかぼちゃ頭から炎がモヤリと出てきて、空中で青白い炎が玉の形になった。
「ふむ、やはりか……お前鬼火だな?」
「はい……その通りでございます」
ヒガンが鬼火と呼んだ火の玉は、お辞儀をするように揺らめいていた。
1
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる