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第一章 幼少期編

22.主従契約⑤

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「じゃぁ……今日からお前の名前はライムだ!」

 そう言って俺が名前を付けてやると、俺とライムの間でパスが通った様な感覚が生じた。
 ……さっきよりもライムの意志が少しだけ鮮明に伝わってくる様になったな。

 頭の中にライムの気持ちや意志が直接響いてくるような、不思議な感覚だ。
 とりあえず今のこいつの気持ちは……

「腹が減ってるのかな?」

 俺は手近にあったホーンラビットの死体をライムに放ってやる。
 するとライムはその死体包み込み、シュウシュウと煙と音を立てながら消化し、そのまま吸収していた。
 地球の兎より一回り大きなホーンラビットを消化するのに、およそ五分ほど。
 結構な消化スピードだ。

「あ、そうだ。なぁライム。お前って消化吸収以外にも変形ってスキルが有るみたいなんだけど、今ここでやって見せてくれないか?」

 俺の願いに、了承する旨を答えるライム。
 おそらく俺の声では無く、俺の頭の中の考えがこいつに伝わっているのだろう。

 そうこうしている内に、ライムのゲル状の体が見る見るうちに変形していき、先ほどのホーンラビットへと姿を変えた。
 ただし、死体の状態で。

「えぇっと……生きた状態というか、その姿で動いたりは出来ないの?」

 物言わぬ死体のまま、無理だと思念を送ってくるライム。
 そして、腹が減ったと。

 うーん、何が言いたいのだろう。

「ホーンラビット一匹分だけを吸収しても、動ける様にはならないってことか?」

 ……違うらしい。

「……もしかして、生きた状態で吸収しないとダメなのか?」

 どうやらこれが正解の様だ。
 うーん、ちょっとエグい気もするが……まぁいいか。
 とりあえず、もう一度フォルコに捕まえて来てもらうとしよう。

「ねぇフォルコ――って、どうしたのみんな?」

 フォルコにホーンラビットの生け捕りを頼もうと振り向いてみると、そこには口をあんぐりと開けた三人の姿があった。

「な、なぁアルよ。そのスライムが今、ホーンラビットに姿を変えた様に見えたんだが……」

「あー……そうだね」

「そうだねってお前……」

 呆れたように、ため息をつくフィリップ父さん。
 どうやら、先ずはこの状況を説明する必要がありそうだ。





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