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第一章 幼少期編
54.スキル共有②
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それから俺は軍団長に言われるがまま、現在の地力の確認の為に色々と試し打ちをしてみることとなった。
結果、現在俺の氷魔法は中級レベルであることが分かった。
中級魔法にはアロー系の他に、シールド系の魔法が存在する。
シールド系とは一メートル四方の盾を空中に発現する魔法で、熟練度次第で大きさや厚みも増していくらしい。
初級や中級と言った等級は、習得時にぶつかる『壁』で区分けされている。
初級魔法習得後その壁を超えることが出来れば、中級魔法が使えるようになるのだ。
だからアロー系やシールド系に拘らなくても、その等級の範囲内であればどんな形の魔法も打つことは出来る。
しかしどんな形でも練習を積み重ねなければ即座に発現することが出来ず、実践には使い物にならない。
その結果、アロー系やシールド系といった使いやすい形に皆自然と落ち着くようだ。
試し打ちと並行して、俺はステータスで熟練度の確認も行った。
しかし、いくら魔法を放っても熟練度が増えることは無いようだ。
この共有スキルの熟練度は、契約者に依存しているのだろう
あとは契約者を増やせば熟練度が加算されるかどうかだが……。
やっぱり、他の水魔法スキル所持者と契約して試してみたいな。
「ふむ……よし、少し待っておれ」
俺の要望を聞くと、軍団長がそう言って建物の方へと消えていった。
そしてしばらくしてから水色の髪の子供たちを二十人程引き連れて戻ってくる。
「こ奴らはみな最近入った見習いどもだ。まだスキルを所持しておるかは分からぬが、熟練度の検証のためにもこれくらいの方が良いだろう」
軍のトップである軍団長に引き連れられ目を白黒させている子供たちに謝りつつ、俺は彼らと契約を交わしていく。
すると運の良いことに一人の少年が水魔法スキルを所持しており、俺の熟練度が9上昇した。
彼のスキルレベルは1で熟練度は千未満だから、百分の一程の熟練度が加算された計算になる。
「どうやらスキル持ちの契約者が増えると、その分熟練度も加算されるようです。加算されるのはその人が持つ熟練度の百分の一みたいですね」
水魔法スキルを所持していることを知り、その少年が“よっしゃーっ”と両手を上げてはしゃぐ。
他の子どもたちもおめでとうと声を掛けてはいるが、自分に水魔法スキルが無いことを知り、落胆と嫉妬の感情が見え隠れしている。
この世界でスキルの有無は、将来的にかなりの差となって現れる。
その現実を突きつけてしまったことに罪悪感を感じつつ、俺は仕事に戻っていく彼らを見送った。
「ふむ。では今後は魔物の討伐と並行し、水魔法を所持しているであろう者たちとの契約を交わしていくとするかの」
「えぇ、そうですね。軍の者たちを集めれば、それなりの数にはなるでしょう」
俺たちを置き去りにして、今後の話を進めていく二人。
テイルフィラー軍には全てを合わせると三万人程が在籍している。
領内全土に散らばっているため全てと言う訳にはいかないだろうが、それでもかなりの数にはなるだろう。
水魔法レベル2を習得しただけでもかなりの効果が実感できたのだ。
これが加速度並みに増えていくのなら、その恩恵は計り知れない。
ただ先ほどの子供たちの様子を見ていると、今後自分だけが楽をして強くなっていくことに若干の後ろめたさも感じてしまう。
そんな俺の様子に気付いたのか、ラザート隊長が俺に声を掛けてきた。
「ん? どうかしましたかアルフォンス様。あー、もしかして自分だけ簡単に強くなることを気にしているのですか?」
「は、はい……」
「はは、あまり気にすることは無いと思いますよ。確かに羨む者もいるでしょうが、人の上に立つと大なり小なりそういった者は出てきます。それにいくらスキルレベルが上がろうと、きちんと訓練をしていなければ使い物にはなりませんからね」
「なるほど……」
ラザート隊長たちは、軍の中でもトップ集団だ。
きっと似た様な経験をしてきたのだろう。
「それにアルフォンス様が強くなり魔物を沢山狩ってくだされば、その分我々の仕事が減ります。是非とも我々に楽をさせて下さい」
ニッコリと笑いながら話す隊長の声に、“期待してますよ!”と笑いながら同意する黒鬼隊の人達。
彼らからは、嫉妬の様な嫌な視線は一切感じない。
器の大きな人たちだ。
「はい、期待に応えられるよう頑張りますね」
彼らの優しさのおかげで、胸の閊えが取れた気がした。
本当の強者というのは、彼らのような人たちの事を言うのかもしれない。
◇◇◇◇
「と、思っていた時もありました」
次々に襲い掛かってくる魔物に、ひたすら魔法を放ちながら俺は独り言ちる。
「アル様! サボってないでどんどん魔法を打ってください! こいつら全然減らなくて……って痛ってぇっ!」
群がる魔物たちを、ジャックスがひたすら盾と片手剣を使い捌いている。
「……風矢。……全然、減らない」
魔物に向かって風矢を放つソフィーネも、体力と魔力を使いすぎたのか肩で息をし始めている。
「ははは、ゆっくりしている暇はありませんよー。おかわりはまだまだありますからね!」
魔物寄せの香を使い、追加の魔物を引き連れてきたラザート隊長が楽しそうに笑う。
俺たちは現在、いつもの林よりも魔の森側に一日程進んだ場所で訓練を行っている。
始めはいつもより歯ごたえのある魔物にやりがいを感じていた俺たちであったが、次第に襲ってくる魔物の間隔が短くなり段々と余裕をなくしていった。
そして気付けば、倒しても倒しても終わらない無限ループに突入していたのだ。
犯人はもちろん、黒鬼隊の方々である。
「氷矢! 氷矢! 氷矢! はぁ、はぁ、はぁ……これ、いつになったら終わるんだろう」
「グルゥ……」
俺の愚痴を聞き、同意するように唸るライム。
ライムは今、この森に生息するフォレストウルフに変身している。
俺がここまでの道中皆の足について行けなかったため、俺の騎乗用にと黒鬼隊の人達が生け捕りにしてきてくれたのだ。
「ははは、だから気にする必要はないと言ったでしょう? 強くなるには相応の努力が必要なのです。このくらいで音を上げている様では、いつまで経っても我々に楽などさせられませんよー。さ、ファイトファイト!」
「……鬼」
「ははは、黒鬼隊ですからねー」
ラザート隊長を睨みつつ、ソフィーネが弓を引き矢を放つ。
俺も隊長の軽口に答える暇も無く、どんどんと魔法を放って行った。
無限に魔物を引き連れてくるスパルタな彼らに一時は腹が立ったりもしたが、本当に危ない時はさりげなくサポートしてくれていることに気付いたあとは、みな大人しく魔物狩りに集中している。
「訓練で魔法がいくら打てようと意味はありません。実践で活かせて初めて物になるのです。魔力ポーションはまだまだありますからね。魔力の事は気にせずどんどん行きましょう」
彼に言われるがまま、魔力ポーションで魔力を補充するソフィーネ。
かなり高価な物のはずだが……やはり普段からダンジョン深層に潜っている彼らはアイテムの充実も一味違うらしい。
「アル様! そろそろ俺も魔力がやばそうです! フォローお願いします!」
「分かった! ……氷盾、氷盾!」
ジャックスの救援要請に、俺は氷盾を二つ彼の周りに配置する。
魔法を同時に発現することはまだ出来ないが、維持するだけならなんとか出来るようになった。
ただまだまだ精密さに欠け、本当に配置しているだけといった感じだ。
魔法の同時操作は、例えるならけん玉を両手で同時に行うような感覚で、非常に難しい。
ラザート隊長たちがやっているのを見て俺も初めは氷矢で真似してみたのだが、危なっかしくて使えた物ではなかった。
ラザート隊長は氷盾で的確に防御しつつ、氷矢で魔物の眉間をぶち抜くというお手本の様な精密さを披露してくれたのだが‥‥‥俺が彼のレベルに至るにはまだまだ先は長そうだ。
「グルァッ!!」
フォレストウルフに変身したライム壱号たちも、ジャックスのフォローに入る者と倒した魔物を消化する者とに分かれながら上手に立ち回っている。
フォレストウルフのスキルは『木上走行』という森に特化した物らしく、木々を上手く使いながら魔物を屠っている。
ただ魔力を溜めることもこの訓練の目標の一つなので、変身しているのは弐号まで。残りはみな消化吸収要員だ。
壱号たちは、自らが死んでもその魔力と経験値が消滅するだけでライム自身に影響はないらしい。
そのため、壱号達は自分を囮にするようにして魔物の中に突っ込んで行くなど、かなり無茶な戦いをしている。
そのおかげで何とか戦線を保ててはいるのだが……自分たちの力の無さが少し恨めしい。
それからどのくらい経っただろうか。
時間の感覚が曖昧になったころ、ジャックスの動きがおかしいことに気が付いた。
その様子に敵も気付いたのだろう。
フォレストスネークや敵のフォレストウルフたちが一斉に彼に襲い掛かる。
「っく、氷盾!」
俺は慌てて氷盾を発現するも、焼け石に水。
一匹のフォレストウルフをガードしただけで、後の敵はそのままジャックに襲い掛かってしまう。
「ジャックッ!!」
と俺が叫んだ瞬間、黒い人影が颯爽とジャックスを取り囲み、襲い掛かった魔物を蹴散らした。
気づけば、周りの魔物たちもいつの間にか倒されている。
「お疲れさまでした。やはり攻撃が集中するジャックス君に一番負担が掛かっていたようですね。立ったまま気絶しています」
ラザート隊長の言う通り、ジャックスはいつの間にか現れた黒鬼隊の人に支えられたまま気絶していた。
いくら魔力ポーションで魔力を回復しても、消費した精神力までは回復しない。
俺たちに攻撃が回らないよう身を挺して敵の攻撃を引きつけ続けた彼に、相当な負荷が掛かっていたのだろう。
「はぁはぁ、ありがとう、ございました……あ、ジャックのレベル、上がってる」
突然の終了宣言に唖然としつつふとステータスを眺めると、彼の超回復レベルが上がっている事に気付いた。
「……追いつかれた……むかつく」
疲労困憊の表情を見せつつも、ジャックスへ憎まれ口を叩くソフィーネ。
なんだかんだ言いながら、彼女もジャックスをライバル視しているようだ。
「はは、良い意気です。その調子で明日の訓練も頑張っていきましょう!」
「「え……」」
てっきり家に帰れるものだとばかり思っていた俺たちだが、隊長の言葉に固まってしまう。
俺たちの地獄の訓練は、どうやらまだ始まったばかりのようだった。
結果、現在俺の氷魔法は中級レベルであることが分かった。
中級魔法にはアロー系の他に、シールド系の魔法が存在する。
シールド系とは一メートル四方の盾を空中に発現する魔法で、熟練度次第で大きさや厚みも増していくらしい。
初級や中級と言った等級は、習得時にぶつかる『壁』で区分けされている。
初級魔法習得後その壁を超えることが出来れば、中級魔法が使えるようになるのだ。
だからアロー系やシールド系に拘らなくても、その等級の範囲内であればどんな形の魔法も打つことは出来る。
しかしどんな形でも練習を積み重ねなければ即座に発現することが出来ず、実践には使い物にならない。
その結果、アロー系やシールド系といった使いやすい形に皆自然と落ち着くようだ。
試し打ちと並行して、俺はステータスで熟練度の確認も行った。
しかし、いくら魔法を放っても熟練度が増えることは無いようだ。
この共有スキルの熟練度は、契約者に依存しているのだろう
あとは契約者を増やせば熟練度が加算されるかどうかだが……。
やっぱり、他の水魔法スキル所持者と契約して試してみたいな。
「ふむ……よし、少し待っておれ」
俺の要望を聞くと、軍団長がそう言って建物の方へと消えていった。
そしてしばらくしてから水色の髪の子供たちを二十人程引き連れて戻ってくる。
「こ奴らはみな最近入った見習いどもだ。まだスキルを所持しておるかは分からぬが、熟練度の検証のためにもこれくらいの方が良いだろう」
軍のトップである軍団長に引き連れられ目を白黒させている子供たちに謝りつつ、俺は彼らと契約を交わしていく。
すると運の良いことに一人の少年が水魔法スキルを所持しており、俺の熟練度が9上昇した。
彼のスキルレベルは1で熟練度は千未満だから、百分の一程の熟練度が加算された計算になる。
「どうやらスキル持ちの契約者が増えると、その分熟練度も加算されるようです。加算されるのはその人が持つ熟練度の百分の一みたいですね」
水魔法スキルを所持していることを知り、その少年が“よっしゃーっ”と両手を上げてはしゃぐ。
他の子どもたちもおめでとうと声を掛けてはいるが、自分に水魔法スキルが無いことを知り、落胆と嫉妬の感情が見え隠れしている。
この世界でスキルの有無は、将来的にかなりの差となって現れる。
その現実を突きつけてしまったことに罪悪感を感じつつ、俺は仕事に戻っていく彼らを見送った。
「ふむ。では今後は魔物の討伐と並行し、水魔法を所持しているであろう者たちとの契約を交わしていくとするかの」
「えぇ、そうですね。軍の者たちを集めれば、それなりの数にはなるでしょう」
俺たちを置き去りにして、今後の話を進めていく二人。
テイルフィラー軍には全てを合わせると三万人程が在籍している。
領内全土に散らばっているため全てと言う訳にはいかないだろうが、それでもかなりの数にはなるだろう。
水魔法レベル2を習得しただけでもかなりの効果が実感できたのだ。
これが加速度並みに増えていくのなら、その恩恵は計り知れない。
ただ先ほどの子供たちの様子を見ていると、今後自分だけが楽をして強くなっていくことに若干の後ろめたさも感じてしまう。
そんな俺の様子に気付いたのか、ラザート隊長が俺に声を掛けてきた。
「ん? どうかしましたかアルフォンス様。あー、もしかして自分だけ簡単に強くなることを気にしているのですか?」
「は、はい……」
「はは、あまり気にすることは無いと思いますよ。確かに羨む者もいるでしょうが、人の上に立つと大なり小なりそういった者は出てきます。それにいくらスキルレベルが上がろうと、きちんと訓練をしていなければ使い物にはなりませんからね」
「なるほど……」
ラザート隊長たちは、軍の中でもトップ集団だ。
きっと似た様な経験をしてきたのだろう。
「それにアルフォンス様が強くなり魔物を沢山狩ってくだされば、その分我々の仕事が減ります。是非とも我々に楽をさせて下さい」
ニッコリと笑いながら話す隊長の声に、“期待してますよ!”と笑いながら同意する黒鬼隊の人達。
彼らからは、嫉妬の様な嫌な視線は一切感じない。
器の大きな人たちだ。
「はい、期待に応えられるよう頑張りますね」
彼らの優しさのおかげで、胸の閊えが取れた気がした。
本当の強者というのは、彼らのような人たちの事を言うのかもしれない。
◇◇◇◇
「と、思っていた時もありました」
次々に襲い掛かってくる魔物に、ひたすら魔法を放ちながら俺は独り言ちる。
「アル様! サボってないでどんどん魔法を打ってください! こいつら全然減らなくて……って痛ってぇっ!」
群がる魔物たちを、ジャックスがひたすら盾と片手剣を使い捌いている。
「……風矢。……全然、減らない」
魔物に向かって風矢を放つソフィーネも、体力と魔力を使いすぎたのか肩で息をし始めている。
「ははは、ゆっくりしている暇はありませんよー。おかわりはまだまだありますからね!」
魔物寄せの香を使い、追加の魔物を引き連れてきたラザート隊長が楽しそうに笑う。
俺たちは現在、いつもの林よりも魔の森側に一日程進んだ場所で訓練を行っている。
始めはいつもより歯ごたえのある魔物にやりがいを感じていた俺たちであったが、次第に襲ってくる魔物の間隔が短くなり段々と余裕をなくしていった。
そして気付けば、倒しても倒しても終わらない無限ループに突入していたのだ。
犯人はもちろん、黒鬼隊の方々である。
「氷矢! 氷矢! 氷矢! はぁ、はぁ、はぁ……これ、いつになったら終わるんだろう」
「グルゥ……」
俺の愚痴を聞き、同意するように唸るライム。
ライムは今、この森に生息するフォレストウルフに変身している。
俺がここまでの道中皆の足について行けなかったため、俺の騎乗用にと黒鬼隊の人達が生け捕りにしてきてくれたのだ。
「ははは、だから気にする必要はないと言ったでしょう? 強くなるには相応の努力が必要なのです。このくらいで音を上げている様では、いつまで経っても我々に楽などさせられませんよー。さ、ファイトファイト!」
「……鬼」
「ははは、黒鬼隊ですからねー」
ラザート隊長を睨みつつ、ソフィーネが弓を引き矢を放つ。
俺も隊長の軽口に答える暇も無く、どんどんと魔法を放って行った。
無限に魔物を引き連れてくるスパルタな彼らに一時は腹が立ったりもしたが、本当に危ない時はさりげなくサポートしてくれていることに気付いたあとは、みな大人しく魔物狩りに集中している。
「訓練で魔法がいくら打てようと意味はありません。実践で活かせて初めて物になるのです。魔力ポーションはまだまだありますからね。魔力の事は気にせずどんどん行きましょう」
彼に言われるがまま、魔力ポーションで魔力を補充するソフィーネ。
かなり高価な物のはずだが……やはり普段からダンジョン深層に潜っている彼らはアイテムの充実も一味違うらしい。
「アル様! そろそろ俺も魔力がやばそうです! フォローお願いします!」
「分かった! ……氷盾、氷盾!」
ジャックスの救援要請に、俺は氷盾を二つ彼の周りに配置する。
魔法を同時に発現することはまだ出来ないが、維持するだけならなんとか出来るようになった。
ただまだまだ精密さに欠け、本当に配置しているだけといった感じだ。
魔法の同時操作は、例えるならけん玉を両手で同時に行うような感覚で、非常に難しい。
ラザート隊長たちがやっているのを見て俺も初めは氷矢で真似してみたのだが、危なっかしくて使えた物ではなかった。
ラザート隊長は氷盾で的確に防御しつつ、氷矢で魔物の眉間をぶち抜くというお手本の様な精密さを披露してくれたのだが‥‥‥俺が彼のレベルに至るにはまだまだ先は長そうだ。
「グルァッ!!」
フォレストウルフに変身したライム壱号たちも、ジャックスのフォローに入る者と倒した魔物を消化する者とに分かれながら上手に立ち回っている。
フォレストウルフのスキルは『木上走行』という森に特化した物らしく、木々を上手く使いながら魔物を屠っている。
ただ魔力を溜めることもこの訓練の目標の一つなので、変身しているのは弐号まで。残りはみな消化吸収要員だ。
壱号たちは、自らが死んでもその魔力と経験値が消滅するだけでライム自身に影響はないらしい。
そのため、壱号達は自分を囮にするようにして魔物の中に突っ込んで行くなど、かなり無茶な戦いをしている。
そのおかげで何とか戦線を保ててはいるのだが……自分たちの力の無さが少し恨めしい。
それからどのくらい経っただろうか。
時間の感覚が曖昧になったころ、ジャックスの動きがおかしいことに気が付いた。
その様子に敵も気付いたのだろう。
フォレストスネークや敵のフォレストウルフたちが一斉に彼に襲い掛かる。
「っく、氷盾!」
俺は慌てて氷盾を発現するも、焼け石に水。
一匹のフォレストウルフをガードしただけで、後の敵はそのままジャックに襲い掛かってしまう。
「ジャックッ!!」
と俺が叫んだ瞬間、黒い人影が颯爽とジャックスを取り囲み、襲い掛かった魔物を蹴散らした。
気づけば、周りの魔物たちもいつの間にか倒されている。
「お疲れさまでした。やはり攻撃が集中するジャックス君に一番負担が掛かっていたようですね。立ったまま気絶しています」
ラザート隊長の言う通り、ジャックスはいつの間にか現れた黒鬼隊の人に支えられたまま気絶していた。
いくら魔力ポーションで魔力を回復しても、消費した精神力までは回復しない。
俺たちに攻撃が回らないよう身を挺して敵の攻撃を引きつけ続けた彼に、相当な負荷が掛かっていたのだろう。
「はぁはぁ、ありがとう、ございました……あ、ジャックのレベル、上がってる」
突然の終了宣言に唖然としつつふとステータスを眺めると、彼の超回復レベルが上がっている事に気付いた。
「……追いつかれた……むかつく」
疲労困憊の表情を見せつつも、ジャックスへ憎まれ口を叩くソフィーネ。
なんだかんだ言いながら、彼女もジャックスをライバル視しているようだ。
「はは、良い意気です。その調子で明日の訓練も頑張っていきましょう!」
「「え……」」
てっきり家に帰れるものだとばかり思っていた俺たちだが、隊長の言葉に固まってしまう。
俺たちの地獄の訓練は、どうやらまだ始まったばかりのようだった。
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