6 / 18
2章
嘘と秘密は紙一重01
しおりを挟む
♢ ♢ ♢
10月18日
ハルがやってきて3日目。当初は、戸惑っていたが、私の戸惑いも、ハルは完全に払拭されてしまい、この状況に完全に慣れてしまっていた。とにかく、私の安らぎを第一に考えて動いてくれていること、そして、ハルから漂う人畜無害臭、それらすべてが、ハルに対しての警戒心の一切をなくしてしまった。
そんなわけで、あっという間の3日間。たった3日間だけど、ハルと暮らしてみて、人と同じように見えても、やはり人とは違うのだなと思わされることがたびたびあった。
例えば、食事。人形だから、食事はいらないそうで、この3日間、本当に何も食べていない。食べないのに、高級フレンチのレストランのシェフが真っ青なくらいには、料理が上手だ。なんでも、バンボラに仕込まれたらしい。確かに、あの日食べたマカロニグラタン、ガトーショコラは、本当に美味しかった。まぁ、カップ麺にお湯を注ぐ料理しか、最近作っていなかった私よりは全然出来る。あとは、電子レンジでチンするものとか。あれ、とっても便利よね。うん、我ながら、女子力はないな。
当初は、ハルが食べないのに、作ってもらうのは悪いので、自分の分は自分で作ると言ったのだが、“マスターに安らぎを与えるのが、俺の役目だから”と言い張り、さらに、“それに、俺が作った料理を美味しいって食べるマスターを見たいんだ”と付け加えられれば、どう言い返せばいいかわからない。だから、料理を作るのは、完全にハルの役目になってしまった。
あと違う点といえば、汗をかかないし、体温がない。人間と同じような肌質なのに、まったく汗をかかなかったり、動いているのに、体温がなかったり、ぱっと見人間と同じなのに、作りがまったく違うらしい。
そんなちょっとした違いを見つけるのが、最近は興味深かったりする今日この頃。
「ハルは、こういう服似合いそうよね?」
私がそうハルに声をかけたのは、この日の11時頃。丁度、テレビの午後のバラエティーで、若者の服の特集をしていた番組をソファーに座って見ていた時。テレビの中のタレントが、街頭にいる若者にインタビュー。白い無地のTシャツに、デニムシャツ、黒いスキニーパンツ。とても清潔感があり、さわやかな印象を与える。身長の高くスラリとしているハルにぴったりだ。
「ん?どれ?」
「あ…、CM入っちゃった」
キッチンでお昼ご飯の準備をしていたハルが、こちらに顔を出したときには遅く、丁度CMに入ったところだった。
「ハルって、洋服とか興味ないの?」
ハルはというと、元から着ていた白シャツと泊まるときように置いてある我が弟のTシャツを交互に着ている。弟が着ると、なんだか冴えないそのTシャツをさらりと着こなすあたりは流石だ。亜麻色の髪、空色の瞳、透き通る肌、整った容姿。正直、羨ましすぎる。けれども、ハルが平均身長の弟に比べて、高いハルにとっては、そのTシャツもやや小さく感じる。
「別に特にないかな。極論言えば、俺は同居ドールだから、暑さも寒さも感じないしね」
“着るものはなんでもいいんだ”と肩をすくませる。そんなハルの様子を見て、私は一つ閃いて、“そうだ!!”ぽんと手を叩く。
「ハルの服を買いに行こう!!」
「え……?」
対するハルは、小首をかしげている。
「いつも、美味しいご飯作ってくれるお礼。それに、そろそろ食料が切れそうだし、大きいショッピングモール行こう」
うん、我ながらいい提案な気がする。人というもの感謝の心を忘れてはいけない。……というのは、あくまでも建前で、本音を言えば、着飾ったハルを見てみたかったっていうのもある。
“どうかな?”とハルに言えば、少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに“マスターが言うなら”とどこか楽しそうに答えた。
♢ ♢ ♢
「いらっしゃいませ」
少し離れた大型ショッピングモール。店内に入ると女性の店員が、声をかけてきた。男性物の洋服店。男性物の洋服店なので、男性店員だとばかり思っていたので、今どきの男性物の洋服店は、女性の店員さんもいるんだなと認識を改めなければならないなと思う。
「何か、お探しですか?」
ここぞとばかりに、女性の店員が近づいてきた。一度、捕まるとなかなか離してくれない。しかも、「これ、新作なんですよ~!」と勧められれば、あまり好みでなくとも、無下にはできずに、ついつい買わされてしまう。そうならないためにも、先手必勝。
「今日は、色々見てみようと思いまして。何かあったら、また声をかけます」
失礼のないよう、とりあえずその場を収めるには、持って来いの決まり文句だ。ショッピングをゆっくりと楽しみたい人には、ぜひ使ってほしい。
「かしこまりました。また御用の際は、お申し付けください」
どうだ?してやったりだ。十中八九、こう言ってしまえば、余程のしつこい店員でない限り、こちらが声をかけるまで、話しかけてこない。私は、幾度となくこの言葉でくぐりぬけてきたのだから。心の中で、ガッツポーズをしていると、隣で、くすりと笑う声がした。
「……ん?どうしたの?」
わずかに見上げれば、ハルが口元を緩めていた。
「いや、マスター楽しそうだなって」
「楽しそう?」
「うん、したり顔っていうのかな。会心の一言だったんでしょ」
「え…?顔に出てた!?」
うわ、それは恥ずかしい。
「マスターって、すぐ顔に出るからね」
「……あまり言わないで」
いたたまれなさに思わず両手で顔を覆えば
「マスターのそういう素直なところ、俺はいいと思う」
ハルはまたくすりと笑い、そう答えた。
10月18日
ハルがやってきて3日目。当初は、戸惑っていたが、私の戸惑いも、ハルは完全に払拭されてしまい、この状況に完全に慣れてしまっていた。とにかく、私の安らぎを第一に考えて動いてくれていること、そして、ハルから漂う人畜無害臭、それらすべてが、ハルに対しての警戒心の一切をなくしてしまった。
そんなわけで、あっという間の3日間。たった3日間だけど、ハルと暮らしてみて、人と同じように見えても、やはり人とは違うのだなと思わされることがたびたびあった。
例えば、食事。人形だから、食事はいらないそうで、この3日間、本当に何も食べていない。食べないのに、高級フレンチのレストランのシェフが真っ青なくらいには、料理が上手だ。なんでも、バンボラに仕込まれたらしい。確かに、あの日食べたマカロニグラタン、ガトーショコラは、本当に美味しかった。まぁ、カップ麺にお湯を注ぐ料理しか、最近作っていなかった私よりは全然出来る。あとは、電子レンジでチンするものとか。あれ、とっても便利よね。うん、我ながら、女子力はないな。
当初は、ハルが食べないのに、作ってもらうのは悪いので、自分の分は自分で作ると言ったのだが、“マスターに安らぎを与えるのが、俺の役目だから”と言い張り、さらに、“それに、俺が作った料理を美味しいって食べるマスターを見たいんだ”と付け加えられれば、どう言い返せばいいかわからない。だから、料理を作るのは、完全にハルの役目になってしまった。
あと違う点といえば、汗をかかないし、体温がない。人間と同じような肌質なのに、まったく汗をかかなかったり、動いているのに、体温がなかったり、ぱっと見人間と同じなのに、作りがまったく違うらしい。
そんなちょっとした違いを見つけるのが、最近は興味深かったりする今日この頃。
「ハルは、こういう服似合いそうよね?」
私がそうハルに声をかけたのは、この日の11時頃。丁度、テレビの午後のバラエティーで、若者の服の特集をしていた番組をソファーに座って見ていた時。テレビの中のタレントが、街頭にいる若者にインタビュー。白い無地のTシャツに、デニムシャツ、黒いスキニーパンツ。とても清潔感があり、さわやかな印象を与える。身長の高くスラリとしているハルにぴったりだ。
「ん?どれ?」
「あ…、CM入っちゃった」
キッチンでお昼ご飯の準備をしていたハルが、こちらに顔を出したときには遅く、丁度CMに入ったところだった。
「ハルって、洋服とか興味ないの?」
ハルはというと、元から着ていた白シャツと泊まるときように置いてある我が弟のTシャツを交互に着ている。弟が着ると、なんだか冴えないそのTシャツをさらりと着こなすあたりは流石だ。亜麻色の髪、空色の瞳、透き通る肌、整った容姿。正直、羨ましすぎる。けれども、ハルが平均身長の弟に比べて、高いハルにとっては、そのTシャツもやや小さく感じる。
「別に特にないかな。極論言えば、俺は同居ドールだから、暑さも寒さも感じないしね」
“着るものはなんでもいいんだ”と肩をすくませる。そんなハルの様子を見て、私は一つ閃いて、“そうだ!!”ぽんと手を叩く。
「ハルの服を買いに行こう!!」
「え……?」
対するハルは、小首をかしげている。
「いつも、美味しいご飯作ってくれるお礼。それに、そろそろ食料が切れそうだし、大きいショッピングモール行こう」
うん、我ながらいい提案な気がする。人というもの感謝の心を忘れてはいけない。……というのは、あくまでも建前で、本音を言えば、着飾ったハルを見てみたかったっていうのもある。
“どうかな?”とハルに言えば、少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに“マスターが言うなら”とどこか楽しそうに答えた。
♢ ♢ ♢
「いらっしゃいませ」
少し離れた大型ショッピングモール。店内に入ると女性の店員が、声をかけてきた。男性物の洋服店。男性物の洋服店なので、男性店員だとばかり思っていたので、今どきの男性物の洋服店は、女性の店員さんもいるんだなと認識を改めなければならないなと思う。
「何か、お探しですか?」
ここぞとばかりに、女性の店員が近づいてきた。一度、捕まるとなかなか離してくれない。しかも、「これ、新作なんですよ~!」と勧められれば、あまり好みでなくとも、無下にはできずに、ついつい買わされてしまう。そうならないためにも、先手必勝。
「今日は、色々見てみようと思いまして。何かあったら、また声をかけます」
失礼のないよう、とりあえずその場を収めるには、持って来いの決まり文句だ。ショッピングをゆっくりと楽しみたい人には、ぜひ使ってほしい。
「かしこまりました。また御用の際は、お申し付けください」
どうだ?してやったりだ。十中八九、こう言ってしまえば、余程のしつこい店員でない限り、こちらが声をかけるまで、話しかけてこない。私は、幾度となくこの言葉でくぐりぬけてきたのだから。心の中で、ガッツポーズをしていると、隣で、くすりと笑う声がした。
「……ん?どうしたの?」
わずかに見上げれば、ハルが口元を緩めていた。
「いや、マスター楽しそうだなって」
「楽しそう?」
「うん、したり顔っていうのかな。会心の一言だったんでしょ」
「え…?顔に出てた!?」
うわ、それは恥ずかしい。
「マスターって、すぐ顔に出るからね」
「……あまり言わないで」
いたたまれなさに思わず両手で顔を覆えば
「マスターのそういう素直なところ、俺はいいと思う」
ハルはまたくすりと笑い、そう答えた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる