19 / 26
第六話 言えない本音
Chapter19
しおりを挟む
―怜二―
三浦から提出された出張報告書のチェックをしながら、そっと様子を窺う。
俺の視線に気づいているのか無視しているのか、三浦はPC画面から一切目線を上げない。名木ちゃんと一緒に昼休憩から帰ってきてから、どうも様子が変だった。
小さくため息をついて、報告書の不備に赤ペンで印をつけていく。
「佐伯さん、会議資料の確認お願いします。」
「ああ…ありがと、名木ちゃん。」
「総務に行って来ますね。」
「うん。」
名木ちゃんが席を立ったところで、もう一度三浦を見た。
内線に出ていたが、短い用件だったのかすぐに受話器を置いたので、立ち上がってそばに行く。
「三浦、これ直しといて。」
「あ、はい。」
返事をして俺を見たかと思えば、すぐに目を逸らされた。
俺も特に何も言わず、そのまま席へ戻る。
名木ちゃんが作った会議資料のフォルダを開くが、内容が全く頭に入ってこない。
…やっぱり、この間の事が原因やろか。
あの日の夜、酒に酔ったせいもあって余計なことを話しすぎた。
翌朝目が覚めてから冷静に思い返すと、顔から火が出そうな記憶ばかり鮮明に残っていて。
幸い、二日目は朝から別行動で帰りの新幹線の時間もずれていたから顔を合わせずに済んだものの、週明け初めて顔を合わせた時はさすがに気まずかった。
…なんて思っていたのは俺だけだったのか、三浦は全部忘れたみたいな顔して普通に挨拶してきたのだが。
あれから一週間近く経つのに、何で今になって急に…。
「…い、おい。佐伯。」
「へっ?」
肩をゆすられ、慌ててナベさんの方を向く。
「どうしたんだよ。」
「え、何がですか。」
「何がじゃないだろ、さっきからずっと上の空で。」
ナベさんが俺のPC画面を指さす。
「あ…。」
画面を見ると、ずっと無意識にスクロールし続けていたのかデータの入力の無いページが表示されていて真っ白だった。
「ちょっと来い。」
「え?どこ行くんですか、ナベさん。」
「いいから。」
強引に腕を掴まれて席を立たされ、エレベーター脇の自販機そばにある休憩スペースに連れて行かれた。
「何、怒られるんですか俺。」
「座れ。」
「はい。」
スツールに腰かける。ナベさんも隣に座って内ポケットを探りながら、ここが社内だということを思い出したのか小さく舌打ちした。
「最近はどこも屋内禁煙でやってらんねーな。」
「喫煙OKやったとしても、今吸ったらまずいでしょうが。」
「まあいいわ、そうじゃなくてだな。」
腕を組み、ナベさんがこちらを見る。
「三浦と何かあった?」
「…何か、って…?」
背筋がひやりとする。どう誤魔化したものか悩んでいると、ナベさんがため息をついた。
「出張から帰ってきてから、お前ら変。目合わせないし気まずそう。かと思えば、何か言いたげに見てたりするし。」
「見てるって、俺が?」
「どっちも。…何、三浦が何かやらかしたの?」
「そういうわけじゃ…。」
歯切れの悪い俺を見かねたのか、ナベさんは、何だよおい、と笑いながら肩を抱いてくる。
「何かあったなら、ちゃんと上に報告しないとな~?」
「別にナベさん、上司やないでしょ…。」
苦笑しながら、ナベさんの腕から逃げる。どう話したものか迷っていると、よし、とナベさんが立ち上がった。
「今夜飲みに行こうぜ、佐伯。」
「ええ?ナベさんと、サシで?」
「いいじゃんたまには。予定あんの?」
「別に無いですけど。」
なら決まりな、とナベさんは俺を置いてさっさと営業フロアに戻って行ってしまった。
三浦から提出された出張報告書のチェックをしながら、そっと様子を窺う。
俺の視線に気づいているのか無視しているのか、三浦はPC画面から一切目線を上げない。名木ちゃんと一緒に昼休憩から帰ってきてから、どうも様子が変だった。
小さくため息をついて、報告書の不備に赤ペンで印をつけていく。
「佐伯さん、会議資料の確認お願いします。」
「ああ…ありがと、名木ちゃん。」
「総務に行って来ますね。」
「うん。」
名木ちゃんが席を立ったところで、もう一度三浦を見た。
内線に出ていたが、短い用件だったのかすぐに受話器を置いたので、立ち上がってそばに行く。
「三浦、これ直しといて。」
「あ、はい。」
返事をして俺を見たかと思えば、すぐに目を逸らされた。
俺も特に何も言わず、そのまま席へ戻る。
名木ちゃんが作った会議資料のフォルダを開くが、内容が全く頭に入ってこない。
…やっぱり、この間の事が原因やろか。
あの日の夜、酒に酔ったせいもあって余計なことを話しすぎた。
翌朝目が覚めてから冷静に思い返すと、顔から火が出そうな記憶ばかり鮮明に残っていて。
幸い、二日目は朝から別行動で帰りの新幹線の時間もずれていたから顔を合わせずに済んだものの、週明け初めて顔を合わせた時はさすがに気まずかった。
…なんて思っていたのは俺だけだったのか、三浦は全部忘れたみたいな顔して普通に挨拶してきたのだが。
あれから一週間近く経つのに、何で今になって急に…。
「…い、おい。佐伯。」
「へっ?」
肩をゆすられ、慌ててナベさんの方を向く。
「どうしたんだよ。」
「え、何がですか。」
「何がじゃないだろ、さっきからずっと上の空で。」
ナベさんが俺のPC画面を指さす。
「あ…。」
画面を見ると、ずっと無意識にスクロールし続けていたのかデータの入力の無いページが表示されていて真っ白だった。
「ちょっと来い。」
「え?どこ行くんですか、ナベさん。」
「いいから。」
強引に腕を掴まれて席を立たされ、エレベーター脇の自販機そばにある休憩スペースに連れて行かれた。
「何、怒られるんですか俺。」
「座れ。」
「はい。」
スツールに腰かける。ナベさんも隣に座って内ポケットを探りながら、ここが社内だということを思い出したのか小さく舌打ちした。
「最近はどこも屋内禁煙でやってらんねーな。」
「喫煙OKやったとしても、今吸ったらまずいでしょうが。」
「まあいいわ、そうじゃなくてだな。」
腕を組み、ナベさんがこちらを見る。
「三浦と何かあった?」
「…何か、って…?」
背筋がひやりとする。どう誤魔化したものか悩んでいると、ナベさんがため息をついた。
「出張から帰ってきてから、お前ら変。目合わせないし気まずそう。かと思えば、何か言いたげに見てたりするし。」
「見てるって、俺が?」
「どっちも。…何、三浦が何かやらかしたの?」
「そういうわけじゃ…。」
歯切れの悪い俺を見かねたのか、ナベさんは、何だよおい、と笑いながら肩を抱いてくる。
「何かあったなら、ちゃんと上に報告しないとな~?」
「別にナベさん、上司やないでしょ…。」
苦笑しながら、ナベさんの腕から逃げる。どう話したものか迷っていると、よし、とナベさんが立ち上がった。
「今夜飲みに行こうぜ、佐伯。」
「ええ?ナベさんと、サシで?」
「いいじゃんたまには。予定あんの?」
「別に無いですけど。」
なら決まりな、とナベさんは俺を置いてさっさと営業フロアに戻って行ってしまった。
22
あなたにおすすめの小説
オメガはオメガらしく生きろなんて耐えられない
子犬一 はぁて
BL
「オメガはオメガらしく生きろ」
家を追われオメガ寮で育ったΩは、見合いの席で名家の年上αに身請けされる。
無骨だが優しく、Ωとしてではなく一人の人間として扱ってくれる彼に初めて恋をした。
しかし幸せな日々は突然終わり、二人は別れることになる。
5年後、雪の夜。彼と再会する。
「もう離さない」
再び抱きしめられたら、僕はもうこの人の傍にいることが自分の幸せなんだと気づいた。
彼は温かい手のひらを持つ人だった。
身分差×年上アルファ×溺愛再会BL短編。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる