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二人きりのお茶会
しおりを挟む温室に着くと第二皇子は俺が逃げない事を確認し、温室の扉をゆっくりと開けた。
「うわ...すごい......」
中へと足を踏み入れると色とりどりの花々とその香りが一面に広がり、美しく整えられた温室の中央には、高価そうな白いテーブルと二人掛けのソファが二つ置いてあり、テーブルの上には美味しそうな焼き菓子やケーキが並んでいる。
「座ろうか。」
そう言うと第二皇子は俺の手を引き、自分の隣へと座らせた。
(.......あれ?)
「あの.....殿下?」
「どうしだ?」
「俺は向かいの空いているソファに座ります。」
わざわざ隣同士で座らなくてもいいんじゃ.....
「私の隣は嫌か?」
「いえ、そういう訳では....」
嫌という訳ではない。だが隣はおかしいと思う。
「でも「ここに座っていろ。」
「.......はい。」
第二皇子からの圧を感じ大人しく隣へ腰掛け、美味しそうなお菓子達をじーーっと眺めた。
そんな俺を見つめていた第二皇子が微笑み、
「今日はクレノの為に茶と菓子を用意させた。自由に食べてくれて構わない。」
そう言ってくれた。
(やった!!!)
俺は心の中で大きく叫ぶ。
実は大の甘党なのだ。
俺の実家は子爵家の中でも特に貧乏で、高価なお菓子やケーキを買うのも一苦労。
だが美味しそうなお菓子達を見つけると、つい買ってしまう。
おかげでいつも金欠だが、それでも買う事を辞められないくらい自分は甘い物が大好きだ。
しかもここに置いてあるものは、すぐに売り切れてしまうような買う事が困難な有名店のスイーツ達ばかりだった。
「.....本当に食べても良いんですか?」
「ハンカチを貰ったお礼だ。遠慮するな。」
(俺をここに連れてきたのって、お礼の為だったんだ......)
色々考えてた自分が馬鹿らしくなる。
「そ...そういう事なら遠慮なく....いただきます!」
俺はフォークを持ち、美味しそうなショートケーキを口の中へと運んだ。
「......っ!!」
(美味しい.....美味しすぎる!!!)
クリームは甘すぎずしつこくない。イチゴも少しの酸味が丁度いいし、今まで食べた中でも上位に入るほど美味しいショートケーキだった。
「美味いか?」
「はい!すごく美味しいです!」
あまりの美味しさに、相手が第二皇子だというのに満面の笑みでそう答えてしまった。
「.....っ」
第二皇子は俺から視線を外し、明後日の方向を向いてしまう。
(ん?顔が赤いような......気のせいか?)
そう思いながら、まだ皿の上にあるショートケーキへと手を伸ばした。
「......そんなに美味しいなら、私も一口いただこうか。」
「え?」
その言葉でケーキから第二皇子へと視線を向けると、第二皇子は俺の目の前で口を開いていた。
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