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杖とポーション 編
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しおりを挟む日が昇りきる前には起床。
ベットがいいからか、緊張していたからかパチッと目が覚めた。
「おはよう」
「「おはよー」」
天気もよさそうで旅立ち日和だ。
王都を出発する人が多い時間帯は門の審査も混雑するので、なるべく人の出入りの少ない時間を狙うらしい。
ただ、朝晩は門が閉めきられるので何時の時間もそこそこ混雑するため気休め程度だ。閉門に間に合わず塀の外で夜を明かす人もいるそうだ。
夜の閉門間際で出発するという手もあったけど、夜道を進むのも安全と速度を考えると明るいほうが断然良いとのことで、早朝出発となった。
宿屋で朝食をすませた後、昨日の孤児院の子達から買ったリボンを使ってお母さんが上機嫌で髪をきれいに編み込んでくれた。なんだか懐かしい気分……でも、こんなに手の込んだ髪型はたまにでいいかな。
昨日、購入した装備類もしっかり身につけたあとお茶も水筒に用意し、出発準備が完了した。よし、忘れ物はないよね!
「よし、行くわよ」
「おう」
「うん」
門近くに用意してあるという荷馬車に乗り込み南門から出発することになっている。
第1目的地はラウナード子爵領だ。
昨日、両親に具体的に行きたいと思っているところを告げておいた。大体はふたりの想像通りだったらしい。うん、両親とは味の好みも似てるからね……丸わかりだったんだね。
ただ、相談したところ……ふたつみっつ離れていて、なおかつ訪れたことのない街を目指すよりも、すこし険しい道を進んで野営しながら真っ直ぐにラウナード子爵領を目指した方がいいとのことだった。
ラウナード子爵領でも十分にお祭りは楽しめるし、美味しい果物が取れるダンジョンもあるし……私が候補に挙げた街はお祭りは楽しめるかもしれないけど、残念ながらそこまで食事に力をいれてないため王都と似たようなものしかないとのこと。
それならば美味しいものがあるらしいラウナード子爵領をまっすぐ目指すということになり目的地が決定した。
つまり私は美味しいものが食べられれば多少、険しい道だとしても野営でも何でもいいのだ。
「ティア、門ではよほど怪しい行動しなければ大丈夫だから!リラッークス!」
「う、うん」
「ティア、楽しい旅にしような!」
「うん!」
あ、この旅の道中はティアって呼ぶことになっている。今はちょっと慣れないけど、そのうち自然に反応できるはず。
◆ ◆ ◆
がたがたと舗装されていない道を荷馬車が進み……ゆるやかに景色が流れ、だんだんと王都から遠ざかっていく。
「ふぅ……」
「心配することなかったろ?」
「うん、そうだね」
王都を出るときには少しドキドキしたけど……出ていく人はよほど挙動不審でなければそこまで厳重にチェックしないみたいだ。
どちらかといえば王都へ入る人を厳しくチェックしている印象で、入門の方が時間がかかっていていたようだ。
門では徒歩、馬車(荷馬車)、貴族などに審査場と門が分かれていた。
今回は馬車などが通る大きめの審査場に通され冒険者証を魔道具にピッとかざすだけだそうだ。
貴族は別として病気などで動けない者を除き効率のためにも降りておくらしい。そして、荷馬車などに他の人が隠れていないか軽くチェックを受ける。
誘拐されたひとが見つかったり、怪しい荷物の摘発が年に数回はあるようだ。
かざすときにカードに登録された魔力と違う人物が使ったりすると大きな音で知らされる仕組みのようだ。
王都のものは熟練の魔道具師のものを使っているけど、他の街ではもう少し時間がかかったり(弟子レベルの魔道具)小さな街や村ではこの魔道具自体がなく、身分証の提示をするかなければ保証金を払うことで入れる。
まぁ、ほんとに小さな集落ならそういうのすらないけど……集落みんな顔見知りでよそ者は注目の的だし、少しでも下手なことしたら集落全体が敵に回るとか。
この魔道具も落ち人ヒヤマ様が作ったらしい……私が知らないだけでたくさんのものが生み出されているんだろうな。
「こちらにカードを」
「はい」
カードを魔道具にピッとかざした瞬間、衛兵さんにちらっとこちらを確認されたけど聖女だとは気づかれなかったと思う……
何度か会ったことあるはずだけど、あの時はベールしてたからかな。それとも聖女は貴族用の門を通っていたのかな?
特に何も言われなかったからひと安心してお母さんの側へ寄る。
悪いことしてるわけじゃないのに無駄にドキドキしちゃった。
ただ、両親のことはものすごくジッと見て緊張もしていたみたいだけど。キラキラした瞳で見つめる衛兵さんもいて、Sランク冒険者って憧れとか恐怖の対象なのかな。多分、両親なら貴族用の審査場に行っても問題なく通れると思う……
聖女として移動するときはこういうのしたことなかったし、世間知らずなんだなぁって実感してしまった。
それに今、乗っている荷馬車は私ために用意してくれたそうだ。
馬は両親が預けていた子たちで……かつて魔物との掛け合わせで作られた強く、賢く、移動速度も早いと希少種のアルとルティだ。
若干気難しいタイプらしいのだけど
「えっと、よろしくね」
「ヒヒーンッ」
「ブルルルッ」
『そうか、お前が妹分か……』みたいな態度で荷馬車に繋がれても大人しく受け入れてくれた。
確かにわたしの名前からつけたのかな?って思ったけど妹分って……あ、でもお父さんはアルフレッドだからそっちかな?
荷馬車は荷台部分に幌がかかっている簡単なものだけど、中が見えないならそれで十分だとか。
馬と荷馬車が若干釣り合っていないけれど……そういうことはままあるようなのでそこまで悪目立ちはしないらしい。
昨日、お父さんが別行動したのは馬や荷馬車の用意するためでもあったようだ。
何事も起こらなければ今日、明日は森で野営して、明後日の夕方くらいに目的地のラウナード子爵領に着く予定だ。
街道の人がまばらになったので歩くことにする。街の外をこうやって自由に歩くの久しぶりだなぁ……
「じゃ、行くか!」
「ティア、疲れたらすぐに言うのよ!」
「はーい!」
もともと出発した時に荷馬車に乗っていたのはお母さんの魔法をかけてもらってなかったから。旅の最中は何があるかわからないから念のため魔力節約したとのこと。だから、挙動不審にならないよう注意されたんだよね。
・
・
・
「ほら、遠慮すんな」
「そうよー」
「……うん」
しばらくは頑張って歩いていたんだけど、体力がないせいか徐々に遅れだしてしまい結局荷馬車に乗ることになってしまった。
どうやら最低でも荷馬車の進むスピードで移動できないと野営が1日増えてしまう計算らしい。歩くといいつつ、小走りでずっと移動だったし結構きつめの日程かも……
はぁ……子供のころは移動も余裕だったのになー……お母さんは今でも余裕そうだ。
御者のお父さんの横で落ち込んでいたら……
「ティア、そんな落ち込むなよ!ルルースと比べるのは阿保らしいってわかってるだろ?」
「……うん」
そうだよね?荷馬車よりも早いスピードで走り回って魔物を倒しては荷馬車に素材や食べられる部位を凍らせては詰め込むお母さんと比べるのは違うよね?というかボアとかだと街道からちょっと離れててもわざわざ倒しに行ってるし……美味しい魔物を逃す手はないらしい。
しかも、魔力節約のために魔法は凍らせるときだけしか使ってないんだよ。お母さんって剣あんまり得意じゃないって聞いてたのに……Sランク冒険者ならこれくらい余裕でてきて当然なのかぁ。
「まぁ、雑魚とはいえ一般人には十分脅威だからなー……冒険者の義務感みたいなもんで倒せるならやっとこうってことだろ……あ、ボアは食用目的だろうな」
「そっかー」
荷物は休憩時に仕分けするらしい。
私からはよく見えなかったけれど、倒したその場で大雑把に解体していらない部分は埋めてるらしい。それで荷馬車に遅れないっていうんだから恐ろしいスピードだよ……
魔物を埋める穴はどうやってるんだろうって不思議に思ってたら何度か地面を殴ればいいよと謎の返事がきた。うん、さすがSランク……
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