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杖とポーション 編
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しおりを挟むガタガタ……ガッ…………ガタガタ……ガッ!……
うーん、休憩前よりは揺れているけれど……それを口に出すような愚かなことはしない。
だって、さっきその愚かなことをしてお仕置きされているのを目の前で目撃しちゃったんだもん……ぶるぶる。
「どうかした?」
「う、ううん!なんでもないよっ!」
聖女がのる馬車はこの荷馬車よりうんといいものだということを忘れていただけさ……え?休憩前の乗り心地?記憶にない。ないったらない。
そうだ、きっと休憩前よりも道が険しくなったんだと思っておこう。決して御者のせいじゃないったら!
ポーションを作るのも結界石を作るのもこれくらいならなんとかなるさ……たぶん。急停車や横転しない限りは……ね。
早速、荷台でポーションを作ってみることにした。
聖女のときに愛用していたクッションに座る……おぉっ、ちょっと揺れが軽減された!お尻へのダメージが軽くなりそうだ。
「じゃ、ちょっとポーション作ってみるからー!何かあったら声かけてね」
「はーい」
話したら舌を噛みそうになった……道が険しいときはなるべく話さなくてすむように気をつけよう。
ポーションの作り方は何種類かある。
まずひとつめは……
何種類かの薬草やきれいな水を鍋に入れ、火にかけ魔力を込めつつ混ぜて作るもの。
これは魔力制御さえうまくいけば比較的誰にでも作れるポーションだ。
けど、効果は低く売り物には適しておらず、ギルドでも買取はしていない。あくまでも身内で消費するくらいが精々かな。ポーションもどきと呼ばれることもある。
ただ、たくさんの種類の薬草を集めたり、失敗する可能性を考えたら買った方がいいってなるから、この作り方をしているのはなかなか行商人も訪れず、ポーションが手に入りづらい集落や村の人たちらしい。そういうところではポーションもどきでも作れるだけでありがたがられるようだ。
ふたつめ……
錬金釜に数種類の薬草やきれいな水をいれて火にかけて魔力を込めつつ混ぜて作るポーション。
ひとつめと同じような作り方だけど、こちらは錬金のスキル持ちでないと駄目らしい。
それに錬金釜はかさばるし管理も大変。作るポーションによってはいくつもの錬金釜が必要な上、価格も高い。代々錬金術師の家系ならば初期費用が抑えられるけど、独学は難しく弟子入りする必要があるなど敷居はかなり高い。スキルの儀で錬金スキル持ちと分かった場合なら紹介もしてもらえるらしいけど、大体は弟子入りして長年修行してスキルを得るらしい。
スキルを使用するので同じ薬草を使ってもひとつめより効果の高いものが作れるし、売り物レベル。
街で1番出回っているのが錬金術師の作ったポーションかな。
そして、最後に私の作り方。
まず、ポーション用調合セットを用意します……中身はすり鉢、すりこぎ棒、器、木べら、匙、漏斗だ。
昨日買った大きめの桶の中の水(杖の練習でだしたやつ)を器に移す……結構いっぱいになったけどギリギリセーフ!
「ふぅ……」
そーっと器を桶のなかに設置。こぼれてもこれで安心。これを揺れる荷馬車でほとんどこぼさなかった私すごい……
「まずは体力ポーションから作るかぁ」
それぞれ杖ありと杖なしで作ってみるのがいいかな……
「まずはいつも通りでいいか……」
通称:体力草を水が入った器に入れ浄化する。あれ、水の量に合わせ薬草をいれたから結構な量になりそう……
そのまま魔力を込めつつ木べらで混ぜる。するとだんだんと溶けてなくなりピカッと光れば完成!
他の作り方と違って圧倒的に薬草が少なくて済むのが便利だよね。
中級ポーションになるとまた精霊石を砕いて混ぜたり、妖精の蜜といわれる花にたまる蜜をいれたりするんだけど……初級ポーションなら体力草と水でできるから本当に簡単。
「よし、できた!」
瓶に移して封をすれば出来上がり。水魔法がもっとうまく使えれば漏斗で移しかえなくても水魔法を駆使して瓶詰めできるらしい。何度も練習してみたけどポーション瓶に入るより飛び散る量のほうが多くてもったいないので今は移しかえるのは漏斗を使ってる……練習は続けているのでいつかできるようになりたいな。
お母さんなんか余裕でやっちゃうんだよね……
あ、薬草は必ずしも浄化が必要がなわけじゃなくて……私はなんとなくきれいになーれ!と思ってやっている。
どちらにしろきれいな水でないとポーションの品質に関わるし、一緒に浄化してしまえば簡単だからだ。
あとは薬草をすりつぶすことで効果をあげることが出来るようなんだけど……私の場合やり方が悪いのか、すりつぶしてもみても切り刻んでみてもあんまり変わらなかった。だからその方法はほとんど使っていない。
あとはポーションの効果をあげることのできる薄ピンク色の花の通称:幸運花をいれることもあるけど、まず見つけられた幸運だという意味から通称がついてるから入れることはほとんどないかな。でも、初級ポーションの材料で中級ポーションができるぐらいすごいものらしい。
ただ、初級ポーション作りで使うのはもったいないため高ランクポーション作りで使用することが圧倒的だ。
運良く手に入れた場合、ギルドなどに持ち込めばかなり高額で買取してもらえるので材料がない時はその方法を取ることも多いとか。
私流ポーション作りはみんなに作り方を説明してもそんな簡単に作れるはずないって信じてもらえないんだけど、これで作れちゃうんだよね。
他の聖女たちも似たような作り方だと思う。だって候補者のときに習ったのを自分がやりやすくアレンジしてるだけだから。
時には仰々しく見える儀式なんかをやる聖女もいるけれど……ほとんどは意味がない。パフォーマンスってやつ……まぁ、その儀式をやることで本人のやる気が高まり品質向上の効果を発揮することもあるからひとによるとしか言えない。
私もかつて1度だけ試してみたけれど羞恥心が勝ち、集中力が散漫になってしまい結果品質も下がるという現象が起きた……ひとには向き不向きがあるらしい。
でも、私流ポーション作りは火を使って煮るという工程をはさむ必要がないから、揺れる馬車の中でもできるのは便利だよね。
大きめの桶を買ったから、瓶に入れるときこぼれても安心だし。
同じように〈魔力ポーション〉も比較用に作った。
「次は杖ありでやってみるかぁ!」
とりあえず杖を使用した〈体力ポーション〉を1本分作ってみたけど……やっぱこの杖、規格外すぎるよ。
だって、まず浄化の段階で明らかに水や薬草の様子が違うし……片手に杖を持って魔力を込めたんだけど、木べらで混ぜる時間もいつもの半分以下。完成の目安の光もピカッでなくペカーッて眩しいくらいだった。
出来上がったポーションは杖不使用のものよりも透き通っているし、キラキラ度も違う……
「とりあえず……あとでふたりに見てもらおうかな」
結局……
杖不使用の〈初級体力ポーション〉8本、〈初級魔力ポーション〉4本。
杖を使用した〈初級体力ポーション〉5本、〈初級魔力ポーション〉5本。
杖を使用しさらにスウィの実を混ぜた〈初級体力ポーション・改〉10本、〈初級魔力ポーション・改〉10本を荷馬車の揺れも忘れて集中してつくったところで荷馬車が止まった。
……ん?何か起きたのかな?
外をのぞきたい衝動にかられたけど、声がかかるまでは中でじっとしておこう。素人が下手に行動すると迷惑かもしれないから……
「ティア、休憩だぞー!」
「あ、はーい」
「一応、結界石も準備してねー!お昼よー!」
「わかった」
なんだ、お昼休憩だったのかぁー。無駄に心配してしまった。
というかいつのまにそんなに時間が経っていたんだろう……そういえば同じ姿勢だったからか身体がこわばってるなー。
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