猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!

友坂 悠

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龍神族。

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「なあなあお嬢ちゃんたち豪勢だね。俺たちにも何かご馳走してくれよ」

 ん?

 なんだか知らないおじさん達があたしたちの席を取り囲んでそう言った。

「んー。あたしたちお店の人じゃないのでー。食事を頼みたいならちゃんと席について注文すると良いですよー」

 あたし、ほろ酔い加減もあって思いっきりの笑顔でそう答える。

「ふざけんな!」

「まあまあ、お嬢ちゃんたちお金持ちみたいだからさ、腹をすかせた俺たちにも飯を奢ってくれないか? って話さ」

 いかつい人が一人怒鳴ったのを手で抑え、もう一人のちょっと偉そうなおじさんがそう言う。

 はーん。

 要するにこれはタカリ?

 ギルドでティアが別室に呼ばれる所を見てたってところかな。

「ああわかりました。そういうことなのですね。うーん。でもそういうお話ならここじゃ人の目もありますから、ちょっとお店の外に行きません?」

「えらく素直じゃねーか。最初からそういう態度でいりゃぁいいんだよ」

 と、いかつい人。フンと鼻を鳴らしてそう言う。

「ほう。あんたが持ってるってわけだな。じゃぁちょっと店の裏で融通してもらおうか」

 と、偉そうな髭もじゃな男の後をついてあたしは立ち上がって店の外に向かった。

 ——大丈夫? レティ。

 うん。カイヤはティアを守ってて。

 まあこれくらいならね?



 店の外に出てちょっと路地裏にまわる。

 ここならあんまり人目も無いし。


 男たちは全部で五人か。髭もじゃにいかついの。残りは下っ端みたいなひょろっとしたのが三人。

 冒険者らしく革の鎧で身を固めてる。一人は杖だから魔道士っぽい?

「なあ嬢ちゃん。なあに、持ってる金の全部とは言わねえ。八割で勘弁してやるから融通してくれねえかな」

 そう髭もじゃ。ニヤニヤと笑う顔が気持ち悪い。

 いかついのはギロッとこちらを睨んでる。脅してるつもりなんだろうな。

「ごめんなさい。お金ってなんのことでしょう? あたしたち初級冒険者ですし、今日の稼ぎはさっきのごはんで使っちゃいましたよ?」

「てめえ、ふざけてんのか!」

「えー。ふざけてなんかないですよう。ほら、おさいふの中身これですよ?」

 あたしはおさいふの袋を出して中を見せるように開く。そこには10ギル硬貨が5枚だけ。今日のご飯は30ギルくらいだから支払ったらそんなに残らないかな。

「このやろう、大人しくしてりゃあ調子に乗りやがって。なんなら身体で支払って貰ってもいいんだからな!」

 いかついのがあたしの手を取って引っ張ろうとした所であたし、そのいかついのを投げ飛ばした。

 え? っという表情をする他の男たち。

 あたしの手の動きが早すぎてよく見えなかったかな?

「あらあら、いきなり転んで。どうなさったのです?」

 そう振り返ってみるといかついのは頭から落ちたからかぐったりしてる。まあ死んじゃっては無いのはわかるけど。

「こいつ!」

 髭もじゃが殴りかかってきた所を今度は体をそっとずらすことでいなす。勢い余って転がっていく髭もじゃ。

「兄貴!」

 下っ端三人が髭もじゃのところに駆けつけた所であたし。

「あんまりおいたが過ぎるといい加減わたくしも怒りますよ?」

 と、彼らを睨んだ。

 ああ、視界が赤く染まるのがわかる。

 普段琥珀色をしている今のあたしの瞳。たぶん今は真っ赤になってるかな。


「ヒッ、赤い眼……。こいつ、龍神族か!」

 あたしのエメラルドグリーンの髪が月をバックにぶわっと広がり、そして眼が赤く光る。

「兄貴!」

「申し訳ねえ、見逃してくれ……」

 男たちは完全に萎縮してしまっている。

「これ以上何もしなければこちらも何もしませんわ。さあ、さっさとお帰りなさい」

 あたふたと気絶したいかついのを担ぎ逃げ出すように去っていくその男たち。

 まあ、しょうがないな。

 夜風が涼しくて、せっかくの酔いも覚めちゃったよ。
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