猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!

友坂 悠

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魔獣。

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 魔獣は倒すと魔石だけが残る。

 それはあたしたちのマトリクスにも通じる所があるのかもしれなくて。


 マトリクスはマナで作った膜、レイヤー? そんなものに情報を投影したものだ。

 最初はその仕組みもよくわかっていなかったけど、あたしのドラゴンオプスニルはその操作を自動で行う魔具なのだ。

 でも、あたしが怒りと共にそのマトリクスをもう一段二段と重ね掛けして龍化を進めることが出来たのはこのドラゴンオプスニルの力だけでは無かった。

 大聖女サンドラ様によってあたしの中に書き込まれた数々の魔法陣、魔法術式のキオク。それらの中にあったのだ。このマトリクス制御の魔法、マジカルレイヤーの魔法術式が。

 そのおかげ? あたしは今三段階四段階くらいまでのマジカルレイヤーの重ね掛けも実は可能だ。

 かなりのマナを消費するから滅多な事では使えないのだけど。



 魔獣は魔によって発生する。

 魔物は魔によって動物が変異した物。繁殖をして増える、ちゃんとした肉体を持っている。

 けれど魔獣は魔が溜まっている場所には自然と発生する。核となる魔石の周囲を形作るのは魔によるレイヤーなのだ。


 この世界の外側にあるのがマナ。内側にあるのが魔。この空間を一枚の幕に例えると、その裏側に存在するものが魔なのだ。

 魔はこちらの表の世界にも度々溢れ出てくる。そうした魔から産まれるのが魔獣なのだった。


 だから。

 あの砂塵のある場所に魔獣が大量に発生したのだとすれば、そこにはもしかしたらこのあたしたちのいる空間に異常があって、そこから大量の魔が溢れ出ているのかもしれない。

 だとしたら。

 魔獣を倒すだけでは終わらない。

 その魔が溢れる場所を特定して、その空間を修復しないと。






 カイヤが引く馬車に乗っているのはケルタルの屈強な男達が六人。

 あたしとティアはその馬車の幌につかまるようにして飛んでいる。

「さあそろそろだよ。あたしがまず中央に突っ込むから援護して! お願い」

 まず出来れば中心部にあるだろう空間の綻びを修復する。あたしの聖魔法なら可能だし。

 と、そんな作戦も話してはあるし、そのための魔法陣もちゃんと思い浮かべてある。

「じゃぁあたいがレティシアの周りの魔獣を受け持つよ! カイヤとおじさん達はとにかく数を減らして!」

「おう! 任せとけ! 頼んだぜ嬢ちゃん達!」

 ハオーン!

 カイヤも雄叫びをあげる。


 そうしてあたしたちは目の前の魔獣の群れに向かって突進した。l
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