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癒しの光。
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「おお……」
そんな声があがった。
破れた幌から差し込む陽光がその降り注ぐ金色の粒子を煌めかせる。
痛みに苦しんでした子供も、女性も、そしてその子らを庇って大怪我をしていた男性も、皆の呼吸がだんだんと穏やかになる。
「ああ、痛いの、飛んでった……」
さっきまで痛みに泣いていた少女がそう、ぼそっと呟く。
あは。これでもう大丈夫、かな?
「ねえ。これでなんとか大丈夫だと思うけどごめん、外の馬は一頭助からなかったよ……」
流石に死んじゃった生き物を生き返らせるのは無理。そんな事が出来るとしたらそんな存在は神か魔王のどちらかだよね。
あたしが振り返ってそう言うと、一部始終を眺めていたモリノークさん、目をまん丸にして茫然としてた。
「あ……、あ……、神よ……」
「大袈裟ね。ただの治癒魔法だからね? これ」
「いや、一瞬でこれだけの人数を治癒できるだけの魔法が使える者など見たことがない……。俺は奇跡でも見ているのか……?」
「もう。ほんと大袈裟すぎ。きっと大きい街に行けばあたしくらいの治癒魔法が使える人なんてはいて捨てるほどいるわよ」
そう言いながら馬車を出るあたし。後ろからモリノークさんもついてくる。
「うーん。やっぱりだめ。3台目の馬車のお馬さんはダメだった。ごめんね間に合わなくって……」
「いや、お前さんはよくやってくれたよ。ほんとどれだけ感謝してもし足りない。あの馬はそういう運命だったのだと諦める、が……。どうするかな」
「だから、あんたたちはラウンタークへ避難して。馬ならあたしたちの馬車の馬を貸してあげるからさ」
「おまえさん、達は?」
「あたし達は、ほら、あの砂塵の魔獣をなんとかしなくっちゃだし?」
ふっと息を吐き出し苦笑いをするモリノーク。
「なら、女子供に数人護衛を残して三台の馬車はラウンタークに避難させる。俺とのこりの男はおまいさんらと砂塵に向かう。それでいいな?」
「危ないよ?」
「はは! ケルタルの男にそんな事で怯むような臆病者は居ない! それにここにこれだけ魔石が落ちているじゃないか! 魔弾の魔石も補充できるしな?」
——なら、馬車はボクが引いてあげよう。
カイヤがその身体をもう二回りほど大きくする。
いいの? カイヤ。
——あれだけの魔獣の数だ。戦力は多いにこしたことはないさ。
うん。ならば。
「じゃぁ一緒に行きましょうモリノークさん。でもあたしもあなた達を守って戦うなんて器用な真似、出来そうにないけどね?」
「は! 女に守って貰わなきゃ戦えないほど落ちぶれちゃいない! 俺らのことは無視してくれてもいい。魔獣を倒すことにだけ専念してくれればいいさ!」
砂塵はまだどちらに動こうともせずその場にとどまっているようだった。
それでも。
あれだけの魔だ。そのままにしてはおけない。
馬車隊の荷物は三台に全て積み込み、女性や子供、そして若いまだ少年のような男の子達がその護衛として残ったようだった。
でも、頭の丸いの、別に成人の人だけじゃなくて子供にも女の人にもみんなあるよね。どういうこと? 成人の証じゃなかったの?
準備が終わったところで一人の少女が小走りに走ってあたしに近づいてきた。
「お姉ちゃん、ありがとう。痛いの痛いの飛んでったのはお姉ちゃんのおかげだよね。これ、お礼。持っていって」
そう渡してくれたのは木彫りの女神像? お守り、かな。
「ありがとうね。これがあれば百人力よ。ほんとありがとうね」
そう言ってその子の頭をくしゃくしゃって撫でた。
えへへと笑顔になるその子が可愛くてあたしも笑顔になる。
で、も?
あれれ? これって……。
真っ黒なお団子は獣耳? まあるい耳だよこれ。
大人の人はそれを髪で隠してる、のかな?
そういうことかぁと納得してあたし、その子の頭を撫でながら、
「絶対あの魔獣達をやっつけてくるからね。安心して!」
そうその子に約束した。
うん。頑張らなくっちゃ!
そんな声があがった。
破れた幌から差し込む陽光がその降り注ぐ金色の粒子を煌めかせる。
痛みに苦しんでした子供も、女性も、そしてその子らを庇って大怪我をしていた男性も、皆の呼吸がだんだんと穏やかになる。
「ああ、痛いの、飛んでった……」
さっきまで痛みに泣いていた少女がそう、ぼそっと呟く。
あは。これでもう大丈夫、かな?
「ねえ。これでなんとか大丈夫だと思うけどごめん、外の馬は一頭助からなかったよ……」
流石に死んじゃった生き物を生き返らせるのは無理。そんな事が出来るとしたらそんな存在は神か魔王のどちらかだよね。
あたしが振り返ってそう言うと、一部始終を眺めていたモリノークさん、目をまん丸にして茫然としてた。
「あ……、あ……、神よ……」
「大袈裟ね。ただの治癒魔法だからね? これ」
「いや、一瞬でこれだけの人数を治癒できるだけの魔法が使える者など見たことがない……。俺は奇跡でも見ているのか……?」
「もう。ほんと大袈裟すぎ。きっと大きい街に行けばあたしくらいの治癒魔法が使える人なんてはいて捨てるほどいるわよ」
そう言いながら馬車を出るあたし。後ろからモリノークさんもついてくる。
「うーん。やっぱりだめ。3台目の馬車のお馬さんはダメだった。ごめんね間に合わなくって……」
「いや、お前さんはよくやってくれたよ。ほんとどれだけ感謝してもし足りない。あの馬はそういう運命だったのだと諦める、が……。どうするかな」
「だから、あんたたちはラウンタークへ避難して。馬ならあたしたちの馬車の馬を貸してあげるからさ」
「おまえさん、達は?」
「あたし達は、ほら、あの砂塵の魔獣をなんとかしなくっちゃだし?」
ふっと息を吐き出し苦笑いをするモリノーク。
「なら、女子供に数人護衛を残して三台の馬車はラウンタークに避難させる。俺とのこりの男はおまいさんらと砂塵に向かう。それでいいな?」
「危ないよ?」
「はは! ケルタルの男にそんな事で怯むような臆病者は居ない! それにここにこれだけ魔石が落ちているじゃないか! 魔弾の魔石も補充できるしな?」
——なら、馬車はボクが引いてあげよう。
カイヤがその身体をもう二回りほど大きくする。
いいの? カイヤ。
——あれだけの魔獣の数だ。戦力は多いにこしたことはないさ。
うん。ならば。
「じゃぁ一緒に行きましょうモリノークさん。でもあたしもあなた達を守って戦うなんて器用な真似、出来そうにないけどね?」
「は! 女に守って貰わなきゃ戦えないほど落ちぶれちゃいない! 俺らのことは無視してくれてもいい。魔獣を倒すことにだけ専念してくれればいいさ!」
砂塵はまだどちらに動こうともせずその場にとどまっているようだった。
それでも。
あれだけの魔だ。そのままにしてはおけない。
馬車隊の荷物は三台に全て積み込み、女性や子供、そして若いまだ少年のような男の子達がその護衛として残ったようだった。
でも、頭の丸いの、別に成人の人だけじゃなくて子供にも女の人にもみんなあるよね。どういうこと? 成人の証じゃなかったの?
準備が終わったところで一人の少女が小走りに走ってあたしに近づいてきた。
「お姉ちゃん、ありがとう。痛いの痛いの飛んでったのはお姉ちゃんのおかげだよね。これ、お礼。持っていって」
そう渡してくれたのは木彫りの女神像? お守り、かな。
「ありがとうね。これがあれば百人力よ。ほんとありがとうね」
そう言ってその子の頭をくしゃくしゃって撫でた。
えへへと笑顔になるその子が可愛くてあたしも笑顔になる。
で、も?
あれれ? これって……。
真っ黒なお団子は獣耳? まあるい耳だよこれ。
大人の人はそれを髪で隠してる、のかな?
そういうことかぁと納得してあたし、その子の頭を撫でながら、
「絶対あの魔獣達をやっつけてくるからね。安心して!」
そうその子に約束した。
うん。頑張らなくっちゃ!
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