猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!

友坂 悠

文字の大きさ
39 / 104

嘘。

しおりを挟む
「カッサンドラ様が転生って、どういう事!? 2000年も前の人でしょうカッサンドラ様って」

 大預言者カッサンドラ様。

 皇帝の妹でありベルクマールの勇者の妻。聖王国の王室のご先祖になるよね?

 そんなカッサンドラ様があたしを産んだ? どういうことよ!

 《あやつは自分の転生先を操れる。遥か未来の事象を操るチカラを持っておった。魔王が復活するだろうという時期に合わせてその時代に転生しておったのだ》

 はう!

 《この時代ではそう、確か大聖女と名乗っておったよな》

 ドクン!

 心の底で何かが弾けた。

 《大聖女サンドラと名乗っておったと聞いた》

 ドクン! ドクン!

 う、そ。

 動悸が激しくなる。

 心臓がドクドクいっているのがわかる。


 あたしは、大聖女様に拾われた、孤児、だった。

 お父さんの顔もお母さんの顔も覚えて居ない。

 まだ赤ん坊の時に孤児院の前に捨てられていた、そう聞いている。


 もしかして、それも全部嘘、だった?


 あたしは大聖女様に愛を教えて貰ったと思っていた。けど。

 全部全部、ウソ、なの?


 空っぽだったあたし。

 その空っぽのあたしを作った、生み出したのが大聖女様だっていうの?

 器として利用する筈だったって事なの!?



 悲しい。

 心が張り裂けそうだ。

 あたしって存在は全部嘘で出来てたんだ。

 大聖女様の優しさも、みんな嘘だったんだ!

 どうして!


 あたしは何かに縋りたかった。そのままじゃもう心が持たない。

 そんな時、ふっと思い出した言葉。

「もし危険な事がおきてどうしようもなくなった時は、その龍玉を通じてわたしに呼びかけて下さい。力になれるかもしれません」

 レヴィアさんが残してくれたその言葉。それしかもうあたしには縋れるものが無かった。


 お願い、レヴィアさん。

 あたし、もうダメ。心が耐えられない。

 助けて。

 おね……がい……。











 あたしのいた場所、その空間がぐねん、と、歪んだ。

 空間がひっくり返るような気持ち悪さを一瞬感じて、周囲の色が消え。

 そしてまた次に光が戻った時。


 あたしは見覚えのある湖のほとりに立ち尽くしていた。

 目の前には人の姿をしたレヴィアさんがエメラルドグリーンの光を纏い、佇んでいたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

処理中です...