猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!

友坂 悠

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魔王のキオク。

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「ここは……」

「いらっしゃいレティーナ。ここはわたしがあなたと初めて出会った湖なのですよ」

「どうして……。あたしノーザランドの近くにいた筈なのに……」

 レヴィアさんは優しく微笑むと少し首を傾げウインクして。

「呼ばれたから——、ですよ?」

 はう?

「んー。わたしがそっちに跳んでも良かったのですけど、一応ここでバルカを抑えておくってお仕事してる途中でしたしね。きてもらった方が早いかと思って」

「え? どうやって!」

 あんなに遠くにいたのに!

「あなたの周囲を包んでそのまま転移させました。空間転移ってご存知ないです?」

 あ、あ、、

 それ、魔導書の中にしか存在しない伝説の技じゃない!

「この世界の裏側には距離というものが存在しませんからね。ちょっと空間をぐるんと裏返して、でもって目的の空間でもう一度ぐるんと戻すだけなのですよ? レイスのゲートからマナの手を伸ばす事ができるのなら、そんなに難しくはないのですけどね」

 そんな、簡単そうに!

「きっとあなたもすぐ出来る様になるわ。あなた、魔王のキオクの器だったのね。サンドラったらどうしちゃったのかしら。あなたをこんなふうに未完成のまま放っておいて居なくなるなんて」

 え、と……。

「レヴィアさん、あなた、あたしのこと知ってたんですか?」

 あたしはそう声を絞り出すようにして吐き出した。

 何もかもみんなもう嫌だ。レヴィアさんまでも最初からあたしのことを知ってたっていうの!? 

 そんな、たぶん泣き出しそうな感じのあたしを見て困ったような顔をしているレヴィアさん。

「うーん。泣かないでレティーナ。ごめんなさいね。あなたのことはそのドラゴンオプスニルを通じてずっと見てました」

「え?」

「だから、はじめから知っていたということならノーです。あなたが知ったことをわたしも知った、という意味でなら、知っていたと言っても良いのですけどね」

「そんな……」

「あなたが心配だったから、っていうのは言い訳にしかなりませんね。謝ります……」

 そう素直に頭を下げる彼女。

 でも。どうして。

「教えてください最初から。そうじゃないともうあたしもうどうにかなっちゃいそう——」

 あたしは我慢が出来ず泣き出してしまった。とめどもなく流れ出る涙がほおを伝って落ちる。

 茫然と立ち尽くしたまま涙が落ちて。手で拭うことも忘れてそのままレヴィアを見つめたあたしに彼女は言った。

「そうですよね。うん。あなたは知るべきだわ。自分のこと、そしてこの世界のこと——」

 知ったからと言って全てが解決する訳ではないですけどね。そう小声で呟いたところまでちゃんと聴こえていたけれど。

 ぽんとあたしの頭に手を置いて、彼女は続けた。
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