「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠

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ポーションの泉。

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 怖い。そんな印象のドラゴンの姿なのに、なぜか親しみを感じるギディオン様の変化した黒竜。
 あんなにも黒く漆黒に染まった状態でも、やっぱりギディオン様だってわかるの。
 なんだか不思議で。

 空中の黒竜に対峙する地上の地竜、アースドラゴン。
 亀のような甲羅に長い首を持つアースドラゴンは、その口をガバッと開いたかと思うと勢いよくブレスを吐き出した。

 あれはあたしが吹き飛ばされたあのブレス。

 ゴゴゴゴゴと激しく空気が震え、一直線に空中の黒竜に向かっていった。

 それに応じるように黒竜の口元にも大量のマナが熾る!

 そのまま黒い嵐を巻き起こし、地竜のブレスを抑え込む。


 一瞬の均衡も、すぐに崩れる。
 黒竜に軍配が上がったのだ。
 ギディオン様のブレスの方が勝り、地竜の肉体を黒褐色の嵐が蹂躙する。

 これで、終わり?

 そう思った。もう他の魔獣もいない。最後の一匹だったもの。

 でも。

 嵐が晴れた時、そこには大きな亀のような甲羅がそのまま残っていた。

「まずい!」

 黒竜のギディオン様がそう叫ぶと同時に、甲羅のあちらこちらから蛇の頭のようなものが大量に飛び出しあたしとお姉様に向けて飛んできて!!

「危ない!!」

 お姉様があたしに被さるように抱きつく。

 そこからはもうスローモーションのように見えていた。


 無数の蛇頭はお姉様に噛みつき破裂していく。
 血だらけになったお姉様。
 ギディオン様の黒竜は、もう一度地竜に向かってブレスを吐く。
 今度こそ、地竜は跡形もなく消えてなくなった、けれど。

「いや、いや、いやーー!! お姉様、お姉様、おねえさま!!」

 多分さっきの聖魔法でお姉様はほとんどの魔力を使い果たしていた。
 自力で回復魔法が使えない、ほどに。

「貴女が無事で、よかった、わ……」

 それだけをなんとか呟き、ボロボロになったお姉様が地面に向け落ちていく。
 真っ白だった羽根も、真っ赤に染まっている。

「ダメだよ、だめ、こんなのだめ!!」

 あたしは落ちていくお姉様の向こう側に特大の水の塊を生み出し。
 バアルとキュアに祈った。

 お願い。お姉様を治して。お願い。お姉様の魔力を回復させて。

 特大のポーションの泉となったそこに、お姉様が落ちていく。
 落下のショックを軽減できていることを、お姉様の体が回復していることを、そして、お姉様の魔力が急スピードで回復することを。

 あたしはそのポーションに祈って。




 そのまま意識を失ったのだった。
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