お飾り妻は離縁されたい。「君を愛する事はできない」とおっしゃった筈の旦那様。なぜか聖女と呼んで溺愛してきます!!

友坂 悠

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侯爵夫人という立場。

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 ♢ ♢ ♢

「貴女にはあたくしのお仕事の補佐をお願いしたいのよ」

 と、そう切り出したのはアウレリアだった。

「お義母様は公爵家の第一夫人としてのお仕事が忙しくなるでしょう? これ以上聖女宮のお仕事も続けられなくて。あたくしも聖女を降りなきゃいけないとしたら、聖女宮も大変になるの」

 お茶会がお開きになった後、エヴァンジェリンに促されるままその場に残ったシルフィーナ。
 プライベートなお話というのはやっぱりさっきのアウレリアの話で。
(わたくしの聞き違いではなかったのね)
 と、安心したシルフィーナに対して、神妙な表情で話し始めたアウレリア。

「聖女自体は学生の令嬢の中から候補が数人決まってるの。でも、エヴァンジェリン様の後任がなかなか決まらなくて。聖女宮長官として全てをまとめる必要があるので難しいのよ」

「わたくしのお仕事は長官なんて名前はついていますけど、完全に裏方の雑用が主ですしね。なかなかやってくださる方がいないのよ」

「聖女は若い女性の憧れでもあるし名誉なお仕事だから、指名すれば受けてくださる方もいらっしゃるのですけどね」

 なるほど、とうなづくシルフィーナ。
 やはり聖女ともなるとそうしてちゃんと教育を受けたものでないと、とも思う。

「ですから、いっそのことあたくしが聖女を降りて長官の職に就こうと思うのですが、それでもなかなか。一人ではまだ自信もなくて」

「わたくしの時にはエデリーン様が最初補佐について下さったからなんとかなった部分もあるのですけどね」

 エデリーン様? 確か伝説の聖女様のように語られていたような。

「エデリーンおばさまはもうお歳だし、ワイマー離宮から出ようとはしてくれませんから」

 そう横に首を振るアウレリア。

「ですからね、貴女のその魔力量の多さと特性値の高さを、聖女宮で生かしてもらえないかと思ったのですわ」

「お義姉さまの侯爵夫人というお立場であれば、一筋縄ではいかない王宮の役人を抑えることも出来ますし」
(え?)

「そうね。お役人たちの中には頭の固いおじさまたちも多いから」

 と、うんうんというように首を縦にふってエヴァンジェリンの言葉に同意を示すアウレリア。

(もしかして)

 侯爵夫人としての立場が求められているのだろうか?
 そうであれば。

 あと2年と少し経てば自分はお役御免になる。
 侯爵家からは離縁されることとなる。
 最近やっとその残りの時間を侯爵夫人としてしっかりと努めよう、旦那様に迷惑をかけないようにしよう、そう思えてきたし領地にいるお義母様の手助けもしなくてはと思えるようになってきたけれどそれでも。
 もちろん離縁され元の男爵家の娘に戻った後は、できれば領地には帰らず聖都で何かお仕事がしたいとは思っていた。
 その方が結果的にマーデン男爵家の役に立つのでは?
 そうも思う。
 聖女宮のような女性が多く働く職場は興味もあったし、そこでなら自分の魔力も国のために活かすことができるのかも?
 そうも考えた。

 でも。

(求められているのは侯爵夫人としてのわたくしなのですね……)

「あの。お申し出は大変ありがたいのですが、そういった内容であればわたくしの一存ではお応えすることができません」

 シルフィーナは下を向き、そう声を絞り出した。

「そこなのよね。お兄様はどうしても首を縦にふってくださらないのよ」

(ああ、やっぱり旦那様は……)

「もちろんシルフィーナさまが領地にお帰りになっている間はあたくしが頑張って務めますわ。ふたりであれば負担も軽くなりますから、良いアイデアだと思ったのですけど」

「最初のうちはわたくしも時間を作ってなんとか手助けをと考えておりますし、お義姉様だってきっとやりがいを感じてくださると思うのですけど。お兄様に何度もお話ししましたけどダメの一点張りで。一度ちゃんとご本人の気持ちを確かめておきたくて」
 自分が本当の侯爵夫人であれば。
 きっとこの申し出に喜んでいただろう。

 自分の力を国のために活かす機会。
 自分が誰かの役に立つお仕事ができる。

 それってとっても嬉しいことで。




「すみません……。お申し出は本当に嬉しいのです。でも……」

 俯いて泣き出しそうになってしまったシルフィーナに。

「ごめんなさいお義姉様。お義姉様がお兄様に逆らってこういう事を決めることなんてできないのはわかるの。だから、またお兄様を口説いてみますわ。ね?」

 エヴァンジェリンにそう言って貰え、この日の話はお開きになった。

 悲しそうに俯くシルフィーナに、アウレリアもそれ以上何も言えなくなってしまい。


 二人に見送られるまま馬車に乗ったシルフィーナは、そのまま泣き崩れた。
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