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山猫亭。
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「あ、あ、ありがとう、ございます……」
呆然とした顔をしてこちらを見つめる少女。
可愛らしいその感じ、まだ10歳くらいだろうか?
「怪我はない?」
手を貸そうと思って伸ばしたけど怖がっちゃった? もう一度そう声をかけてみると恐る恐るな感じではあるけど手を伸ばしてもらえた。
「ありがとうございます。怪我はないです。ほんと助かりました」
そうにこりと微笑むその少女。なんだかすごく大人びた物言いで、そのままゆっくりと立ち上がると。
パンパンとスカートについた草や土を払い、改めてお辞儀をした。
「ならよかった。このあたりはあんな野獣が出るのね。用心しないとね」
あんなグリズリーみたいなのが出没するならこんな幼い子が一人で出歩いていいわけはないよね。
「一人できたの? もしよかったら街まで送ろっか?」
とそう言ってみた。流石に一人で帰すのは気が引ける。
「はうごめんなさい。ありがとうございます。お姉さん強いんですね」
「ふふ。これでもいっぱい冒険してきたからね」
ゲームでだけどね。
「冒険者さんなんですか?」
「うーん、というか旅人? ここには初めてきたから」
「え? そんな軽装でですか?」
「荷物、落としちゃってね」
はう、嘘だけど。
「ああ、じゃぁ、お困りですよね。そうだ! うち宿屋なんですよ。よかったら泊まってってください。お礼しなくっちゃですし」
「あー。それはありがたいんだけど、あたし今お金もないんだ」
「ああ、なら父ちゃんに言ってそこのグリズリーを回収してもらいます。あんな立派なグリズリーだったら肉も毛皮もきっといい値段で売れるはずです。そうすればお姉さんにお礼のお金も渡せます!」
「え? いいの?」
「はい! 任せてください」
そうにこにこと笑う彼女。
小さいのに結構しっかりしてるよ。びっくりだ。
「あたしはマキナ。よろしくね」
「わたしはティファです。うちは街で山猫亭っていう宿屋兼食堂やってます。あは、マキナさん歓迎しますよ!」
そういうとパタパタと街に向かって走り出した彼女。
あたしも急いで追いかけた。
陽が傾き始めてる。
あたし、なんとかこの世界でやっていけるかな。
そんな気がしていた。
☆☆☆
「そんな細っこいのになぁ」
熊肉を捌きながらこちらに笑顔をむけるでっかい人。
山猫亭のご主人、ダントさん。
あたしはカウンターに腰掛けその手際の良さを眺めていた。
「マキナお姉さんはすごいの。こう、やーって蹴飛ばしてその大きな熊をやっつけちゃったんだから」
「ああ何度も聞いたよティファ。ほんと信じられないが」
「もう、父ちゃん、ほんとなんだよ!?」
「そうだな。そのおかげでこんなに上等な熊肉が手に入ったんだからなぁ」
ティファと共に街に入ったあたし。
山猫亭で彼女の話を聞いたダントさんは数人の男手とともに林まで出向き。
そして信じがたい表情のままグリズリーの遺体を持ち帰るとさっそくその解体を請け負ってくれたのだった。
グリズリーの毛皮もその爪も牙も素材としては一級品だという事で結構な金額で売れそうだとほくほくな顔のダントさん。明日はギルドまで売りにいくぞと盛り上がっていた。
お肉はそのままこの山猫亭で買い取ってくれた。
そのお金であたしはしばらくここで宿泊させてもらうことにしたんだけれど、ね。
まあでも。
まさかとは思ってはいたけれど。
それでもうすうすそうかもしれないと思い始めてはいたけれど。
この街の名前は、「ロムルス」だった。
そう。
あたしが迷い込んでしまったこの世界。
ここは紛れもなく、ゲームのマギアクエストと世界観を同じくする世界、で間違いなさそうだと言う事。
まあでもね。
百歩譲って気がついたら異世界だった。
これはまだわかる。
あたしが好きだった異世界転生ものの小説でもよくあったもの。
でもね?
気がついたら異世界? ううん、異世界は異世界でも、ここってマギアクエストの世界だったわけでしょ?
っていうことはどう言う事なの?
マギアクエストの世界が別の異世界として現実に存在したってこと?
もうほんとわけがわからないよ。
呆然とした顔をしてこちらを見つめる少女。
可愛らしいその感じ、まだ10歳くらいだろうか?
「怪我はない?」
手を貸そうと思って伸ばしたけど怖がっちゃった? もう一度そう声をかけてみると恐る恐るな感じではあるけど手を伸ばしてもらえた。
「ありがとうございます。怪我はないです。ほんと助かりました」
そうにこりと微笑むその少女。なんだかすごく大人びた物言いで、そのままゆっくりと立ち上がると。
パンパンとスカートについた草や土を払い、改めてお辞儀をした。
「ならよかった。このあたりはあんな野獣が出るのね。用心しないとね」
あんなグリズリーみたいなのが出没するならこんな幼い子が一人で出歩いていいわけはないよね。
「一人できたの? もしよかったら街まで送ろっか?」
とそう言ってみた。流石に一人で帰すのは気が引ける。
「はうごめんなさい。ありがとうございます。お姉さん強いんですね」
「ふふ。これでもいっぱい冒険してきたからね」
ゲームでだけどね。
「冒険者さんなんですか?」
「うーん、というか旅人? ここには初めてきたから」
「え? そんな軽装でですか?」
「荷物、落としちゃってね」
はう、嘘だけど。
「ああ、じゃぁ、お困りですよね。そうだ! うち宿屋なんですよ。よかったら泊まってってください。お礼しなくっちゃですし」
「あー。それはありがたいんだけど、あたし今お金もないんだ」
「ああ、なら父ちゃんに言ってそこのグリズリーを回収してもらいます。あんな立派なグリズリーだったら肉も毛皮もきっといい値段で売れるはずです。そうすればお姉さんにお礼のお金も渡せます!」
「え? いいの?」
「はい! 任せてください」
そうにこにこと笑う彼女。
小さいのに結構しっかりしてるよ。びっくりだ。
「あたしはマキナ。よろしくね」
「わたしはティファです。うちは街で山猫亭っていう宿屋兼食堂やってます。あは、マキナさん歓迎しますよ!」
そういうとパタパタと街に向かって走り出した彼女。
あたしも急いで追いかけた。
陽が傾き始めてる。
あたし、なんとかこの世界でやっていけるかな。
そんな気がしていた。
☆☆☆
「そんな細っこいのになぁ」
熊肉を捌きながらこちらに笑顔をむけるでっかい人。
山猫亭のご主人、ダントさん。
あたしはカウンターに腰掛けその手際の良さを眺めていた。
「マキナお姉さんはすごいの。こう、やーって蹴飛ばしてその大きな熊をやっつけちゃったんだから」
「ああ何度も聞いたよティファ。ほんと信じられないが」
「もう、父ちゃん、ほんとなんだよ!?」
「そうだな。そのおかげでこんなに上等な熊肉が手に入ったんだからなぁ」
ティファと共に街に入ったあたし。
山猫亭で彼女の話を聞いたダントさんは数人の男手とともに林まで出向き。
そして信じがたい表情のままグリズリーの遺体を持ち帰るとさっそくその解体を請け負ってくれたのだった。
グリズリーの毛皮もその爪も牙も素材としては一級品だという事で結構な金額で売れそうだとほくほくな顔のダントさん。明日はギルドまで売りにいくぞと盛り上がっていた。
お肉はそのままこの山猫亭で買い取ってくれた。
そのお金であたしはしばらくここで宿泊させてもらうことにしたんだけれど、ね。
まあでも。
まさかとは思ってはいたけれど。
それでもうすうすそうかもしれないと思い始めてはいたけれど。
この街の名前は、「ロムルス」だった。
そう。
あたしが迷い込んでしまったこの世界。
ここは紛れもなく、ゲームのマギアクエストと世界観を同じくする世界、で間違いなさそうだと言う事。
まあでもね。
百歩譲って気がついたら異世界だった。
これはまだわかる。
あたしが好きだった異世界転生ものの小説でもよくあったもの。
でもね?
気がついたら異世界? ううん、異世界は異世界でも、ここってマギアクエストの世界だったわけでしょ?
っていうことはどう言う事なの?
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もうほんとわけがわからないよ。
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