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月が堕ちた魔。
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マギアクエストのゲーム本編ではそこまでのことは語られていなかった。
っていうか王子に取り憑いた魔?
そんな設定、あたしは初耳。
まあそれはそれでしょうがない部分もある。
そもそもキシュガルド王国にはあたしは訪れたことがないんだもの。
マギアクエストの舞台はあたしが今いるこのロムルスの街をスタート地点としたマギアスガルドだった。その周囲、国境の荒野までがゲームの範囲。
あ、南に広がる海も舞台の一部だったけど。
マギアスガルドだけでも結構な広さがあり、山も谷も街もたくさんあり、辺境の伯爵領なんかまだその最奥まで到達したものがいないという設定で。
そこから先の外国は、名前だけは出てくるしそこから訪れる登場人物とかもいたけど、ゲームのプレイヤーにはまだ解放されていなかった。
世界の端には見えない壁があり、そこから先に進むことはどうしても無理だったのだ。
きっと、もっと先までゲームを続けていればそういった外国のフィールドも解放されキシュガルドに訪れることもできるようになったのだろう。
でも。
あたしにはスチル映像で様子を伺うのが精一杯だったのだ。
この三人にしたって兄王子の配下の冒険者、暗殺者、としか触れられていなかった。
こんなにも人間味の溢れている人たちとは思ってもみなかった。
それこそ物語の登場人物、ただのモブ。NPCとすらあたしは認識していなかったのだもの。
それでも。
戦いの最中、彼らに言われた言葉があたしの心に刺さっている。
「ふん! 俺たちには俺たちの使命がある。遊び半分のお前とは違うのだよ!」
そう言われたとき。
あたしの心は動揺した。
あたし、遊び半分だった?
少なくとも彼らにはそう見えたってこと?
命のやりとりをしているはずが、彼らにはあたしの態度はそんなふうに見えたのか?
確かに。
あたしは彼らの命を奪うのが怖かった。
でも、それってもしかして、あたしの自己満足なのだろうか?
命を奪う覚悟もなく、この世界のことをいまだにゲームだと思っている心の現れなのだろうか?
あたしがそんなことをつらつら考えて体を固くしたのがわかったのか、あたしを片手で抱いたままのノワールはその力をぎゅっと強めて。
あたしの頬に唇を寄せて、そっと囁いた。
「ごめんマキナ。うちの国の事情に巻き込んでしまって。怖い思いをさせたのだったら本当に申し訳なく思う」
はうう。
出会った時のままのゾクゾクっとするようなそんな低音ボイス。
「ううん、ノワ。あたしは大丈夫。それよりも、この間《はざま》の結界を解除するね」
そう言って両手を広げ。
「アウト・オブ・ディメンション!」
そう結界解除の呪文を唱える。
周囲の空間が反転し、世界に色が戻った。
天頂高くにあった月は、もうすでに傾き樹々の隙間からわずかに光が漏れるのみとなっていた。
ノワは、どうするつもりなんだろう?
神妙な顔をしてひざまづく三人の前で、真剣な眼差しなノワ。
あたしはそんなノワを覗き見るように見つめた。
「うん。俺は大丈夫だから」
あたしの瞳が心配そうに見えたんだろう。
彼はそう、呟いた。
「はは! 情けないねお前たち。結局ノワールを討つことすら叶わないとは!」
月が堕ちた闇の、その空の雲の影から。
そう甲高い声が響いた。
っていうか王子に取り憑いた魔?
そんな設定、あたしは初耳。
まあそれはそれでしょうがない部分もある。
そもそもキシュガルド王国にはあたしは訪れたことがないんだもの。
マギアクエストの舞台はあたしが今いるこのロムルスの街をスタート地点としたマギアスガルドだった。その周囲、国境の荒野までがゲームの範囲。
あ、南に広がる海も舞台の一部だったけど。
マギアスガルドだけでも結構な広さがあり、山も谷も街もたくさんあり、辺境の伯爵領なんかまだその最奥まで到達したものがいないという設定で。
そこから先の外国は、名前だけは出てくるしそこから訪れる登場人物とかもいたけど、ゲームのプレイヤーにはまだ解放されていなかった。
世界の端には見えない壁があり、そこから先に進むことはどうしても無理だったのだ。
きっと、もっと先までゲームを続けていればそういった外国のフィールドも解放されキシュガルドに訪れることもできるようになったのだろう。
でも。
あたしにはスチル映像で様子を伺うのが精一杯だったのだ。
この三人にしたって兄王子の配下の冒険者、暗殺者、としか触れられていなかった。
こんなにも人間味の溢れている人たちとは思ってもみなかった。
それこそ物語の登場人物、ただのモブ。NPCとすらあたしは認識していなかったのだもの。
それでも。
戦いの最中、彼らに言われた言葉があたしの心に刺さっている。
「ふん! 俺たちには俺たちの使命がある。遊び半分のお前とは違うのだよ!」
そう言われたとき。
あたしの心は動揺した。
あたし、遊び半分だった?
少なくとも彼らにはそう見えたってこと?
命のやりとりをしているはずが、彼らにはあたしの態度はそんなふうに見えたのか?
確かに。
あたしは彼らの命を奪うのが怖かった。
でも、それってもしかして、あたしの自己満足なのだろうか?
命を奪う覚悟もなく、この世界のことをいまだにゲームだと思っている心の現れなのだろうか?
あたしがそんなことをつらつら考えて体を固くしたのがわかったのか、あたしを片手で抱いたままのノワールはその力をぎゅっと強めて。
あたしの頬に唇を寄せて、そっと囁いた。
「ごめんマキナ。うちの国の事情に巻き込んでしまって。怖い思いをさせたのだったら本当に申し訳なく思う」
はうう。
出会った時のままのゾクゾクっとするようなそんな低音ボイス。
「ううん、ノワ。あたしは大丈夫。それよりも、この間《はざま》の結界を解除するね」
そう言って両手を広げ。
「アウト・オブ・ディメンション!」
そう結界解除の呪文を唱える。
周囲の空間が反転し、世界に色が戻った。
天頂高くにあった月は、もうすでに傾き樹々の隙間からわずかに光が漏れるのみとなっていた。
ノワは、どうするつもりなんだろう?
神妙な顔をしてひざまづく三人の前で、真剣な眼差しなノワ。
あたしはそんなノワを覗き見るように見つめた。
「うん。俺は大丈夫だから」
あたしの瞳が心配そうに見えたんだろう。
彼はそう、呟いた。
「はは! 情けないねお前たち。結局ノワールを討つことすら叶わないとは!」
月が堕ちた闇の、その空の雲の影から。
そう甲高い声が響いた。
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