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本編
第二話
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大学へ行くための電車に乗りながら、潤はぼんやりと考える。
椿は、基本的に自分に怒らない。
だから、付き合って今まで喧嘩という喧嘩はしたことが無い。
あっても、潤が一方的に怒っているのを困った顔をして椿が宥めている、そんな感じだ。
もちろん、愛されて大切にされているからだといえばその通りなのだが、少しくらい嫉妬とかヤキモチの気持ちはないのだろうか、と潤は思う。
先程の送別会だって、本当は潤は行ってほしくなかった。
勿論コンパとかでは無いし、お仕事上の付き合いでしか無いのはわかっている。
だから、それを自分には止める権利はない。
でも、小さな嫉妬心から釘を刺した、「早く帰ってきて」と。
恋人なんだから、そんな小さな我儘くらい言ってもいいだろうと、潤は思う。
しかし、椿はどんなことでも許してしまう。
サークルの飲み会、研修旅行、合宿。
全てに嫌な顔一つせず「行っておいて」と送り出してくれる。
時々、潤にはそれが不満だった。
いや、どちらかというと不安だと言った方がいいかもしれない。
自分のことを信じてくれているから、と言うのが大前提だとは思うが、少しくらいヤキモチを焼いてくれても良いのではないかと思ってしまう。
それとも……合宿などで潤が家を空けている間、寂しさなど感じず一人羽を伸ばしているのだろうか?
それとも……仲の良い友達と飲みに行ったりしているのだろうか?
どちらにせよ、潤には出来ないことだった。
椿が出張の多い仕事でなくて、本当によかったと密かに思っているくらいなのだから。
はあ、と潤はため息をつく。
仕方ない、今日は来週提出のレポートでもやって気を紛らわそう。
そう考えながら、潤は電車を降りた。
「よう都築!はよ!」
「……おはよ」
「ん?なんか今日ご機嫌斜めか?」
「………」
「当たりか!……あ、もしかして西洋法制史の予習してないとか?!」
「君じゃあるまいし。僕はちゃんとしてるよ」
「ハズレかー!」
明るい声で友人……野崎が笑う。
入学してこの方、なぜかずっと纏わりつかれて、いつのまにか昼食を一緒に取る仲になってしまった。
野崎は明るく、友人も多いが、決してガサツでも無神経でもない。
わあわあと騒がしい時もあるが、引くときは引ける。
だから潤もなんとなく付き合いを続けているのだ。
「じゃあ、英語の授業で当てられるとか?」
「当たっても困らない」
「ですよねー」
野崎はケタケタと笑うと、不意に真剣な目をする。
「じゃあ……恋人となんかあった!」
「………… 」
「お、ビンゴ!」
「……違う」
潤は目を細めて不機嫌そうにいうが、野崎は意にも介さず笑った。
「そんな態度して、ハズレって言い張るとか」
野崎はそう言うと、潤の肩を叩く。
「ん?何があった?」
「……仮に、何かあったとしても、君に話すことはない」
「ええ、そう?おれ、こう見えても恋愛相談は得意よ?しかも、今ならなんと無料!」
野崎はそう言うと、「秘密厳守しますよ!」と付け足して微笑む。
椿は、基本的に自分に怒らない。
だから、付き合って今まで喧嘩という喧嘩はしたことが無い。
あっても、潤が一方的に怒っているのを困った顔をして椿が宥めている、そんな感じだ。
もちろん、愛されて大切にされているからだといえばその通りなのだが、少しくらい嫉妬とかヤキモチの気持ちはないのだろうか、と潤は思う。
先程の送別会だって、本当は潤は行ってほしくなかった。
勿論コンパとかでは無いし、お仕事上の付き合いでしか無いのはわかっている。
だから、それを自分には止める権利はない。
でも、小さな嫉妬心から釘を刺した、「早く帰ってきて」と。
恋人なんだから、そんな小さな我儘くらい言ってもいいだろうと、潤は思う。
しかし、椿はどんなことでも許してしまう。
サークルの飲み会、研修旅行、合宿。
全てに嫌な顔一つせず「行っておいて」と送り出してくれる。
時々、潤にはそれが不満だった。
いや、どちらかというと不安だと言った方がいいかもしれない。
自分のことを信じてくれているから、と言うのが大前提だとは思うが、少しくらいヤキモチを焼いてくれても良いのではないかと思ってしまう。
それとも……合宿などで潤が家を空けている間、寂しさなど感じず一人羽を伸ばしているのだろうか?
それとも……仲の良い友達と飲みに行ったりしているのだろうか?
どちらにせよ、潤には出来ないことだった。
椿が出張の多い仕事でなくて、本当によかったと密かに思っているくらいなのだから。
はあ、と潤はため息をつく。
仕方ない、今日は来週提出のレポートでもやって気を紛らわそう。
そう考えながら、潤は電車を降りた。
「よう都築!はよ!」
「……おはよ」
「ん?なんか今日ご機嫌斜めか?」
「………」
「当たりか!……あ、もしかして西洋法制史の予習してないとか?!」
「君じゃあるまいし。僕はちゃんとしてるよ」
「ハズレかー!」
明るい声で友人……野崎が笑う。
入学してこの方、なぜかずっと纏わりつかれて、いつのまにか昼食を一緒に取る仲になってしまった。
野崎は明るく、友人も多いが、決してガサツでも無神経でもない。
わあわあと騒がしい時もあるが、引くときは引ける。
だから潤もなんとなく付き合いを続けているのだ。
「じゃあ、英語の授業で当てられるとか?」
「当たっても困らない」
「ですよねー」
野崎はケタケタと笑うと、不意に真剣な目をする。
「じゃあ……恋人となんかあった!」
「………… 」
「お、ビンゴ!」
「……違う」
潤は目を細めて不機嫌そうにいうが、野崎は意にも介さず笑った。
「そんな態度して、ハズレって言い張るとか」
野崎はそう言うと、潤の肩を叩く。
「ん?何があった?」
「……仮に、何かあったとしても、君に話すことはない」
「ええ、そう?おれ、こう見えても恋愛相談は得意よ?しかも、今ならなんと無料!」
野崎はそう言うと、「秘密厳守しますよ!」と付け足して微笑む。
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