七歳差の恋愛事情は苺より甘くてコーヒーよりも苦い

朝比奈歩

文字の大きさ
2 / 11
本編

第二話

しおりを挟む
大学へ行くための電車に乗りながら、潤はぼんやりと考える。
椿は、基本的に自分に怒らない。
だから、付き合って今まで喧嘩という喧嘩はしたことが無い。
あっても、潤が一方的に怒っているのを困った顔をして椿が宥めている、そんな感じだ。
もちろん、愛されて大切にされているからだといえばその通りなのだが、少しくらい嫉妬とかヤキモチの気持ちはないのだろうか、と潤は思う。
先程の送別会だって、本当は潤は行ってほしくなかった。
勿論コンパとかでは無いし、お仕事上の付き合いでしか無いのはわかっている。
だから、それを自分には止める権利はない。
でも、小さな嫉妬心から釘を刺した、「早く帰ってきて」と。
恋人なんだから、そんな小さな我儘くらい言ってもいいだろうと、潤は思う。
しかし、椿はどんなことでも許してしまう。
サークルの飲み会、研修旅行、合宿。
全てに嫌な顔一つせず「行っておいて」と送り出してくれる。
時々、潤にはそれが不満だった。
いや、どちらかというと不安だと言った方がいいかもしれない。
自分のことを信じてくれているから、と言うのが大前提だとは思うが、少しくらいヤキモチを焼いてくれても良いのではないかと思ってしまう。
それとも……合宿などで潤が家を空けている間、寂しさなど感じず一人羽を伸ばしているのだろうか?
それとも……仲の良い友達と飲みに行ったりしているのだろうか?
どちらにせよ、潤には出来ないことだった。
椿が出張の多い仕事でなくて、本当によかったと密かに思っているくらいなのだから。
はあ、と潤はため息をつく。
仕方ない、今日は来週提出のレポートでもやって気を紛らわそう。
そう考えながら、潤は電車を降りた。
「よう都築!はよ!」
「……おはよ」
「ん?なんか今日ご機嫌斜めか?」
「………」
「当たりか!……あ、もしかして西洋法制史の予習してないとか?!」
「君じゃあるまいし。僕はちゃんとしてるよ」
「ハズレかー!」
明るい声で友人……野崎が笑う。
入学してこの方、なぜかずっと纏わりつかれて、いつのまにか昼食を一緒に取る仲になってしまった。
野崎は明るく、友人も多いが、決してガサツでも無神経でもない。
わあわあと騒がしい時もあるが、引くときは引ける。
だから潤もなんとなく付き合いを続けているのだ。
「じゃあ、英語の授業で当てられるとか?」
「当たっても困らない」
「ですよねー」
野崎はケタケタと笑うと、不意に真剣な目をする。
「じゃあ……恋人となんかあった!」
「………… 」
「お、ビンゴ!」
「……違う」
潤は目を細めて不機嫌そうにいうが、野崎は意にも介さず笑った。
「そんな態度して、ハズレって言い張るとか」
野崎はそう言うと、潤の肩を叩く。
「ん?何があった?」
「……仮に、何かあったとしても、君に話すことはない」
「ええ、そう?おれ、こう見えても恋愛相談は得意よ?しかも、今ならなんと無料!」
野崎はそう言うと、「秘密厳守しますよ!」と付け足して微笑む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

BL短編

水無月
BL
兄弟や幼馴染物に偏りがちです。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

処理中です...