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31.誤解
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息を切らしながらも、真っ直ぐな視線で婚約を申し込んできた男性。その瞳には影も曇りもなく、心の底からそう思っているのだろうということが伝わってくる。
緑色の短髪に、蜂蜜色の瞳。とても優しそうな顔をしたそのイケメンの名は、私の記憶が正しければカイル・ローレンス様だったはずだ。
「…あの、カイル様。私はすでにエドゥアール様と婚約を取り交わしているのですが…」
「それは知っている。でも、まだ社交界で正式に公表していないから婚約の取り消しは間に合うはずだ」
「えーと、そういう問題では…」
確かに婚約が正式に認められるのは社交界でお披露目をした時だから、私とエドゥアール様の婚約はまだ仮の状態ではあるけど、そもそもやっとの思いで取り付けた婚約を私が破棄しようと思うはずがない。カイル様からの婚約の申し出は既に一度お断りしているし、それで納得いただいたはずだ。なぜ、今頃になってまた婚約を申し込んできたのか、意味が分からない。
「聞いて、エリワイド嬢。君は騙されているんだ。ブルーナイト辺境伯はとても惨忍なお方だ。君は知らないんだろうけど、彼は今までたくさんの人を殺してきた。実の親や兄弟すらも、彼は自分の地位を手に入れるために殺してきたんだ」
まぁ、一般的に貴族の中で共通しているエドゥアール様への心象はそうなのよね。実際は全然違うんだけど。エドゥアール様は大切なのものを守るためには手段を選ばないところがあるし、出回った噂を訂正したりしないから、色々と誤解されているところがあるのよね…。
「…それは誤解ですわ、カイル様。確かにそういう噂はありますけども、実際には深い訳が…」
私がそう事実を話そうとすると、カイル様は悔しそうに顔を手で覆いながら唸りをあげた。
「ああ、辺境伯は君にそう吹き込んだのか…。くそ、こんな純粋なエリワイド嬢を騙すなんて、なんて汚い」
…なんだろう。カイル様の中でエドゥアール様への酷い誤解ができている。誤解を解こうとするほど、何だか更に悪化しているような…。
「カイル様?エドゥアール様は私を騙すことなどしていませんよ?寧ろ、全てを慎ましやかにお話しくださいました。その上で私はエドゥアール様をお慕いし、婚約を申し込んでいるのです」
「…ああ、可哀想に。きっと君は優しいから、彼の言葉に絆されてしまったんだね。…エリワイド嬢。君があの人に手を貸す必要はないんだよ。君はもっと、君に相応しい人と幸せになっていいんだ」
どんどんエドゥアール様を悪者にして、私を可哀想な人認定していくカイル様。大好きな人を悪いように言われて気分がいいものではない。私の堪忍袋はそろそろ限界を迎えていた。
「誤解しているのは貴方の方です、カイル様!私は自らの意志で、エドゥアール様に婚約を申し込みました。それはエドゥアール様が可哀想な人だからとか、そんな綺麗な感情ではありません!私がエドゥアール様が好きで、他の誰にも渡したくないし、エドゥアール様を一番近くで毎日眺めたいからです!」
するとカイル様は心打たれたようにその瞳をうるうると潤わせた。ようやく私の気持ちが伝わったかと、ほっとした瞬間、何故かガバっとカイル様に腕をとられるとそのまま両手を握りしめられた。
「…なんて健気なんだ!あの人にそこまで心を砕いてあげるなんて!エリワイド嬢、僕と幸せになりましょう!僕が貴方を幸せにしてみせます!」
…駄目だ。全然伝わってない。一体、どうすればいいのこれ…。
「…いい加減に「いい加減にしたまえ」…エドゥアール様っ!」
流石に嫌気がさした私がカイル様を怒鳴りつけようとしたところで、どこからか姿を現したエドゥアール様が私とカイル様の間に立ちふさがった。救世主のような登場の仕方に、思わず胸がきゅんとしてしまったのは内緒である。
「先ほどから聞いていれば、随分と勝手なことを。人の婚約者に婚約を申し込むなど、ローレンス公爵家の教育は一体どうなっているのでしょうな」
「…ブルーナイト辺境伯!」
まさかの本人の登場にカイル様も驚きを隠せないようだ。きょとんとしたカイル様を他所にエドゥアール様は少し低い声でカイル様に向かって言う。
「カイル・ローレンス。其方は既にエリワイド嬢に婚約を申し込み、婚約を断られていたはずでは?エリワイド嬢が望まないのであれば仕方がないと了承したとも聞いておりますぞ。それをこうも直前になって蒸し返し、騒ぎ立てるなど見苦しいにもほどがありますぞ」
エドゥアール様の言葉にカイル様はぎゅっと自分の拳を握ると、きりっとエドゥアール様に視線を向けた。
「ええ、分かっていますとも。私だってエリワイド嬢が幸せになれるのなら、潔く身を引こうと思っていましたよ。…ですが、エリワイド嬢の相手が貴方と聞いていてもたってもいられなかったんです。なぜなら、貴方に任せるより私の方が彼女を幸せにできるから!貴方は人を愛するということを知らない。貴方にとって結婚は政略の一環、彼女との婚約だって、彼女が貴方にとって都合の良い存在だったからに過ぎないはずだ。彼女を愛していない貴方が、彼女を幸せにできるとは到底思えない!」
…ええ、物凄いありがた迷惑。別に私は自分で幸せを築くし、カイル様に幸せにしてほしいなんて一つも頼んでいないんだけど…。
暴走するカイル様を目の前に、この状況を一体どう収めたらいいものか私が悩んでいると、カイル様が私に向かって言った。
「エリワイド嬢、僕と婚約しましょう。彼よりも僕の方が貴方を幸せにできる」
ど、どうしよう。これ、なんと言えば納得してもらえるの!?今のカイル様に何を言っても逆高価な気がするんだけど!?
思わず縋るような視線をエドゥアール様に向ける。その視線を受取ったエドゥアール様はカイル様にとある提案をした。
「なるほど。では、カイル殿は私がエリワイド嬢を幸せにできるのであれば、潔く身を引くわけだな?」
「…悔しいですが、それがエリワイド嬢のためになるのであれば…」
「というわけだ、エリワイド嬢。どうやら私は君をどれだけ幸せにすることができるのかここで証明しなければならないらしい」
そういうとエドゥアール様は少し間を置いた後、如何に自分が私を幸せにできるかを語り始めた。
「そうだな。まず、私は君が商売を続けることに反対をしない、それに君がブルーナイト辺境で新たな商売を始めたいと思った時には、辺境を挙げてその力を貸すことができる。これは跡継ぎでもないカイル殿にはできないことだ」
「くっ!」
「後は、守るという意味では私の方がカイル殿よりはるかに実力も上だな。私は常に防衛の前線で戦っている。平和な王都で親の恩恵を受け、のうのうと暮らしている其方に負けるとは到底思えんな」
「それはっ…!」
確かにそうかも。筋肉の付き方とか、カイル様どうみても戦闘むきじゃないわよね。それで貴方を守りますっていわれても正直説得力がないわ…。
「そもそもエリワイド嬢は、他でもないこの私に惚れているのだ。彼女にとって、私と暮らすことが一番の幸せだろう」
「ごもっともです」
「くそっ…!」
エドゥアール様の言葉に私は思わず頷いた。いやぁ、一番はそこよね。日常と言う空間にエドゥアール様が居る。私にとってそれが何よりも幸福で、欠かせないことなのだ。
「確かに其方の言うとおり、私は愛というものをよく知らないし、人を愛することを得意とはしない。しかし、私についてきてくれる者達のことは信じているし、必ず守ると誓っている。例え、親殺し、兄弟殺しの罪が自分に降りかかろうと、私は自分を信じて慕ってくれる者のことを決して裏切りはしない。私なりに彼らのことはを大切にしているつもりだ」
ふとエドゥアール様がこちらに視線を向ける。ずっとエドゥアール様に視線を向けて話を聞いていたため、自然と視線が交じり合った。
「一般的な愛というものは送ってあげられないかもしれない。だが、こうして婚約を決めた以上、私は私なりに彼女を大切にするし、支えていくつもりだ」
その言葉にトクンと私の心臓が高鳴った。
「カイル様、ご心配いただかなくても私は今、幸せです。カイル様のおっしゃるとおり、エドゥアール様は決して綺麗な人生を送っている方ではないし、一癖も二癖もある方です。でも、そんなところも含めてがエドゥアール様というお人ですし、そんなエドゥアール様が私は好きなんです。ですからこの婚約は、私が己の幸せのために望んだものなんです。私はカイル様とは婚約はできません。私の幸せを案じてくださるのなら、私からこの婚約を奪わないでください」
「エリワイド嬢…」
俯いていたカイル様が視線を私に向ける。その瞳には落ち着きが戻っていて、私の言葉がきちんと伝わっているような気がした。
「そういうことだ。カイル。本人がそう言っているのなら、後はそっとしておこうぜ。…正直、俺としてはお前が婚約者になってくれた方が安心だったんだけどな。エドゥアール殿の噂、あまりいいもの聞かないし。…でも、今回のことでちょっと信じてみたくなったつーか。噂はあくまで噂だしな。エリィ本人がそういうんだから、きっと噂は真実ではなかったんだよ」
ずっと私たちのやり取りを静かに見守っていたアルフレッドが、ぽんとカイル様の肩を叩きながらそう告げた。アルの言葉にカイル様も頷いて言う。
「そうだね。僕が色々と誤解していたみたいだ。…エリワイド嬢、エドゥアール殿、色々と騒ぎ立ててしまって申し訳ありませんでした。どうか末永くお幸せに…」
そう言って深々とお辞儀をすると、カイル様はアルフレッドを連れて去っていった。ようやく収まった騒動に、私はホッと肩をなでおろすのであった。
緑色の短髪に、蜂蜜色の瞳。とても優しそうな顔をしたそのイケメンの名は、私の記憶が正しければカイル・ローレンス様だったはずだ。
「…あの、カイル様。私はすでにエドゥアール様と婚約を取り交わしているのですが…」
「それは知っている。でも、まだ社交界で正式に公表していないから婚約の取り消しは間に合うはずだ」
「えーと、そういう問題では…」
確かに婚約が正式に認められるのは社交界でお披露目をした時だから、私とエドゥアール様の婚約はまだ仮の状態ではあるけど、そもそもやっとの思いで取り付けた婚約を私が破棄しようと思うはずがない。カイル様からの婚約の申し出は既に一度お断りしているし、それで納得いただいたはずだ。なぜ、今頃になってまた婚約を申し込んできたのか、意味が分からない。
「聞いて、エリワイド嬢。君は騙されているんだ。ブルーナイト辺境伯はとても惨忍なお方だ。君は知らないんだろうけど、彼は今までたくさんの人を殺してきた。実の親や兄弟すらも、彼は自分の地位を手に入れるために殺してきたんだ」
まぁ、一般的に貴族の中で共通しているエドゥアール様への心象はそうなのよね。実際は全然違うんだけど。エドゥアール様は大切なのものを守るためには手段を選ばないところがあるし、出回った噂を訂正したりしないから、色々と誤解されているところがあるのよね…。
「…それは誤解ですわ、カイル様。確かにそういう噂はありますけども、実際には深い訳が…」
私がそう事実を話そうとすると、カイル様は悔しそうに顔を手で覆いながら唸りをあげた。
「ああ、辺境伯は君にそう吹き込んだのか…。くそ、こんな純粋なエリワイド嬢を騙すなんて、なんて汚い」
…なんだろう。カイル様の中でエドゥアール様への酷い誤解ができている。誤解を解こうとするほど、何だか更に悪化しているような…。
「カイル様?エドゥアール様は私を騙すことなどしていませんよ?寧ろ、全てを慎ましやかにお話しくださいました。その上で私はエドゥアール様をお慕いし、婚約を申し込んでいるのです」
「…ああ、可哀想に。きっと君は優しいから、彼の言葉に絆されてしまったんだね。…エリワイド嬢。君があの人に手を貸す必要はないんだよ。君はもっと、君に相応しい人と幸せになっていいんだ」
どんどんエドゥアール様を悪者にして、私を可哀想な人認定していくカイル様。大好きな人を悪いように言われて気分がいいものではない。私の堪忍袋はそろそろ限界を迎えていた。
「誤解しているのは貴方の方です、カイル様!私は自らの意志で、エドゥアール様に婚約を申し込みました。それはエドゥアール様が可哀想な人だからとか、そんな綺麗な感情ではありません!私がエドゥアール様が好きで、他の誰にも渡したくないし、エドゥアール様を一番近くで毎日眺めたいからです!」
するとカイル様は心打たれたようにその瞳をうるうると潤わせた。ようやく私の気持ちが伝わったかと、ほっとした瞬間、何故かガバっとカイル様に腕をとられるとそのまま両手を握りしめられた。
「…なんて健気なんだ!あの人にそこまで心を砕いてあげるなんて!エリワイド嬢、僕と幸せになりましょう!僕が貴方を幸せにしてみせます!」
…駄目だ。全然伝わってない。一体、どうすればいいのこれ…。
「…いい加減に「いい加減にしたまえ」…エドゥアール様っ!」
流石に嫌気がさした私がカイル様を怒鳴りつけようとしたところで、どこからか姿を現したエドゥアール様が私とカイル様の間に立ちふさがった。救世主のような登場の仕方に、思わず胸がきゅんとしてしまったのは内緒である。
「先ほどから聞いていれば、随分と勝手なことを。人の婚約者に婚約を申し込むなど、ローレンス公爵家の教育は一体どうなっているのでしょうな」
「…ブルーナイト辺境伯!」
まさかの本人の登場にカイル様も驚きを隠せないようだ。きょとんとしたカイル様を他所にエドゥアール様は少し低い声でカイル様に向かって言う。
「カイル・ローレンス。其方は既にエリワイド嬢に婚約を申し込み、婚約を断られていたはずでは?エリワイド嬢が望まないのであれば仕方がないと了承したとも聞いておりますぞ。それをこうも直前になって蒸し返し、騒ぎ立てるなど見苦しいにもほどがありますぞ」
エドゥアール様の言葉にカイル様はぎゅっと自分の拳を握ると、きりっとエドゥアール様に視線を向けた。
「ええ、分かっていますとも。私だってエリワイド嬢が幸せになれるのなら、潔く身を引こうと思っていましたよ。…ですが、エリワイド嬢の相手が貴方と聞いていてもたってもいられなかったんです。なぜなら、貴方に任せるより私の方が彼女を幸せにできるから!貴方は人を愛するということを知らない。貴方にとって結婚は政略の一環、彼女との婚約だって、彼女が貴方にとって都合の良い存在だったからに過ぎないはずだ。彼女を愛していない貴方が、彼女を幸せにできるとは到底思えない!」
…ええ、物凄いありがた迷惑。別に私は自分で幸せを築くし、カイル様に幸せにしてほしいなんて一つも頼んでいないんだけど…。
暴走するカイル様を目の前に、この状況を一体どう収めたらいいものか私が悩んでいると、カイル様が私に向かって言った。
「エリワイド嬢、僕と婚約しましょう。彼よりも僕の方が貴方を幸せにできる」
ど、どうしよう。これ、なんと言えば納得してもらえるの!?今のカイル様に何を言っても逆高価な気がするんだけど!?
思わず縋るような視線をエドゥアール様に向ける。その視線を受取ったエドゥアール様はカイル様にとある提案をした。
「なるほど。では、カイル殿は私がエリワイド嬢を幸せにできるのであれば、潔く身を引くわけだな?」
「…悔しいですが、それがエリワイド嬢のためになるのであれば…」
「というわけだ、エリワイド嬢。どうやら私は君をどれだけ幸せにすることができるのかここで証明しなければならないらしい」
そういうとエドゥアール様は少し間を置いた後、如何に自分が私を幸せにできるかを語り始めた。
「そうだな。まず、私は君が商売を続けることに反対をしない、それに君がブルーナイト辺境で新たな商売を始めたいと思った時には、辺境を挙げてその力を貸すことができる。これは跡継ぎでもないカイル殿にはできないことだ」
「くっ!」
「後は、守るという意味では私の方がカイル殿よりはるかに実力も上だな。私は常に防衛の前線で戦っている。平和な王都で親の恩恵を受け、のうのうと暮らしている其方に負けるとは到底思えんな」
「それはっ…!」
確かにそうかも。筋肉の付き方とか、カイル様どうみても戦闘むきじゃないわよね。それで貴方を守りますっていわれても正直説得力がないわ…。
「そもそもエリワイド嬢は、他でもないこの私に惚れているのだ。彼女にとって、私と暮らすことが一番の幸せだろう」
「ごもっともです」
「くそっ…!」
エドゥアール様の言葉に私は思わず頷いた。いやぁ、一番はそこよね。日常と言う空間にエドゥアール様が居る。私にとってそれが何よりも幸福で、欠かせないことなのだ。
「確かに其方の言うとおり、私は愛というものをよく知らないし、人を愛することを得意とはしない。しかし、私についてきてくれる者達のことは信じているし、必ず守ると誓っている。例え、親殺し、兄弟殺しの罪が自分に降りかかろうと、私は自分を信じて慕ってくれる者のことを決して裏切りはしない。私なりに彼らのことはを大切にしているつもりだ」
ふとエドゥアール様がこちらに視線を向ける。ずっとエドゥアール様に視線を向けて話を聞いていたため、自然と視線が交じり合った。
「一般的な愛というものは送ってあげられないかもしれない。だが、こうして婚約を決めた以上、私は私なりに彼女を大切にするし、支えていくつもりだ」
その言葉にトクンと私の心臓が高鳴った。
「カイル様、ご心配いただかなくても私は今、幸せです。カイル様のおっしゃるとおり、エドゥアール様は決して綺麗な人生を送っている方ではないし、一癖も二癖もある方です。でも、そんなところも含めてがエドゥアール様というお人ですし、そんなエドゥアール様が私は好きなんです。ですからこの婚約は、私が己の幸せのために望んだものなんです。私はカイル様とは婚約はできません。私の幸せを案じてくださるのなら、私からこの婚約を奪わないでください」
「エリワイド嬢…」
俯いていたカイル様が視線を私に向ける。その瞳には落ち着きが戻っていて、私の言葉がきちんと伝わっているような気がした。
「そういうことだ。カイル。本人がそう言っているのなら、後はそっとしておこうぜ。…正直、俺としてはお前が婚約者になってくれた方が安心だったんだけどな。エドゥアール殿の噂、あまりいいもの聞かないし。…でも、今回のことでちょっと信じてみたくなったつーか。噂はあくまで噂だしな。エリィ本人がそういうんだから、きっと噂は真実ではなかったんだよ」
ずっと私たちのやり取りを静かに見守っていたアルフレッドが、ぽんとカイル様の肩を叩きながらそう告げた。アルの言葉にカイル様も頷いて言う。
「そうだね。僕が色々と誤解していたみたいだ。…エリワイド嬢、エドゥアール殿、色々と騒ぎ立ててしまって申し訳ありませんでした。どうか末永くお幸せに…」
そう言って深々とお辞儀をすると、カイル様はアルフレッドを連れて去っていった。ようやく収まった騒動に、私はホッと肩をなでおろすのであった。
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