【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

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ざまぁされたらやり返す編

29話 “かっこよすぎんだろ” イラストあり

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「しゃっ。一発でドンズバ。あいつらの隠蔽魔法解除してやったぜ~」
「やったぁ! 勇者様! いっぱいいい子いい子してくださ~い♡」
「いいよぉ~。いい子いい子いい子いい子~」
「は? 手柄横取りしてんじゃねえよ、エリ。おめーは増幅魔法かけただけだろうがよ」
「ちょっと軌道修正もしたもーん! マホちゃんがノーコンだったからぁ~!」
「お前の鼻筋の軌道をずらしてやろうか」
「まあまあまあまあ。ふたりともいい子いい子いい子いい子~」

 と、なんともふざけたやりとりに興じるユーリとマホ、そしてエンリエッタだったが、周囲の魔法使いたちは、信じられないものでも見るかのような視線を彼らに向けていた。

「う、そだろ……。あの距離で当てんのかよ……」
「しかも、威力も効果も維持させたまま……」
「増幅魔法使っても、普通絶対無理だよな……」

 あの後、魔力を探知してガイムたちの居場所を割り出したユーリは、マホとエンリエッタに、ガイムらの隠蔽魔法を解除するようにお願いした。
 地上から、標高八千メートルを超える山の頂上で展開されている隠蔽魔法を、である。
 それを聞いていた魔法使いたちは、「こんなときまで冗談を……」と、苦笑いしていたのだが……。

「ともかく、これでガイム大臣たちを少しは足止めできるね。15分とか20分くらいかな?」
「ですかねぇ~。……いやでも、あの数のモンスターに囲まれたら、死んじゃう可能性あるくないですか?」
「さすがにねえだろ。クソ雑魚だけどヘルデンもいるし、なんだかんだボクたちが行くまで持ち堪えるって。本当は死んで欲しいけど」
「ですね。死んで欲しいですね」

 それがいともすんなりと成功し、世間話のようなテンションで普通に会話を続けているものだから、いまは違った意味で苦笑いをしていたのだった。
 いや、ちょっと引いてすらいた。
 ……が。

「じゃあその間に、ボクたちもやることやっちまうかぁ~」
「だね」
「ですね!」

 ──彼らが本当にドン引きをするのは、ここからだった。

「そいじゃまず、軽ぃやつから行くぞ~」

 パサリ、と上着を脱ぎ、マホは空に向けて手をあげると、

「隕石魔法【メテオバンデッド】」

 途端、はるか上空に巨大な──それこそ山ひとつを覆い隠せそうなほどの巨大な魔法陣が出現し、その中から魔法陣と同じサイズの隕石が顔を覗かせた。

「「「「かっ…………!」」」」
「ちょ、ちょっと! マホちゃん! デカすぎデカすぎ! ナーセの街まで吹っ飛んじゃいますよ!!」

 魔法使いたちが白目を剥く中、エンリエッタがそのようなツッコミを入れると、マホは面倒くさそうに、

「誰もこのまま落とすなんて言ってねえだろ……【ブレイク】」

 そう言って指を鳴らすと、バカァンッ! と、隕石が爆砕し、無数の破片となって地上へと落下していった。

「ほらよ。とっとと増幅魔法と加速魔法、その他諸々かけやがれ」
「いや、これでもまあまあデカい……もう! 地形変わっても知りませんからね!」

 エンリエッタも空に向けて手を伸ばすと、中空に大小無数の魔法陣が展開される。
 隕石がそれを通過するたび、加速し、肥大化し、あるいは燃え盛り……、

「「「「「ぎげえぇ、げ……えええええええぇぇぇぇぇッ!?」」」」」

 それらすべてが、モンスターの大群へと、容赦なく降り注いでいった。
 隕石が墜落するたびに大地が震え、爆砕し、燃え盛り、凄まじい数のモンスターたちを落ち潰していく。
 そんな地獄みたいな光景が、広大な平原いっぱいに広がっているのだった。
 ──しかも彼らにとっての地獄は、これで終わりではない。

神哭至源流かんなぎしげんりゅう、脚・二の型【昇煉月のぼりれんげつ】」

 バガアァァァァァンッ!!

 ファイフの回し蹴りから放たれた【気】の奔流が、爆音とともにモンスターの波へと着弾し、その先頭集団を蹴散らした。
 直撃を受けたモンスターたちは木っ端みじんに爆砕し、その後方にいた者たちも、竜巻のような余波に巻き込まれて吹き飛ばされていく。

「しゃらああぁぁぁぁぁいいぃッ!! やっとストレス発散できるううぅぅぅぅぅぅぅッ!!」

 最前線で腕をぶん回しながら、ファイフはすべてから解放されたようにそう叫ぶと、その隣にいるブレイダも大剣を抜き放ち、

「ね~。最近ピラティスサボってたから、運動できるの嬉しいな~♪」

 ブォンッ! と、亜音速のような速度で数回振るった。
 それと同時、モンスターの波の中に、幾重にも光の筋が奔り抜け……。

「「「「ぐぎいいいいぃぃぃぃぃぃぃッ!!」」」」

 その光の筋に沿うようにして、モンスターたちの身体がバラバラに切り刻まれていった。
 腕や首、足、あるいは半身が血の筋を描きながら打ち上げられ、その地獄絵図がどこまでも伸びていく。
 悪夢を悪夢で塗擦するような光景の中、ブレイダは可愛らしく顎に指を添えると、

「んっと、ん~とぉ、技の名前、なんだっけな……。まあいいか」
「「「「「……………………ッ!!」」」」」

 それを見ていた王国兵士、冒険者、そして『アンペルマン』の若いメンバーなども、驚愕に目を見開いていた。
 数十秒。
 たったの数十秒で、モンスターたちの前線が崩壊し、ところどころに大穴が開き、進軍の勢いが大幅に減退した。
 その総数も、おそらく一割近く削り取った。

 彼らが前線に出始めて、たった数十秒での出来事である。
 これが、元祖勇者パーティの力。
『アンペルマン』勃興の最初期から、魔王軍相手に一歩も引かずに、最前線で戦い続けてきたものたちの力。
 勇者パーティ『アンペルマン』。
 その真価の一端を垣間見た一同は、愕然とせざるを得なかったのだ。

 が、それと同時に、こんなことも思う。
 勇者パーティがその気になれば、一晩で国がひとつ滅ぶ。
 吟遊詩人の語り草である。
 それが誇張などではなく、事実であることはよく分かった。

 しかし──それだけ強大な力を持ちながらにして、決しておごらず、偉ぶらず、皆と一緒に笑うことができる。
 それだけの強大な力を、私利私欲のためではなく、誰かのために使うことができる。
 その精神性は、あるいは強さそのものよりも、ずっと、ずっと……!

「カ、カッコ良すぎんだろ……『アンペルマン』……!!」

 そう言った直後、モブルドは大きくせき込み、近くにいたセイラが苦笑しながら背中を擦る。
 ブレイダはくるりと振り返ると、ピクニックに行くかのようにユーリに手を振った。

「坊ちゃ~ん。私たちこんな感じで適当にやってるんで、ゆっくり態勢立て直して下さいな♪」
「ありがとうブレイダさん。みんなもよろしく~」

 そんな軽いやりとりののち、一同は猛攻を再開し、ユーリは隣で屹立するヒィロに目をやって、

「さて、じゃあ、僕らもやりますか!」
「……はい!」

 ユーリたちの反撃が、始まる。
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