冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ

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第3章 俺たちの楽園

12 最後の狙い

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 冥王竜ドゥーガルとの激戦は続いていた。

「行け。そして貫け──」

 俺は新たな神造級武具を生み出す。

「『燐光りんこうの双剣フラガラッハ』!」

 自動追尾機能を持つ二本の剣が、輝く軌跡を描きながら竜の巨体に吸いこまれた。
 がぎん、と鈍い音がして、双剣が砕け散る。

 硬い──。

 膨大な竜気でコーティングされた奴の体に、生半可な攻撃は通用しない。
 さっきからサーシャやドノバン、マルティナが斬撃や魔法をこれでもかとばかりに浴びせているが、それも大したダメージは与えられていなかった。

「吹き飛べ、人間ども!」

 ドゥーガルは竜気を込めたドラゴンブレスで、周囲を一掃する。
 アルフレッドの防御呪文だけじゃ防ぎきれない──。

「『清冽なる聖盾ヤタノカガミ』!」

 俺は新たな神造級武具を生み出し、これを跳ね返した。

 いくらランク5の武器や聖具で武装しているとはいえ、もともとの攻撃力や防御力に圧倒的な差がある。

 最初はやや優勢に進んでいた戦いも、時間が経つにつれて五分に、そしてジリジリと奴の優勢へと移行していく。

「くそっ、強い!」
「なんて化け物なの……!」
「私の防御魔法でも、もうしのぎきれません……」

 ドノバンが、マルティナが、アルフレッドが、苦々しくうめいた。

 確かに戦況は俺たちに不利だ。
 そう、見える。

 だけど──。

「そろそろ、いいかな」

 俺は小さくつぶやいた。

 これから、ドゥーガルはかさにかかって攻めて立ててくるだろう。

 あいつは破壊と殺戮の化身。
 今以上に攻撃態勢に出てくる瞬間こそが、俺の狙うタイミングだ。

「とんでもない奴だね、冥王竜」

 竜に乗ったサーシャがつぶやいた。

 すでにさっき渡したクラウソラスは消滅しており、俺は何度か新たなクラウソラスを作って彼女に渡していた。
 ドノバンやマルティナ、アルフレッドに対しても同じだ。

 この戦いだけで、すでに三十以上の神造級武具を作っている。

「かなりポイントが減ったな……」

 神造級の武具や聖具を作るには何万っていうポイントがいる。
 今まで貯めたポイントを注ぎこんでここまでやってきたけど、この先も数十単位で作れるような代物じゃない。

「残りのポイントは──200000ちょっとか」

 神造級武具は、一つ作るのに50000オーバーのポイントが吹っ飛んでしまう。
 せいぜい、あと三つか四つしか作れない。

「このままじゃ押し切られるだけだね」

 サーシャが俺の側まで降りてきた。

「武器はあと幾つ作れるの?」

 やっぱり、俺のポイント限界に気づいていたか。

「残り三つか四つだな」
「……まずいね」

 顔をしかめるサーシャ。

「だけど、村を見捨てて逃げる……なんて選択肢はなしだからね」
「サーシャ?」
「私は最後まで戦う。ジュデッカを守るために」
「随分と気にかけてくれるんだな。この村のことを」
「当然だよ。ノエル様が住む場所だし、それに私だってここの住人だし」

 笑うサーシャ。

「何よりも──守りたいから、ね」

 そうだな、守りたい。
 その意志を共有できていることが嬉しい。

「じゃあ、最後にとっておきを見せてやる」
「えっ?」
「貯めたポイントが全部吹っ飛ぶけど、惜しくない。それだけの相手だ。あいつは」

 俺は一歩前に出た。

「サーシャ、ドノバン、マルティナ、アルフレッド。備えてくれ」
「えっ?」

 四人のSSSランク冒険者たちが驚いた顔をする。
 そして、俺は生み出す。

EX創生発動エクストラクリエイション──」

 周囲に、虹色の輝きが広がった。

 EXポイントを10消費することで出現する特殊フィールド【覇王はおう攻陣こうじん】。

 三十以上の神造級武具や聖具を生み出し、EXポイントを10貯めて、ようやく生み出せた空間だ。

「な、何これ、力が──湧いてくる!?」

 サーシャたち四人が声を上げた。

 特殊フィールド系EX創生物【覇王攻陣】。

 俺は、以前に天使アグエルから情報を得ていた。
 詳細な説明がないEX創生物だけど、特殊フィールド効果については奴がある程度の知識を持っていたのだ。

 邪悪な力を弱め、聖なる力へと反転させる【浄化の領域】。
 善なる者を癒し、回復させる【聖癒せいゆまゆ】。
 そして──悪と戦う戦士に絶大な攻撃力を与える【覇王攻陣】。

「効果時間は1111秒だ。その間に仕留めてくれ、みんな」

 俺は四人に告げた。

「じゃあ、ラストアタック──いくよ!」

 サーシャの掛け声とともに、SSSランク冒険者たちが疾走する。

「俺の竜気を圧倒する神気を、人間ごときが放つだと──!?」

 ドゥーガルが初めて戸惑いの声を上げた。

 戦場に、今までとは比較にならない攻撃エネルギーが吹き荒れる。

 サーシャが放つ竜気の刃が、ドノバンの剣が、マルティナの放つ魔法が、アルフレッドの構築する防御呪文が、一糸乱れぬ連携とともに繰り出される。
 それに対抗すべく冥王竜もドラゴンブレスや牙、爪などで対抗し、強靭な鱗でこちらの攻撃を封じる。

 展開された戦いは、まさしく死闘だった。

 そして──。



「カイル様、お疲れさまです!」

 戦いを終え、俺たちはノエルやマキナのところに戻った。
 避難した村人たちは、クラウディアの指示のもと、村の中に戻り始めている。

「いやー、自分が自分じゃないみたいにパワーアップしちゃうなんてね」

 サーシャがにっこり笑顔で言った。

「ふん、あんな戦い方があるとはな」
「おかげで助かったわ」
「素晴らしい力です。ぜひデータを取らせていただきたい……!」

 ドノバン、マルティナ、アルフレッドも感嘆しきりといった様子。

 サーシャたち四人の猛攻で、冥王竜ドゥーガルを討つことができた。

【覇王攻陣】を使ってさえ、けっこうギリギリの戦いで、本当に強敵だった。
 さすがは邪神の最上位配下筆頭だ。

 ともあれ、ジュデッカ村を襲った脅威はこうして去ったのだった。
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