幽霊少女

猫ふくろう

文字の大きさ
14 / 26

14話・浮遊霊と地縛霊4/4

しおりを挟む
 紗奈たちが助けを呼び百合子と夜美の母が駆け付けた。紗奈達もいる。先ず4人は久美に状況と事情をきいた。夜美の母はそれを聞きながら無表情で黒い煙を眺めている。少し眉をひそめると重々しく口を開いた。
「原因を消すしか無いですね」
「原因をけすって?」
怯えながら聞いた。その時、久美はジバ子ではなく夜美の母に怯えていた。ジバ子に何をどうするのかを察していた。
「ジバ子ちゃんを消滅させるの」
久美は膝から崩れ落ちた。夜美の母はそれを一瞥し、呪文を唱え始めた。するとジバ子の壁をたたくペースが落ち、ついには頭を抱えてもがき苦しんだ。
「痛い、痛いよ」
夜美の母は読むペースを変えず、淡々と唱え続ける。
「やめて!」
久美が叫んだが呪文は止まらなかった。土を投げようとしたが、幽霊のため触れない。
「やめてよ」
ジバ子が弱々しく呟く。久美は地面に埋めた布のことを思い出し、夜美の母に投げつけた。顔面に直撃し、呪文が止まった。ジバ子の頭を抱える手が緩んでいった。
「ジバちゃん・・・一緒にリバーシしよ」
ジバ子をに手を伸ばした。
「久美!」
百合子が呼び止めた。一人のつま先が百合子達を向いたが、黒い煙に包まれていたため表情は一切分からなかった。
「大丈夫」
煙は家の中に入って行った。
「久美ちゃんに任せましょう」
夜美の母は少し不安気に言った。
 家の中で2人はリバーシをしていた。大戦中、会話は一切なかった。十戦目が終わり、自分の駒の数を数えていた。
「わがまま言ってごめんなさい」
最初にジバ子が言葉を発した。久美の駒を取る手が止まる。久美は涙が出そうになった。ジバ子に悲しい思いをさせたことに対しての後悔の涙だ。
「ジバちゃんがあやまる必要はないよ」
「私が考え無しだったから」
また沈黙が続いた。数え終わるとジバ子の方が2つ多かった。
「やっぱり私はバカだ」
うつむいた久美の顔からは涙が落ちた。
「やったー、お姉ちゃんに初めて勝った」
ジバ子は万歳して喜んでいた。手先は透けていた。それは少しずつ広がって行った。
「お姉ちゃんに会ってから毎日楽しかったよ。初めて生きてるって思った」
「もう死んでるでしょ」
久美は涙を必死にこらえて笑って見せる。
「ヘへッ、そうだね。ありがとう。楽しかった」
「私も楽しかったよ。ありがとう」
ジバ子は目を細めて笑う。久美はジバ子の頭を撫でる仕草をした。ジバ子は一層目を細くして笑う。そのままジバ子は消えていった。
 百合子達が心配して待っていると、久美が出てきた。久美の目元は赤くはれていた。百合子が駆け寄った。
「大丈夫?お友達は?」
「私は大丈夫。友達は・・・私のせいで消えちゃった」
「大丈夫だよ。ちゃんと成仏したから」
紗奈が間に入った。
「そうなの?」
夜美とその母の方を見る。二人とも頷いた。
「そうなんだ。それなら―」
「良かった」と言いかけてやめた。
「私と会わなかったら、もっと長生きできたかな?」
「久美がいたから楽しく成仏できたんでしょ。ウジウジ言わないの。成仏した彼女に失礼でしょ」
百合子が久美の頭をなでる仕草をした。
「そうかな?」
久美の問いに百合子は深くうなずいた。久美はジバ子が住んでいた家を眺めていた。久美は生前の自分が住んでいた家を考えていた。記憶が無いため思い出すことはできないのだが。
「私たちの家にかえろう」
百合子が言った。久美は百合子の目を見た。
「うん!」
久美は目いっぱい深くうなずいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...