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14話・浮遊霊と地縛霊4/4
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紗奈たちが助けを呼び百合子と夜美の母が駆け付けた。紗奈達もいる。先ず4人は久美に状況と事情をきいた。夜美の母はそれを聞きながら無表情で黒い煙を眺めている。少し眉をひそめると重々しく口を開いた。
「原因を消すしか無いですね」
「原因をけすって?」
怯えながら聞いた。その時、久美はジバ子ではなく夜美の母に怯えていた。ジバ子に何をどうするのかを察していた。
「ジバ子ちゃんを消滅させるの」
久美は膝から崩れ落ちた。夜美の母はそれを一瞥し、呪文を唱え始めた。するとジバ子の壁をたたくペースが落ち、ついには頭を抱えてもがき苦しんだ。
「痛い、痛いよ」
夜美の母は読むペースを変えず、淡々と唱え続ける。
「やめて!」
久美が叫んだが呪文は止まらなかった。土を投げようとしたが、幽霊のため触れない。
「やめてよ」
ジバ子が弱々しく呟く。久美は地面に埋めた布のことを思い出し、夜美の母に投げつけた。顔面に直撃し、呪文が止まった。ジバ子の頭を抱える手が緩んでいった。
「ジバちゃん・・・一緒にリバーシしよ」
ジバ子をに手を伸ばした。
「久美!」
百合子が呼び止めた。一人のつま先が百合子達を向いたが、黒い煙に包まれていたため表情は一切分からなかった。
「大丈夫」
煙は家の中に入って行った。
「久美ちゃんに任せましょう」
夜美の母は少し不安気に言った。
家の中で2人はリバーシをしていた。大戦中、会話は一切なかった。十戦目が終わり、自分の駒の数を数えていた。
「わがまま言ってごめんなさい」
最初にジバ子が言葉を発した。久美の駒を取る手が止まる。久美は涙が出そうになった。ジバ子に悲しい思いをさせたことに対しての後悔の涙だ。
「ジバちゃんがあやまる必要はないよ」
「私が考え無しだったから」
また沈黙が続いた。数え終わるとジバ子の方が2つ多かった。
「やっぱり私はバカだ」
うつむいた久美の顔からは涙が落ちた。
「やったー、お姉ちゃんに初めて勝った」
ジバ子は万歳して喜んでいた。手先は透けていた。それは少しずつ広がって行った。
「お姉ちゃんに会ってから毎日楽しかったよ。初めて生きてるって思った」
「もう死んでるでしょ」
久美は涙を必死にこらえて笑って見せる。
「ヘへッ、そうだね。ありがとう。楽しかった」
「私も楽しかったよ。ありがとう」
ジバ子は目を細めて笑う。久美はジバ子の頭を撫でる仕草をした。ジバ子は一層目を細くして笑う。そのままジバ子は消えていった。
百合子達が心配して待っていると、久美が出てきた。久美の目元は赤くはれていた。百合子が駆け寄った。
「大丈夫?お友達は?」
「私は大丈夫。友達は・・・私のせいで消えちゃった」
「大丈夫だよ。ちゃんと成仏したから」
紗奈が間に入った。
「そうなの?」
夜美とその母の方を見る。二人とも頷いた。
「そうなんだ。それなら―」
「良かった」と言いかけてやめた。
「私と会わなかったら、もっと長生きできたかな?」
「久美がいたから楽しく成仏できたんでしょ。ウジウジ言わないの。成仏した彼女に失礼でしょ」
百合子が久美の頭をなでる仕草をした。
「そうかな?」
久美の問いに百合子は深くうなずいた。久美はジバ子が住んでいた家を眺めていた。久美は生前の自分が住んでいた家を考えていた。記憶が無いため思い出すことはできないのだが。
「私たちの家にかえろう」
百合子が言った。久美は百合子の目を見た。
「うん!」
久美は目いっぱい深くうなずいた。
「原因を消すしか無いですね」
「原因をけすって?」
怯えながら聞いた。その時、久美はジバ子ではなく夜美の母に怯えていた。ジバ子に何をどうするのかを察していた。
「ジバ子ちゃんを消滅させるの」
久美は膝から崩れ落ちた。夜美の母はそれを一瞥し、呪文を唱え始めた。するとジバ子の壁をたたくペースが落ち、ついには頭を抱えてもがき苦しんだ。
「痛い、痛いよ」
夜美の母は読むペースを変えず、淡々と唱え続ける。
「やめて!」
久美が叫んだが呪文は止まらなかった。土を投げようとしたが、幽霊のため触れない。
「やめてよ」
ジバ子が弱々しく呟く。久美は地面に埋めた布のことを思い出し、夜美の母に投げつけた。顔面に直撃し、呪文が止まった。ジバ子の頭を抱える手が緩んでいった。
「ジバちゃん・・・一緒にリバーシしよ」
ジバ子をに手を伸ばした。
「久美!」
百合子が呼び止めた。一人のつま先が百合子達を向いたが、黒い煙に包まれていたため表情は一切分からなかった。
「大丈夫」
煙は家の中に入って行った。
「久美ちゃんに任せましょう」
夜美の母は少し不安気に言った。
家の中で2人はリバーシをしていた。大戦中、会話は一切なかった。十戦目が終わり、自分の駒の数を数えていた。
「わがまま言ってごめんなさい」
最初にジバ子が言葉を発した。久美の駒を取る手が止まる。久美は涙が出そうになった。ジバ子に悲しい思いをさせたことに対しての後悔の涙だ。
「ジバちゃんがあやまる必要はないよ」
「私が考え無しだったから」
また沈黙が続いた。数え終わるとジバ子の方が2つ多かった。
「やっぱり私はバカだ」
うつむいた久美の顔からは涙が落ちた。
「やったー、お姉ちゃんに初めて勝った」
ジバ子は万歳して喜んでいた。手先は透けていた。それは少しずつ広がって行った。
「お姉ちゃんに会ってから毎日楽しかったよ。初めて生きてるって思った」
「もう死んでるでしょ」
久美は涙を必死にこらえて笑って見せる。
「ヘへッ、そうだね。ありがとう。楽しかった」
「私も楽しかったよ。ありがとう」
ジバ子は目を細めて笑う。久美はジバ子の頭を撫でる仕草をした。ジバ子は一層目を細くして笑う。そのままジバ子は消えていった。
百合子達が心配して待っていると、久美が出てきた。久美の目元は赤くはれていた。百合子が駆け寄った。
「大丈夫?お友達は?」
「私は大丈夫。友達は・・・私のせいで消えちゃった」
「大丈夫だよ。ちゃんと成仏したから」
紗奈が間に入った。
「そうなの?」
夜美とその母の方を見る。二人とも頷いた。
「そうなんだ。それなら―」
「良かった」と言いかけてやめた。
「私と会わなかったら、もっと長生きできたかな?」
「久美がいたから楽しく成仏できたんでしょ。ウジウジ言わないの。成仏した彼女に失礼でしょ」
百合子が久美の頭をなでる仕草をした。
「そうかな?」
久美の問いに百合子は深くうなずいた。久美はジバ子が住んでいた家を眺めていた。久美は生前の自分が住んでいた家を考えていた。記憶が無いため思い出すことはできないのだが。
「私たちの家にかえろう」
百合子が言った。久美は百合子の目を見た。
「うん!」
久美は目いっぱい深くうなずいた。
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