幽霊少女

猫ふくろう

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15話・着信なし

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 週末、百合子が喫茶店にいた。しばらくして、ニコラエと佐藤が来た。
「おはよーゴザイマス」
遠藤は後ろで小さくお辞儀をした。
「おはようございます」
百合子も返事をする。ニコラエ達も席に座った。すると、遠藤が寒がるようにブルッと震えた。
「もしかして。久美ちゃんも来てマスカ?」
「よく気が付きましたね」
百合子の口調は歯に物が詰まったような物言いだ。どこにいるのかを聞くと、言葉を詰まらせた。
「佐藤さんの座ってる椅子に座ってます」
佐藤は椅子から一瞬で飛び退いた。数瞬で周りの視線に気付く。遠藤はゆっくり別の椅子に座った。その後何事も無かったかのようにケーキと紅茶を注文した。
 「すいません。お手洗いに行ってきます」
百合子がトイレへ行った。しばらくすると、ニコラエがモゾモゾし始めた。
「どうしたの?」
「私もトイレに行ってきマス」
「行ってらっしゃい」
遠藤は一口ケーキを食べては一口紅茶を飲んで、をゆっくりと繰り返している。何往復目か、触れていないティーカップがカタカタと音を立てた。遠藤は久美の存在を思い出す。話しかけるべきか迷った。遠藤の肩はガタガタ震えている。近くに幽霊がいる事が恐ろしいのだ。携帯に話すふりをして見えないお友達と話そうとした。
「もしもし、久美さん」
もちろん返事は無い。
『な~に』
無いはずだった。
「ギャー」
遠藤は叫びながらニコラエ達がいるトイレへ駆け込んだ。
 戻ると他の客や店員がジロジロと見ていた。百合子は久美の頭を小突く。その後、視線が痛かったため、急いで食べて店を出た。
 数日後、沙奈、夜美、恵美奈が、夜美の家に集まった。
「人生ゲーム持ってきたよ」
3人で沙奈が持ってきた人生ゲームを始めた。恵美奈の番になった時、携帯のバイブが鳴った。
「少々失礼します」
恵美奈は携帯を見た。しかし、電話は来ていない。
「あれ?おかしいですね」
不思議がりながらもルーレットを回した。その後も恵美奈の番になると、毎回バイブが鳴った。
「おかしいですね?壊れたかも知れません」
電源を落とそうとした。
「消すなっ・・グワー!」
久美の苦痛の叫び声がした。
「やっぱり久美さんでしたか」
 恵美奈の携帯と手の間には、魔除のお札があった。
「なぜ分かった。恵美奈は知らないはずじゃ」
「ごめんねー。話せるようになった事、話しちゃった」
久美は崩れ落ち、うつ伏せに寝た。久美は床に顔を埋めたまま夜美に文句を言う。
「なぜあんな余計な物を恵美奈に?」
夜美は沙奈に寄り添い、久美を睨みながら言う。
「私は・・沙奈ちゃんの・・・味方。」
「沙奈ちゃんが恵美奈ちゃんに・・・味方するなら・・それに従う」
「マジか」
 久美は携帯から声を出せるようになった。バイブの音は久美の声真似だった。電源を落とそうとした時、「消すな」と叫んで驚かすつもりだった。しかし、魔除のお札があったため、力を込めると久美がショックを受けた。
 久美のいたずらが失敗し、その後は人生ゲームを謳歌した。
 日が落ち始め、4人は別れる事になった。沙奈と恵美奈は並んで歩いていた。
「またねー」
帰り道が別方向のため別れた。恵美奈は携帯を取り出す。
「もしもし、久美さん」
『4時50分30秒ちょうどをお知らせします』
「今日はお話できて楽しかったです」
恵美奈は久美の時報の真似を無視して話を続けた。
「私は失敗してつまんなかったけどね」
恵美奈はクスリと笑った。
「そういえば遠藤先生にもドッキリを仕掛けたそうですね」
「あれは傑作だったよ。たまたま遠藤先生1人になったからイタズラしたら、その後の気まずい顔」
久美の言葉は楽しそうにはずむ。
「次も楽しいドッキリをお願いします」
「もちろん!」
久美と恵美奈の帰路が別方向になり恵美奈は携帯を閉じた。
 
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