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18話・運動会3/3
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『続きまして、生徒対抗リレーを始めます。選手の生徒は準備してください』
生徒対抗リレーは各学年から1人、代表として出場する。1人が走る距離は100メートル。
代表者はほとんどが男子だ。しかし、女子も3人だけいる。その中の1人が夜美だ。
代表者達は軽いルール確認を受け、それぞれの位置についた。夜美は走れるまで、ある程度回復した。顔はまだ青ざめた感じが残っている。
「お前、本当に早いの?どうせ、くじ引きで走る順番決めたんだろ」
話しかけてきたのは6年生の男子だ。夜美より頭2つ分も大きい。悪態を突かれているうちにレースは始まっていた。
最初は赤組がリードしていた。そのまま5人目までは結構な距離をとっていた。しかし、5人目は学年差が激しく、あっという間に追いつかれた。夜美がバトンを受け取る時には、ほとんど同時だが、若干赤組が負けていた。幸い、ギリギリまで赤組が勝っていたため、夜美がインコースで始まり、カーブで差を付けた。
結果、悪態男子が最後に追い上げた事で引き分けに終わった。
「先生、このリレーの得点はどうなるんですか」
「そうねえ、どっちも頑張ったから同じ点数ずつあげるかなぁ」
「そんなの納得いきませんよ!ちゃんと白黒付けたいです。こいつもそう思ってるはずです」
夜美はバッと悪態男子を見る。先生は悪態男子を説得しようと困っている。
「フォッ、フォッ、フォッ。良いではないか」
「校長先生!」
「教師対抗リレーの後、100メートル走をするぐらいの時間はあるだろう」
「校長・・・恩に着るぜ」
という訳でアンカー対決が決まった。
『生徒対抗リレーの勝敗ですが、引き分けのため、教師対抗リレーの後にアンカー同士の100メートル走で勝った方の勝ちとします』
『次のプログラムは教師対抗リレーです。選手の先生方は準備をお願いします』
「はー」
遠藤はひたすらに落ち込んでいた。
「まぁ、そんな落ち込まないで。すぐ終わりますよ」
「私の場合すぐでは無いんですよ。なぜなら足が遅いから」
「ハハッ」
慰め先生は乾いた笑いをした。
「遠藤センセー、これを耳に付けてクダサイ」
ハンズフリーの様な物を渡された。たじろぎながら耳に付けた。
「何ですか?それ?」
慰め先生が聞く。
「御守りのような物デス」
遠藤は耳に付けた。霊体エネルギー、コウホウ、10メートル。9メートル。こんな物まで用意して、とさらにテンションが下がった。
ふと、沙奈と夜美が目に映った。沙奈は遠藤の後ろを指差して、夜美に話しかけている。
6メートル。5メートル。
本物だと気付いた。今すぐ逃げたいがバトンが来るまで逃げられない。今は白組がリードしている。遠藤と慰め先生は後ろを向いている。しかし、見ている方向が違う。
1メートル。
バトンがギリギリできて、受け取ったら直ぐに全力で逃げた。慰め先生はバトンを受け取り、前をみた。
「え!」
遠藤は想像の遥か前にいた。慰め先生も全力で追いつこうと走る。しかし、レースに勝つという低い意思の者が、生き残ろうという高い意思の者に勝てるはずもなく、そのままアンカーのニコラエにバトンが渡った。ニコラエはそのまま逃げきり、白組が勝った。
『続きまして、特別プログラムの生徒対抗アンカー対決を行います、(悪態男子)さんと夜美さんは準備して下さい』
スタートラインに立つ。
『えー、ここでお知らせがあります。ただ今、白組210点、赤組200点ですのでアンカー対決で勝ったチームの優勝です』
これを聞いて、生徒は沸き立つ。悪態男子はニヤリと笑う一方で夜美は無表情を貫いた。
「夜美ちゃーん、頑張れー!」
数々の応援の中に沙奈の声が聞こえる。夜美は小さく手を振った。
「夜美ちゃーん、頑張れー!」
数々の応援の中に久美の声が聞こえる。夜美は体勢を整えた。
2人は位置について用意をし、スタートした。2人ともほとんど同じ速さだ。並んで走っていたが夜美が何とか悪態男子の前に出た。そのままゴールテープを切った。
「おめでとう!さすが夜美ちゃん」
赤組の先生達が夜美を褒めちぎる。このレースで夜美は学校一足の速い生徒、サヨナラ逆転のヒーロー、MVPの様々な称号を得た。
自分の席に戻ると次は生徒達が夜美を祝福した。慣れない事に最初は戸惑っていた。
「素直に喜びなよ」
耳元でささやかれた。見ると久美がいた。久美がコクリとうなずくと生徒達を透き通って後ろへ消えた。その後、夜美は笑って彼らの祝福を受け入れた。
祝福も終わらないうちに閉会式が始まった。
『校長先生のお話。校長先生、お願いします』
校長が壇上に上がった。
「えー、毎年熱い運動会を見せてもらっていますが、今日の運動会は近年稀に見る熱い運動会でした。みなさん素晴らしい!」
校長は言葉に合わせて拍手をする。生徒、先生もつられて拍手をする。
「みなさなさん、疲れているでしょうからゆっくり休んでください。私の話は以上です」
校長はお辞儀をして壇上をおりた。
閉会式も終わりいつも通りの放課後が来た。夜美の両親は我が子を迎えに行き。家に帰った。
「あれっ?夜美は?」
夜美の父が母に聞いた。
「沙奈ちゃんの家に遊びに行ったわよ」
父は感心しながらうなずく。
「子供は永久機関だね」
「ハハッ、その通りね」
夕方、沙奈の家から電話がかかってきた。母は少しの世間話をして受話器を置いた。
「夜美寝ちゃって起きそうに無いから今日は久美ちゃん家に泊めてくれるって」
「ああ、やっぱり疲れてたんだね」
子供達は明日も駆け回る。
生徒対抗リレーは各学年から1人、代表として出場する。1人が走る距離は100メートル。
代表者はほとんどが男子だ。しかし、女子も3人だけいる。その中の1人が夜美だ。
代表者達は軽いルール確認を受け、それぞれの位置についた。夜美は走れるまで、ある程度回復した。顔はまだ青ざめた感じが残っている。
「お前、本当に早いの?どうせ、くじ引きで走る順番決めたんだろ」
話しかけてきたのは6年生の男子だ。夜美より頭2つ分も大きい。悪態を突かれているうちにレースは始まっていた。
最初は赤組がリードしていた。そのまま5人目までは結構な距離をとっていた。しかし、5人目は学年差が激しく、あっという間に追いつかれた。夜美がバトンを受け取る時には、ほとんど同時だが、若干赤組が負けていた。幸い、ギリギリまで赤組が勝っていたため、夜美がインコースで始まり、カーブで差を付けた。
結果、悪態男子が最後に追い上げた事で引き分けに終わった。
「先生、このリレーの得点はどうなるんですか」
「そうねえ、どっちも頑張ったから同じ点数ずつあげるかなぁ」
「そんなの納得いきませんよ!ちゃんと白黒付けたいです。こいつもそう思ってるはずです」
夜美はバッと悪態男子を見る。先生は悪態男子を説得しようと困っている。
「フォッ、フォッ、フォッ。良いではないか」
「校長先生!」
「教師対抗リレーの後、100メートル走をするぐらいの時間はあるだろう」
「校長・・・恩に着るぜ」
という訳でアンカー対決が決まった。
『生徒対抗リレーの勝敗ですが、引き分けのため、教師対抗リレーの後にアンカー同士の100メートル走で勝った方の勝ちとします』
『次のプログラムは教師対抗リレーです。選手の先生方は準備をお願いします』
「はー」
遠藤はひたすらに落ち込んでいた。
「まぁ、そんな落ち込まないで。すぐ終わりますよ」
「私の場合すぐでは無いんですよ。なぜなら足が遅いから」
「ハハッ」
慰め先生は乾いた笑いをした。
「遠藤センセー、これを耳に付けてクダサイ」
ハンズフリーの様な物を渡された。たじろぎながら耳に付けた。
「何ですか?それ?」
慰め先生が聞く。
「御守りのような物デス」
遠藤は耳に付けた。霊体エネルギー、コウホウ、10メートル。9メートル。こんな物まで用意して、とさらにテンションが下がった。
ふと、沙奈と夜美が目に映った。沙奈は遠藤の後ろを指差して、夜美に話しかけている。
6メートル。5メートル。
本物だと気付いた。今すぐ逃げたいがバトンが来るまで逃げられない。今は白組がリードしている。遠藤と慰め先生は後ろを向いている。しかし、見ている方向が違う。
1メートル。
バトンがギリギリできて、受け取ったら直ぐに全力で逃げた。慰め先生はバトンを受け取り、前をみた。
「え!」
遠藤は想像の遥か前にいた。慰め先生も全力で追いつこうと走る。しかし、レースに勝つという低い意思の者が、生き残ろうという高い意思の者に勝てるはずもなく、そのままアンカーのニコラエにバトンが渡った。ニコラエはそのまま逃げきり、白組が勝った。
『続きまして、特別プログラムの生徒対抗アンカー対決を行います、(悪態男子)さんと夜美さんは準備して下さい』
スタートラインに立つ。
『えー、ここでお知らせがあります。ただ今、白組210点、赤組200点ですのでアンカー対決で勝ったチームの優勝です』
これを聞いて、生徒は沸き立つ。悪態男子はニヤリと笑う一方で夜美は無表情を貫いた。
「夜美ちゃーん、頑張れー!」
数々の応援の中に沙奈の声が聞こえる。夜美は小さく手を振った。
「夜美ちゃーん、頑張れー!」
数々の応援の中に久美の声が聞こえる。夜美は体勢を整えた。
2人は位置について用意をし、スタートした。2人ともほとんど同じ速さだ。並んで走っていたが夜美が何とか悪態男子の前に出た。そのままゴールテープを切った。
「おめでとう!さすが夜美ちゃん」
赤組の先生達が夜美を褒めちぎる。このレースで夜美は学校一足の速い生徒、サヨナラ逆転のヒーロー、MVPの様々な称号を得た。
自分の席に戻ると次は生徒達が夜美を祝福した。慣れない事に最初は戸惑っていた。
「素直に喜びなよ」
耳元でささやかれた。見ると久美がいた。久美がコクリとうなずくと生徒達を透き通って後ろへ消えた。その後、夜美は笑って彼らの祝福を受け入れた。
祝福も終わらないうちに閉会式が始まった。
『校長先生のお話。校長先生、お願いします』
校長が壇上に上がった。
「えー、毎年熱い運動会を見せてもらっていますが、今日の運動会は近年稀に見る熱い運動会でした。みなさん素晴らしい!」
校長は言葉に合わせて拍手をする。生徒、先生もつられて拍手をする。
「みなさなさん、疲れているでしょうからゆっくり休んでください。私の話は以上です」
校長はお辞儀をして壇上をおりた。
閉会式も終わりいつも通りの放課後が来た。夜美の両親は我が子を迎えに行き。家に帰った。
「あれっ?夜美は?」
夜美の父が母に聞いた。
「沙奈ちゃんの家に遊びに行ったわよ」
父は感心しながらうなずく。
「子供は永久機関だね」
「ハハッ、その通りね」
夕方、沙奈の家から電話がかかってきた。母は少しの世間話をして受話器を置いた。
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