裏切られた侯爵夫人なんてお断り~離婚を求められた悪役夫人は踊りだす~

みけの

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一夜明けて

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一夜が明けた。

 襲撃事件が治まり、平和が戻ったノーム侯爵邸。昨日の事が嘘のように、日常の風景がある。

が……一か所だけ違っていた。

 「何で私まで、こんな朝早くに呼ばれるんですかー!?」

 朝早くに呼び出された事に1人だけ頬を膨らませ、不満を口にしているエイミー。
 そんな彼女ににこやかな笑みをむけるのはサーベント公爵夫人だ。

「あらあら。……エイミーさん、貴女侯爵夫人になるのならこれが普通よ」

「そんなはずないです! だって「なら貴女、自分のお母様よりも先に起きた事があって?」え……?」

 突然問われ、エイミーはしばらく帰っていない家での日常を思い返した。

 一番先に起きるのがお母様。
その後にお父様が起きて次にお姉様。……だと、思う。思うというのはその時間に起きていた事が無いから。
 まだ眠気がある中、あくびをしながら食堂に行くと、既に3人が席にいて一緒に朝食をとる。
それもエイミーの分として食卓に並べられたものを、当たり前のように食べ、終わればそのまま自室に帰る。

と、ありのままを話したら何故か驚かれた。

 「まあ! 家によって色々ね? わたくしの侍女の話だと――ああ、その子も貴女と同じ伯爵令嬢で年も同じよ? ――でも親と同じ時間に起きて、支度を手伝っているそうだけど?」

 お前は良い境遇にいると、言外に言われているのだと察する。
でも不満を抱き続けていた思いは現実を否定する。

「っ……家の事情は色々あるので……」

「……確かにそうね。でもさっきわたくしの侍女が“手伝っている”って言ったでしょう? その子、事情があって通いで勤めているの」

「通いで?」

 ―――自分と年が一緒で、働きながら家事もしているの?
 驚いているエイミーに夫人は問う。

「……侯爵夫人だったクリスティアさんは、何時に起きていたのかしら? この屋敷に長期滞在していたのだから分かるわよね?」

 ―――そう自分から問うたのに、

「――といっても貴女はこの半年、ただのお客様だったのだから知らないか」

ふっ、と小さく笑んで話を切った。

―――どうせ知らないのでしょう? と言われているのを言外に察したエイミーは

 沸き上がる屈辱感や劣等感に、俯いたまま、震える事しか出来なかった。
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