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両親への報告(のように見える別の何か)
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まず私とクリスティアの知る両親のデータはこう。
まず父・ルマン・モーハン
今は王城で文官を勤めているけど、かつては王家御用達の教師をしていた経験があり、人望のある人。今でもあちこちから講演や教育に関する相談を持ち掛けられていて、仕事の合間に受けている。
そして母・リディ・モーハン
父と同じく文官であり、王家ご用達の教師をしていた経験があり、父とはそれが縁だったらしい。
私やエイミーが小さい頃、一時仕事を辞めていたけど育ったのを見計らって仕事に再復帰した。
共通するのは2人して、仕事人間という事だ。だからと言って私達に対して愛がない訳ではない。その事は感謝している。
「フデキオ君がそのような男だとは思わなかった!」
「ああ……エイミー! どんなに怖かったでしょう! かわいそうに……!」
憤懣やるかたないって感じのお父様と、横でハンカチを目に当て涙ぐむお母様。
あー……この反応。まぁ親としては当然か。
つまり2人は、フデキオがエイミーを襲ったと思ってるんだ? まぁ親としてはそうだろうな。
ここで『エイミーは元からフデキオを誘惑するつもりでいたんです!』なんて言っても『妹を信じられないなんてそれでも姉か!』と理不尽な怒りを買いそうだ。
かと言っていずれはバレるのに、ここでごまかすのも意味ないよな。
一度深呼吸をして、まず……
「……エイミーがノーム邸に来たのは、結婚式の翌日からでした。それから半年の間、ずっと侯爵様と一緒でした。もう妻のわたくしよりも長く」
よし、ここは淡々と事実を語り、お察ししてもらおう。
私が話し出すと、お父様達がピタリと動きを止めて呆けたような声を出した。
「「え………?」」
よし、食いついた! にやけそうになる口元を隠し、更に続けた。
「侯爵様もエイミーが欲しいものを言われるままに買い与え、あちこち遊びに連れて行ってました。観劇、一流料理店、ダンスホールに……」
「ちょ、ちょっと待って? いくらフデキオさんが侯爵様でも、そんなにお金がある筈はないわ? それにそこまで家を空けていたらお仕事も回らないでしょう……?」
あわあわと訊いてくるお母様。それに
「……ええ、その仕事は全てわたくしが。なので嫁いでからずっと、屋敷を出た事もありません。あちこちから送られてくる請求書への対応も含めて」
「「!!」」
やっとお父様が声を震わせ訊いた。
「そ、その……エイミーが無理やり、連れ回されていたのではないかね?」
まあ、親としてはそう思いたいだろうね。
「少しも。それにこれはいずれ分かる事ですが、エイミーは屋敷では女主人のように振舞ってました。出される食事に不満を言ったり、あの子の一言で首を切られた使用人も多くいました」
「! あの子がそんなご迷惑を……」
……してたんだよ。
あー思い返しても腹が立つ! 世話してくれている人を何だと思ってるんだ!
こんな裏側、悪友だって考えないぞ! ………た、多分??
いけない、思考がずれてしまった。
今はここは乗り切らねば、クリスティアを解放するためにも!
と、怒りは顔に出さず、傷ついた娘の体を保ったまま……更に燃料を投下した。
「それにある日、参加しなければいけない夜会がありましたが、“お姉様はお仕事していてよ、私がお兄様のパートナーをするから”とエイミーが言い出して……侯爵様も“そうだな、そうしよう”と……。睡眠時間を削った状態で仕事をする私を置いて、2人は笑顔で夜会に行きました……」
「「…………」」
両親はクリスティアの告白に、もはや声も出ない様子だ。エイミーの暴れっぷりが相当ショックだったのだろう。
これで『エイミーはそんな子じゃない』とか言い出さないところを見ると、ちょっとは心当たりがありそうだ。
なんて考えながら黙っていたら、お母様がやっと
「あ、貴女も辛かったわね?」
あ・今気づいたな? ってなタイミングで言ってくれた。
そろそろ良いかな? と思い、ずっと疑問だった事を質問する。
「そもそもお2人は、あんなに長い間滞在しているエイミーを、どうして連れ戻そうとされなかったのですか?」
……そうだよ、そこが1番気になってたんだ。
まず父・ルマン・モーハン
今は王城で文官を勤めているけど、かつては王家御用達の教師をしていた経験があり、人望のある人。今でもあちこちから講演や教育に関する相談を持ち掛けられていて、仕事の合間に受けている。
そして母・リディ・モーハン
父と同じく文官であり、王家ご用達の教師をしていた経験があり、父とはそれが縁だったらしい。
私やエイミーが小さい頃、一時仕事を辞めていたけど育ったのを見計らって仕事に再復帰した。
共通するのは2人して、仕事人間という事だ。だからと言って私達に対して愛がない訳ではない。その事は感謝している。
「フデキオ君がそのような男だとは思わなかった!」
「ああ……エイミー! どんなに怖かったでしょう! かわいそうに……!」
憤懣やるかたないって感じのお父様と、横でハンカチを目に当て涙ぐむお母様。
あー……この反応。まぁ親としては当然か。
つまり2人は、フデキオがエイミーを襲ったと思ってるんだ? まぁ親としてはそうだろうな。
ここで『エイミーは元からフデキオを誘惑するつもりでいたんです!』なんて言っても『妹を信じられないなんてそれでも姉か!』と理不尽な怒りを買いそうだ。
かと言っていずれはバレるのに、ここでごまかすのも意味ないよな。
一度深呼吸をして、まず……
「……エイミーがノーム邸に来たのは、結婚式の翌日からでした。それから半年の間、ずっと侯爵様と一緒でした。もう妻のわたくしよりも長く」
よし、ここは淡々と事実を語り、お察ししてもらおう。
私が話し出すと、お父様達がピタリと動きを止めて呆けたような声を出した。
「「え………?」」
よし、食いついた! にやけそうになる口元を隠し、更に続けた。
「侯爵様もエイミーが欲しいものを言われるままに買い与え、あちこち遊びに連れて行ってました。観劇、一流料理店、ダンスホールに……」
「ちょ、ちょっと待って? いくらフデキオさんが侯爵様でも、そんなにお金がある筈はないわ? それにそこまで家を空けていたらお仕事も回らないでしょう……?」
あわあわと訊いてくるお母様。それに
「……ええ、その仕事は全てわたくしが。なので嫁いでからずっと、屋敷を出た事もありません。あちこちから送られてくる請求書への対応も含めて」
「「!!」」
やっとお父様が声を震わせ訊いた。
「そ、その……エイミーが無理やり、連れ回されていたのではないかね?」
まあ、親としてはそう思いたいだろうね。
「少しも。それにこれはいずれ分かる事ですが、エイミーは屋敷では女主人のように振舞ってました。出される食事に不満を言ったり、あの子の一言で首を切られた使用人も多くいました」
「! あの子がそんなご迷惑を……」
……してたんだよ。
あー思い返しても腹が立つ! 世話してくれている人を何だと思ってるんだ!
こんな裏側、悪友だって考えないぞ! ………た、多分??
いけない、思考がずれてしまった。
今はここは乗り切らねば、クリスティアを解放するためにも!
と、怒りは顔に出さず、傷ついた娘の体を保ったまま……更に燃料を投下した。
「それにある日、参加しなければいけない夜会がありましたが、“お姉様はお仕事していてよ、私がお兄様のパートナーをするから”とエイミーが言い出して……侯爵様も“そうだな、そうしよう”と……。睡眠時間を削った状態で仕事をする私を置いて、2人は笑顔で夜会に行きました……」
「「…………」」
両親はクリスティアの告白に、もはや声も出ない様子だ。エイミーの暴れっぷりが相当ショックだったのだろう。
これで『エイミーはそんな子じゃない』とか言い出さないところを見ると、ちょっとは心当たりがありそうだ。
なんて考えながら黙っていたら、お母様がやっと
「あ、貴女も辛かったわね?」
あ・今気づいたな? ってなタイミングで言ってくれた。
そろそろ良いかな? と思い、ずっと疑問だった事を質問する。
「そもそもお2人は、あんなに長い間滞在しているエイミーを、どうして連れ戻そうとされなかったのですか?」
……そうだよ、そこが1番気になってたんだ。
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