ミュゼ・シルフィーの結婚の行方

みけの

文字の大きさ
2 / 66
彼にとっては理不尽な結婚

冷遇されるぐーたら夫人

しおりを挟む
 と、一切合切“ルミカが大事だ”とアピールされるごとに、ミュゼはルースの希望を呑む。

  そんなミュゼに対しルースは、初夜どころか夫婦としての交流もせずにいる。

  妻扱いも女主人扱いもされず、妻である自分より、大事な異性がいる事を否定しない夫の要求は普通で言えばかなり理不尽だろう。

 しかし……当のミュゼは、使用人達に嫌な態度を取られようが目の前で夫が他の女と交流しようが一向に文句を言う事も、それを態度に出す事もなかった。

 彼女は……そう、常にぼんやり。

「見てよミュゼさん! あんなスッピンでぼろっちぃドレス着てだらけてるわ! ルース様の奥様のくせに!」

「あれじゃあうちら使用人の方がましよ。もっとしゃんとして頂かないとね~」

 と、聞こえよがしに言われる嫌味にも反応しない。

更に常に着古したようなドレス姿でだらっとしているから、貴族出身の使用人達は眉を顰め、嫌悪感を隠そうともしないで聞こえる声で陰口を言う。

「何故あのような年増とルース様が……」

「あんなの放置で良いわよね? お世話なんか御免だわ」

 と、世話係になった侍女達にも放っておかれている。


 ある日、あからさまに食事の席が無くなっていた事があった。
しかしそれも気にすることなく、並べられた料理をほいほい、と皿に乗せると、

「ではお2人でごゆっくり」
と、出て行ってしまった。


 それにはルースも慌て引き留めようとしたがルミカに

「そっとしてあげましょう? 侍女が椅子を用意しなかったから怒ったのよ。少し気の小さいところがあるのね。私達より大人なのに子供みたい」

とルミカが言うと、

「そ、そうだね。椅子なんて用意させればいいだけなのに。後できつく言っておくよ」

とルースは椅子に戻る。

 何故椅子が無かったのか、彼が代わりに用意させるなり自分の椅子を代わりにするなりという気回しが出来ない。

「貴女も僕の妻になったのだから子供のように拗ねないで欲しい。我が家の使用人達は優秀なのだから、椅子が欲しければ言えば良いだけだろう」

 ルースは彼女が置かれている状況を知らなかった。というか知る必要がなかった。

 一つ屋根の下で暮らす相手だ。世話をする使用人だっている。彼らは仕事に忠実だから少しの不手際位多めに見るべきだろう。

 そんな彼に、ミュゼは変わらずボーっとしたままに、

 「そうですか、分かりました」

とだけ、答えた。

「分かってくれればいい。以後気を付けてね? じゃあ僕はルミカの処に行くから」
と、さっさと出て行ってしまった。
 
「貴族の結婚って存外、しょうもないものなのね……」

ミュゼのそんな呟きを聞く者は、屋敷にはいなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

疑惑のタッセル

翠月 瑠々奈
恋愛
今、未婚の貴族の令嬢・令息の中で、王国の騎士たちにタッセルを渡すことが流行っていた。 目当ての相手に渡すタッセル。「房飾り」とも呼ばれ、糸や紐を束ねて作られた装飾品。様々な色やデザインで形作られている。 それは、騎士団炎の隊の隊長であるフリージアの剣にもついていた。 でもそれは──?

【短編】お姉さまは愚弟を赦さない

宇水涼麻
恋愛
この国の第1王子であるザリアートが学園のダンスパーティーの席で、婚約者であるエレノアを声高に呼びつけた。 そして、テンプレのように婚約破棄を言い渡した。 すぐに了承し会場を出ようとするエレノアをザリアートが引き止める。 そこへ颯爽と3人の淑女が現れた。美しく気高く凛々しい彼女たちは何者なのか? 短編にしては長めになってしまいました。 西洋ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。

安らかにお眠りください

くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。 ※突然残酷な描写が入ります。 ※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。 ※小説家になろう様へも投稿しています。

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

利害一致の結婚

詩織
恋愛
私達は仲のいい夫婦。 けど、お互い条件が一致しての結婚。辛いから私は少しでも早く離れたかった。

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

ジルの身の丈

ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。 身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。 ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。 同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。 そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で─── ※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。

6回目のさようなら

音爽(ネソウ)
恋愛
恋人ごっこのその先は……

処理中です...