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幼馴染達は知る
怒りを覚えた相手②~ルース・リュドミラ視点~
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そう結論してからは、婚約期間中ずっとミュゼとの交流を避けた。――ルミカを理由にして。
幼馴染で昔から病弱なルミカは、僕がミュゼと約束した日によく体調を崩す。でも僕が一緒にいたら元気になる。
きっと僕を彼女に取られるとか、いらない心配をしているんだろう。可愛くて健気な僕の理解者。ルミカは僕がいなきゃダメなんだ。ミュゼにもそう言って聞かせた。
「ミュゼは僕にとって大事な人なんだ、君もそのつもりでいて欲しい」
言いながら優越感に満たされる。
―――ほら、絶望しろ。お前みたいな訳アリを大事にしてくれる奴なんていないんだ。
意地悪く思いながら返事を待つ。
しかしミュゼは顔色一つ変える事無く一言、
「分かりました」
って言っただけだった。
「………え?」
何だよ……それ。
結婚相手に、夫になる僕の気持ちが他にあるのに、何も感じないのか?
傷付けたのは僕なのに、かすり傷さえ感じていないようなミュゼの様子に呆然としてしまった。
そうして迎えた結婚式の日。
誓いの言葉を交わし、教会から出て来た僕に青い顔をした執事が近づき、耳元に小声で告げて来る。
「婚儀の最中ですが、ルミカ嬢がご気分を悪くされ倒れました! うわ言でルース様の御名をくりかえしています……!」
ルミカが僕の名を?
「……分かった、すぐに向かう」
隣の花嫁姿のミュゼに言う。
「聞いた通りだ。ミュゼ、僕はこれからルミカのところに行ってくる」
心配そうな表情を顔に浮かべつつ、内心暗い喜びに高揚していた。
―――これならさすがにこの女でも、ショックを受けるだろう。
が、そんな僕の期待は
「そうですか、どうぞお気をつけて」
変わらないぼんやりした言葉で、呆気ない程崩れてしまった。
「……っ、前から思ってたけど、体調を崩したルミカに思う事はないのか?」
病弱で天涯孤独なルミカを引き合いに出して、ミュゼの言葉を待つ。
僕が知る最も不幸な存在。
しかしそれでも……
「ルース様のお顔を見ればすぐに治る事を知ってますから」
「っ!!」
ぼんやりした顔で返って来た答えにカッ、と頭に血が上った。
何故自分がこんなに腹を立てているのか分からないままに、ここは教会で式の最中で、招待客が大勢いて……という事をすっかり忘れ怒号を上げてしまう。
「……ミュゼ! ルミカが苦しんでいるのにどうしてそんなに他人事なんだ! 君がそんなに冷たい態度でいるなら僕にも考えがあるよ! それでもいいの?」
「苦しんでいる? なら大急ぎでルミカさんの元へ行ってあげて下さい。こちらの事などお気になさらず」
どうぞあちらに、と、執事が控える馬車を手の平で促すミュゼに、
「そうさせてもらうさ!」
捨て台詞のように言って、走り去った。
「―――旦那様?」
考え込んでいたら、執事の心配そうな顔が目に映った。
過去の事が頭に再生され、知らずに固まっていたみたいだ。慌てて取り繕う。
「あ、ああごめん。ちょっと考え事をしていた。
ミュゼの知り合いがどうして、ルミカと茶を飲んでいるんだろう?」
「ルミカ様がお招きしたからです」
「ルミカが?」
幼馴染で昔から病弱なルミカは、僕がミュゼと約束した日によく体調を崩す。でも僕が一緒にいたら元気になる。
きっと僕を彼女に取られるとか、いらない心配をしているんだろう。可愛くて健気な僕の理解者。ルミカは僕がいなきゃダメなんだ。ミュゼにもそう言って聞かせた。
「ミュゼは僕にとって大事な人なんだ、君もそのつもりでいて欲しい」
言いながら優越感に満たされる。
―――ほら、絶望しろ。お前みたいな訳アリを大事にしてくれる奴なんていないんだ。
意地悪く思いながら返事を待つ。
しかしミュゼは顔色一つ変える事無く一言、
「分かりました」
って言っただけだった。
「………え?」
何だよ……それ。
結婚相手に、夫になる僕の気持ちが他にあるのに、何も感じないのか?
傷付けたのは僕なのに、かすり傷さえ感じていないようなミュゼの様子に呆然としてしまった。
そうして迎えた結婚式の日。
誓いの言葉を交わし、教会から出て来た僕に青い顔をした執事が近づき、耳元に小声で告げて来る。
「婚儀の最中ですが、ルミカ嬢がご気分を悪くされ倒れました! うわ言でルース様の御名をくりかえしています……!」
ルミカが僕の名を?
「……分かった、すぐに向かう」
隣の花嫁姿のミュゼに言う。
「聞いた通りだ。ミュゼ、僕はこれからルミカのところに行ってくる」
心配そうな表情を顔に浮かべつつ、内心暗い喜びに高揚していた。
―――これならさすがにこの女でも、ショックを受けるだろう。
が、そんな僕の期待は
「そうですか、どうぞお気をつけて」
変わらないぼんやりした言葉で、呆気ない程崩れてしまった。
「……っ、前から思ってたけど、体調を崩したルミカに思う事はないのか?」
病弱で天涯孤独なルミカを引き合いに出して、ミュゼの言葉を待つ。
僕が知る最も不幸な存在。
しかしそれでも……
「ルース様のお顔を見ればすぐに治る事を知ってますから」
「っ!!」
ぼんやりした顔で返って来た答えにカッ、と頭に血が上った。
何故自分がこんなに腹を立てているのか分からないままに、ここは教会で式の最中で、招待客が大勢いて……という事をすっかり忘れ怒号を上げてしまう。
「……ミュゼ! ルミカが苦しんでいるのにどうしてそんなに他人事なんだ! 君がそんなに冷たい態度でいるなら僕にも考えがあるよ! それでもいいの?」
「苦しんでいる? なら大急ぎでルミカさんの元へ行ってあげて下さい。こちらの事などお気になさらず」
どうぞあちらに、と、執事が控える馬車を手の平で促すミュゼに、
「そうさせてもらうさ!」
捨て台詞のように言って、走り去った。
「―――旦那様?」
考え込んでいたら、執事の心配そうな顔が目に映った。
過去の事が頭に再生され、知らずに固まっていたみたいだ。慌てて取り繕う。
「あ、ああごめん。ちょっと考え事をしていた。
ミュゼの知り合いがどうして、ルミカと茶を飲んでいるんだろう?」
「ルミカ様がお招きしたからです」
「ルミカが?」
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