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幼馴染達は知る
魅力的な男~ルース・リュドミラ視点~
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応接間の前の扉に、侍女達が群がっている。
全て年頃の侍女達で、皆顔を赤らめ興奮していた。
「素敵な方ね~!」
「あんな人が本当にいるのね! 私まだドキドキしているわ!」
「……でもルミカ様がサイモンさんを気に入っているのはどうしてかしら? ルミカ様のお相手はルース様でしょう?」
侍女の言葉に僕は固まる。―――ルミカが気に入っているって?
「すまない、ちょっと通してくれ」
「え? ええ!? ル、いえ旦那様、申し訳ございません!」
僕の存在に気付き、侍女達は一斉に頭を下げた。そんな彼女らに僕は尋ねる。
「中にいるのはミュゼの客なの?」
今日より3日位前にミュゼはここから出て行った。
ルミカと観劇をし、帰宅後ミュゼがいなくなった事に驚いて執事に尋ねると、いきなり訪ねてきた来訪者の言葉に引かれ、ホイホイ付いて行ったと執事が報告した。
―――そんな言い方なのに、何故か彼やその場にいたらしい使用人達は、真っ青になって震えていた。――僕がいない間に、何かあったのだろうか?
多少気になるも、執事からの説明はそれだけだったから、屋敷にいなかった僕には事情が分かる筈もない。
それに僕が見るに、今も特に変わった様子もない。だから
―――まあ、何も問題が起こっていないなら良いかな~
と、特に追及もしなかった。
そう思い出しながら、侍女達がいたドアの隙間からミュゼの客と言う男を見る。行儀は悪いだろうが気になるのだから仕方がない。
「~~~っ!」
ルミカの向かいに座る男が、ミュゼの客人だろう。体格のいい若い男。年は見た感じ僕より上で、ミュゼと同じ位か。
がっしりとした体つきなのに、顔立ちはいかつくなく美麗だ。彫刻のように整いつつも、仄かに野生美も感じられる。
そんな彼をルミカが、頬を紅潮させて見つめている。僕が今まで知らなかったルミカの表情。
「まあ、そのような事が? ……サイモン様は、ご無事でしたか?」
「幸いにも。あのような危機的状況にあって、無事でいられた事に感謝しかありません。今の自分があるのはその人のお陰です」
「……っ、でしたら私にとっても、そのお方は感謝するべき方ですわね」
扉の隙間から見るルミカは、僕以外の誰かの言葉に喜んでいる。その姿に胸がざわついた。
―――なんでだ? ルミカにとって一番は僕だろう?
両親亡き後、引き取って生活の保障もしてあげて何不自由ない暮らしを贈れているのは僕が父上に頼んだからだ。
まあ父上が優しい人で、彼女の父親が父上の部下で、優秀な人だったからもあるけど主にルミカを助けたのは僕だ。
なのに……どうして別の男に、そんな熱い眼差しを向けている?
怒りが湧くままに部屋に乱入しようとしたが、それより前に男が席から立ち上がった。
「さて、俺もそろそろ……」
「ま、まあもうお帰りに? もう少し良いじゃありませんか、それとも、ご一緒したいと私がお願いするのは我が儘ですか……?」
席を立とうとする男を、ルミカが潤んだ目で見つめる。が、男は素っ気ない。
「いや? 我が儘以前にこちらも仕事を持つ身なので。それにそろそろ小侯爵様がお帰りになられるでしょう? 大事な幼馴染と見知らぬ男が一緒にいるのは良くない」
「そぉんなぁ……ルミカはサイモン様を」
両手の拳を口元に寄せ、上目遣いで見つめて来るルミカに、男は動じるどころかははっ、と笑いながら指摘すらする。
「相手をお間違えのようだ。今のお顔は俺より小侯爵様にお見せしないと」
「ルースにはミュゼさんがいるんです!」
何だよ、どうしてそこであの女が出て来るんだ!
ルミカ、君は分かってくれているんだろう? 僕があの女を大嫌いなんだと。だから散々ミュゼを放置し君の元に向かった事の理由も知っている筈なのに。
そんなイラつきがピークに達した僕の耳に、男のとぼけた声が重なった。
「あれ、聞いていませんか? 小侯爵とミュゼ殿は来年には離縁されること」
全て年頃の侍女達で、皆顔を赤らめ興奮していた。
「素敵な方ね~!」
「あんな人が本当にいるのね! 私まだドキドキしているわ!」
「……でもルミカ様がサイモンさんを気に入っているのはどうしてかしら? ルミカ様のお相手はルース様でしょう?」
侍女の言葉に僕は固まる。―――ルミカが気に入っているって?
「すまない、ちょっと通してくれ」
「え? ええ!? ル、いえ旦那様、申し訳ございません!」
僕の存在に気付き、侍女達は一斉に頭を下げた。そんな彼女らに僕は尋ねる。
「中にいるのはミュゼの客なの?」
今日より3日位前にミュゼはここから出て行った。
ルミカと観劇をし、帰宅後ミュゼがいなくなった事に驚いて執事に尋ねると、いきなり訪ねてきた来訪者の言葉に引かれ、ホイホイ付いて行ったと執事が報告した。
―――そんな言い方なのに、何故か彼やその場にいたらしい使用人達は、真っ青になって震えていた。――僕がいない間に、何かあったのだろうか?
多少気になるも、執事からの説明はそれだけだったから、屋敷にいなかった僕には事情が分かる筈もない。
それに僕が見るに、今も特に変わった様子もない。だから
―――まあ、何も問題が起こっていないなら良いかな~
と、特に追及もしなかった。
そう思い出しながら、侍女達がいたドアの隙間からミュゼの客と言う男を見る。行儀は悪いだろうが気になるのだから仕方がない。
「~~~っ!」
ルミカの向かいに座る男が、ミュゼの客人だろう。体格のいい若い男。年は見た感じ僕より上で、ミュゼと同じ位か。
がっしりとした体つきなのに、顔立ちはいかつくなく美麗だ。彫刻のように整いつつも、仄かに野生美も感じられる。
そんな彼をルミカが、頬を紅潮させて見つめている。僕が今まで知らなかったルミカの表情。
「まあ、そのような事が? ……サイモン様は、ご無事でしたか?」
「幸いにも。あのような危機的状況にあって、無事でいられた事に感謝しかありません。今の自分があるのはその人のお陰です」
「……っ、でしたら私にとっても、そのお方は感謝するべき方ですわね」
扉の隙間から見るルミカは、僕以外の誰かの言葉に喜んでいる。その姿に胸がざわついた。
―――なんでだ? ルミカにとって一番は僕だろう?
両親亡き後、引き取って生活の保障もしてあげて何不自由ない暮らしを贈れているのは僕が父上に頼んだからだ。
まあ父上が優しい人で、彼女の父親が父上の部下で、優秀な人だったからもあるけど主にルミカを助けたのは僕だ。
なのに……どうして別の男に、そんな熱い眼差しを向けている?
怒りが湧くままに部屋に乱入しようとしたが、それより前に男が席から立ち上がった。
「さて、俺もそろそろ……」
「ま、まあもうお帰りに? もう少し良いじゃありませんか、それとも、ご一緒したいと私がお願いするのは我が儘ですか……?」
席を立とうとする男を、ルミカが潤んだ目で見つめる。が、男は素っ気ない。
「いや? 我が儘以前にこちらも仕事を持つ身なので。それにそろそろ小侯爵様がお帰りになられるでしょう? 大事な幼馴染と見知らぬ男が一緒にいるのは良くない」
「そぉんなぁ……ルミカはサイモン様を」
両手の拳を口元に寄せ、上目遣いで見つめて来るルミカに、男は動じるどころかははっ、と笑いながら指摘すらする。
「相手をお間違えのようだ。今のお顔は俺より小侯爵様にお見せしないと」
「ルースにはミュゼさんがいるんです!」
何だよ、どうしてそこであの女が出て来るんだ!
ルミカ、君は分かってくれているんだろう? 僕があの女を大嫌いなんだと。だから散々ミュゼを放置し君の元に向かった事の理由も知っている筈なのに。
そんなイラつきがピークに達した僕の耳に、男のとぼけた声が重なった。
「あれ、聞いていませんか? 小侯爵とミュゼ殿は来年には離縁されること」
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