ミュゼ・シルフィーの結婚の行方

みけの

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幼馴染達は知る

ミュゼとルースの婚約事情②

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時の止まった場所。

「……サイモン様ってば、素敵な表現……」

 うっとりとしているルミカのはルミカだけで、ルースやそこにいる者達は顔を引きつらせた。

 “時の止まった場所”、遠回しに“現実から取り残されている”“情報が入って来ない”と皮肉を言われた事に気付いたからだ。

そんな彼らに涼しい顔で、

 「長居してしまいましたが、これにて失礼を致します」

と、サイモンはルースにだけ退去の旨を告げた。

 サイモンにとってはそれが普通。

ルースはこのリュドミラ侯爵家の主人だ。だからこそ真っ先に彼に辞去すると伝えるのは至って普通だ。故に相手も鷹揚な態度でサイモンに答える。

「そ、そうか」

 ルースの答えが、サイモンにとって想定内な事に内心舌打ちしながら、けど“高位貴族ってそんなもんだよねー”と納得しながら扉へと歩を進める。しかし、

「お、お待ちくださいサイモン様! お忘れしてませんか?」

「………ルミカ嬢、俺が何を忘れたと?」

もはや振り返りもしないサイモンに、ルミカの声が追い付いてしまった。

「嫌ですわぁ……! 私と今後私的に連絡する為に、住所を交換しなくては」

 何言ってんのこいつ?

「? 俺はお嬢さんと今日初めて会いました。そんな間柄でプライベートな情報を教えるなどあり得ないでしょう」

「? ――難しい事は分からないけど、またお会いして下さいますよね? 私貴方の事が知りたいんです!」

 ルミカの言い様に、サイモンは内心ウンザリした。

口説き文句としては最低だ。百歩譲って、単なるお願いならばスルー案件だ。金輪際会う気などない。

「嫌ですそんな冗談じゃない」

 先程迄とガラッと変わったサイモンの冷たい声に、

「え………?」

ルミカは笑顔のまま、硬直した。


 「失礼だぞリューラー殿!」

 ふぇ、と泣きそうなルミカに気付いたルースがサイモンに怒鳴る。

 だがもう機嫌取りする必要はない、とサイモンはかぶっていた猫を脱いだ。そしていかにも面倒だという気持ちを隠すことなく前髪をかき上げる。

「いやこん位言わないと分かってもらえないでしょう。このザッコ元・男爵令嬢殿は。年頃のお嬢さんに優しい言葉なんか無暗にかける方が軽薄です」

「うっ! だ、だからと言って乱暴な言葉を使う理由にはならない。……そ、そうだ! さっき言っていたあれは何だ!?」

「あれって?」

 「私とミュゼが来年には離縁すると言ってただろう!」

 え? とサイモンが驚くが、ルースが本気で怒っているのが分かったので少し逡巡してから向かい合うように立った。後ろから「お話されるならソファに」というルミカの声がかかったが、何故か彼女が座る隣を指していたのでそのままでいる。

「知らなかったんですか? 分かりました、俺の知っている事だけですが、説明しましょう」
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