26 / 66
最終章 まさかの展開
小侯爵夫人(ただし仮)と幼馴染
しおりを挟む
「今帰ったわ。
この間は騒がせてごめんなさいね。近隣のお宅へのお詫びの品とお土産、運んでもらうから案内してやってもらえる?」
馬車は2台あった。どちらにも厳重に梱包された荷物が乗っている。
ミュゼの言葉と同時に、後ろの馬車から先日ミュゼを迎えに来た2人と、屈強な男達が下りてきた。筋肉の目立つ肌が浅黒く焼けた巨体である。
クロードはやや圧倒されそうになるも、
「承知しました。ではどうかあちらから」
と勝手口に案内する。
ミュゼは御者に紙幣を数枚渡す。
「ご苦労様」
「そ、総括……多過ぎです」
「良いの、彼らと飲みにでも使って頂戴」
「! ではありがたく」
と受け取ってははーっと頭を下げた。そんなやり取りを見ていた侍女や侍従達は、
「あんな金ポンと渡せるなんて……」
「本当にシル総合のエライさんなのね……」
と後で顔を寄せ合い、
「……もし来年離婚が成立したら、この屋敷どうなるんだよ……」
「侯爵様とルース様で、維持できると思うか? こう言っちゃ何だが、お2人共資産の管理出来るとは思えないんだよな……」
「しっ、声がでかいぞ」
と、不安そうに囁き合ったのだった。
ミュゼが自室でだらーっとしていると、コンコン、と控えめなノックの音がした。ごく当たり前の事なのにミュゼは『あらま、珍しい』とちょっと驚く。
いつもなら借金取りがするような遠慮のない叩き方で、返事する前に勝手に入って来るまでがワンセットなのに。
今も扉の向こうで、
「お休みの処申し訳ありません。奥様、ルミカ様がお食事を御一緒したいとの事ですがいかがいたしましょう」
控えめな声で用件を伝えてくる。
―――へぇ……あのお嬢さんがねぇ……
一緒に食卓についていても、ルミカが話すのはルースや侍女とだけで、ミュゼなどいないもの扱いなのに。
最初の頃こそルースが水を向けてくれていたが、決まってルミカが割って入って来てルミカ中心に戻ってしまうので、最近はルースにも放置状態だった。
そんな彼女が自分からミュゼを誘う。裏を勘繰りたくもなる。が、
「ルミカさんには行きますと伝えてちょうだい」
「かしこまりました」
まぁ乗ってやろうか。
「あ、あの……ミュゼさん」
「なぁに?」
予想に反し、食事は穏やかに進んでいた。会話もしたが主に料理の味についてで、特に嫌味やマウントを取る様子もない。
―――料理にも細工された様子もないし……
ミュゼは食べ物を使って何かする人間が大嫌いだ。以前新入りの弁当をひっくりかえして踏みつけた工員の胸倉を、掴んで威圧した事もあるほど。それを侯爵邸でしなかったのはそれ系の嫌がらせだけはなかったからだ。
―――椅子も普通に座れたわね
以前座ろうとしたら、控えの侍女が嫌なニヤニヤ笑いを浮かべていたので代わりに荷物を置いてみたところ、ガタッと椅子の足が折れ床につぶれた事があったので警戒していたが。
あまりに今までと違い過ぎな事に妙な気分になっていた処で、ルミカが口を開いたのだ。
何を言い出すのやらと思っていたら、思い切ったように言い出した。
「サ、サイモンさんの……好きな女性のタイプって、知ってますか?」
この間は騒がせてごめんなさいね。近隣のお宅へのお詫びの品とお土産、運んでもらうから案内してやってもらえる?」
馬車は2台あった。どちらにも厳重に梱包された荷物が乗っている。
ミュゼの言葉と同時に、後ろの馬車から先日ミュゼを迎えに来た2人と、屈強な男達が下りてきた。筋肉の目立つ肌が浅黒く焼けた巨体である。
クロードはやや圧倒されそうになるも、
「承知しました。ではどうかあちらから」
と勝手口に案内する。
ミュゼは御者に紙幣を数枚渡す。
「ご苦労様」
「そ、総括……多過ぎです」
「良いの、彼らと飲みにでも使って頂戴」
「! ではありがたく」
と受け取ってははーっと頭を下げた。そんなやり取りを見ていた侍女や侍従達は、
「あんな金ポンと渡せるなんて……」
「本当にシル総合のエライさんなのね……」
と後で顔を寄せ合い、
「……もし来年離婚が成立したら、この屋敷どうなるんだよ……」
「侯爵様とルース様で、維持できると思うか? こう言っちゃ何だが、お2人共資産の管理出来るとは思えないんだよな……」
「しっ、声がでかいぞ」
と、不安そうに囁き合ったのだった。
ミュゼが自室でだらーっとしていると、コンコン、と控えめなノックの音がした。ごく当たり前の事なのにミュゼは『あらま、珍しい』とちょっと驚く。
いつもなら借金取りがするような遠慮のない叩き方で、返事する前に勝手に入って来るまでがワンセットなのに。
今も扉の向こうで、
「お休みの処申し訳ありません。奥様、ルミカ様がお食事を御一緒したいとの事ですがいかがいたしましょう」
控えめな声で用件を伝えてくる。
―――へぇ……あのお嬢さんがねぇ……
一緒に食卓についていても、ルミカが話すのはルースや侍女とだけで、ミュゼなどいないもの扱いなのに。
最初の頃こそルースが水を向けてくれていたが、決まってルミカが割って入って来てルミカ中心に戻ってしまうので、最近はルースにも放置状態だった。
そんな彼女が自分からミュゼを誘う。裏を勘繰りたくもなる。が、
「ルミカさんには行きますと伝えてちょうだい」
「かしこまりました」
まぁ乗ってやろうか。
「あ、あの……ミュゼさん」
「なぁに?」
予想に反し、食事は穏やかに進んでいた。会話もしたが主に料理の味についてで、特に嫌味やマウントを取る様子もない。
―――料理にも細工された様子もないし……
ミュゼは食べ物を使って何かする人間が大嫌いだ。以前新入りの弁当をひっくりかえして踏みつけた工員の胸倉を、掴んで威圧した事もあるほど。それを侯爵邸でしなかったのはそれ系の嫌がらせだけはなかったからだ。
―――椅子も普通に座れたわね
以前座ろうとしたら、控えの侍女が嫌なニヤニヤ笑いを浮かべていたので代わりに荷物を置いてみたところ、ガタッと椅子の足が折れ床につぶれた事があったので警戒していたが。
あまりに今までと違い過ぎな事に妙な気分になっていた処で、ルミカが口を開いたのだ。
何を言い出すのやらと思っていたら、思い切ったように言い出した。
「サ、サイモンさんの……好きな女性のタイプって、知ってますか?」
33
あなたにおすすめの小説
疑惑のタッセル
翠月 瑠々奈
恋愛
今、未婚の貴族の令嬢・令息の中で、王国の騎士たちにタッセルを渡すことが流行っていた。
目当ての相手に渡すタッセル。「房飾り」とも呼ばれ、糸や紐を束ねて作られた装飾品。様々な色やデザインで形作られている。
それは、騎士団炎の隊の隊長であるフリージアの剣にもついていた。
でもそれは──?
【短編】お姉さまは愚弟を赦さない
宇水涼麻
恋愛
この国の第1王子であるザリアートが学園のダンスパーティーの席で、婚約者であるエレノアを声高に呼びつけた。
そして、テンプレのように婚約破棄を言い渡した。
すぐに了承し会場を出ようとするエレノアをザリアートが引き止める。
そこへ颯爽と3人の淑女が現れた。美しく気高く凛々しい彼女たちは何者なのか?
短編にしては長めになってしまいました。
西洋ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。
安らかにお眠りください
くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。
※突然残酷な描写が入ります。
※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。
※小説家になろう様へも投稿しています。
元恋人が届けた、断りたい縁談
待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。
手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。
「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」
そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる