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最終章 まさかの展開
気付かれない変化~リュドミラ小侯爵ルース+変化する使用人達~
しおりを挟む《ルース視点》
「ルース! どうしてサイモン様を止めてくれなかったの? せっかく一緒にお茶出来るチャンスだったのに!」
ルミカが僕に食って掛かる。
「仕方ないだろう? 彼はミュゼの仕事の為に出入りしているのだから」
「そんなの知らないわよ! 私がサイモン様とお話がしたいのっ!」
……ルミカ、君は何を言ってるんだ?
最初に説明したはずだ。『ミュゼがしばらく家に居る事になった。でもゆっくりは出来ない。王家から受けている仕事があるから。
だから君に会いに来るなんて事はないから、安心して? それから仕事仲間という知らない人間が出入りする事になったけど、気にしなくて良いそうだ。でも君が不安ならこの部屋には近寄らないよう気を付けるように言うから』
そんな感じだったと思う。
王家から受けている仕事って言ったのに“そんなの知らない”って……それで済む訳ないじゃないか。
貴族なら当然の事が、どうして分からないんだ……?
その顔は僕が知らなかったルミカだった。長い間ずっと一緒にいたのに、こんな彼女を僕は知らない。
それもこれも、原因はミュゼだ。あんな男を出入りさせるから。
そりゃあ……、魔道具を通してあの仕事モードを見てからはやや彼女を見直した。
けど男に命令したり対等に話すなんて変だ。女性は慎ましく男の後に控え、影から支えるものだ。特に僕はリュドミラ侯爵の子息で、“薔薇の貴公子”なんだから。
父上は『この機会に関係を深めなさい』って言っているけど僕はミュゼと仲良くなんて出来ると思えない。僕に相応しい女性は外にもいくらでもいるのだから。
そんな事を愚痴りたい気分なのに、ルミカは僕を気にかける様子もなく、
「はあう~、サイモン様は、今日も素敵だったわ……! ミュゼさんは『子供と軟弱者が嫌い』なんて言ってたけど、私の気持ちが届けばきっと、私を誰よりも愛してくれる……!」
頬を赤らめ焦点の合わない目で、変な妄想を語り続けている。
何でだよ? 僕と“お似合い”って言われて喜んでいたじゃないか。僕の方がずっと大切にしてきたのに……。
―――僕らの仲は……こんな事でヒビが入る程度じゃないだろう?
ルミカ、ルミカ……僕の方を見てよ。
《使用人達視点》
「なぁんか最近のルミカ様、変じゃない?」
休憩時間。厨房の隅に置かれたテーブルに、集まった使用人達がお茶やお菓子片手に喋っている。
「だよね! ルース様を差し置いてミュ、奥様の仕事相手に粉かけるなんて変! おかしい! あり得ない」
「お似合いのカップルだと思っていたのに……何か幻滅ぅ……」
この屋敷で働く彼らにとって、ルースとルミカは“癒し”だった。
病弱ではかなげな美少女と、美形のルースが並ぶと非常に絵になるのだ。ルースが何を放っても青い顔をしているルミカの元へ駆けつける姿は彼らにとってロマンス小説のワンシーンのように感涙を誘う。
それが……最近、崩れだした。原因はミュゼの仕事仲間であるサイモンだ。
美形と言う点ではルースと同じだがタイプが違う。サイモンは大人の色気と野性味を感じさせるタイプ。そんな彼に、ルミカが心変わりしようとしている。
「……最近思うんだけど、ルミカ様って実質平民でしょ? お情けで侯爵家のお世話になっているだけの居候だよね」
サイモンがルミカを“ザッコ元男爵令嬢”と呼ぶ為、もはや事実として定着してしまった。
「うち一応子爵家だけど所詮名前だけだから、四女の私はここに働きに来たんだけど……身分だけ考えたら、ルミカ様は私より下って事だよね?」
「それな! ……てかルミカ様って今までただの居候だったのにどうしてルース様が結婚した時点で、まだこの屋敷にいるの?」
「そもそもがお父様が部下で優秀だっただけでしょう? 父親が部下なんだから、娘だって同じポジで良いじゃん」
自分達と同じ侍女として雇うという手があったはずだ。
「最初は大旦那様もそのつもりだったみたいだけど、ルース様に“ルミカは病弱だからそんな事出来ない!”って言われて今に至るんだ―――って聞いた」
「それでも別に、ここで面倒見る必要あったの? 別の家に養女にしてもらえば良かったんじゃない?」
「それもルース様がごねたみたいよ。“僕はルミカの王子様だから!”とか何とか。で、大旦那様も渋々承知したみたい」
「げー、その時は子供だったから仕方ないけど……」
変化は小さいさざ波のように、広がりつつあった。
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