ミュゼ・シルフィーの結婚の行方

みけの

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最終章 まさかの展開

広まる推し変現象④

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 「で、そこからどうして、私と話をする展開になるんでしょうか」

 ルースが結婚に不満だった原因は分かった。が、ならば話すのはミュゼにではなく父であるリュドミラ侯爵だと思うのだが。

 もしかして、ミュゼから結婚が難しいと言って欲しいとか? だがこの結婚は王命だ。そんなに簡単にはいかない。

 ルースに今出来る事は、来年に迎える離婚と言う契約解除の日に備え、侯爵家の事情を踏まえた上で納得してくれる次の結婚相手を準備する事位だ。もしくは彼自身が収入を得る手段を得る事。だがそれは先程サイモンにダメ出しされたところだ。

―――もしくはトラブった?

 だが、今のところ屋敷の使用人と部下が揉めたという報告もない。ルースとルミカの仲に割って入る邪魔者と認識されているミュゼの部下に、ここの使用人達がちょっかいをかける事も予想はしていた。そこも考慮した上の人選だ。

―――――だが、サイモンを含め……それが推し変の切っ掛けでもあったのだが。

 ミュゼの問いに、ルースはすぐには答えなかった。

 膝に置いた両手は握られた形で震えている。そして額にじっとりと汗をかき、あちこちに目を泳がせるという動作を繰り返す。

 その様子に“薔薇の貴公子”として、社交の場で常に美しい所作だけを見せていた彼と同一とは思えない。

 しかし、このままでは進まないと悟ったのか、ギュッと目を閉じたかと思うと、

「確かに君との結婚が僕は不満だった! 嫌だった! その気持ちを君よりもルミカを優先する事で晴らそうとしたんだ! 無下に扱ってやれば傷つくと思ったから! 傷ついた君を見れば少しは気持ちが晴れると思ったんだ!
 その為なら使用人達が君に嫌がらせを繰り返すのも黙認したし、君の対処にも文句を言った! そうする事で君が傷ついて、僕に縋りつくようになれば良いと思ったんだ!」

 それはルースが、初めて吐露する激情だった。

ずっと幸せでいた場所から突然自分の意思に沿わない立場に置かれ、そうしなさいと周りに強要された事に対する不満。

 やり切れなさをぶつける対象が欲しかった。

 そうしても良いと思った相手がミュゼだった。


「………へぇ~………」


と、小さくもない誰かの声が聞こえた途端、室内の温度が急降下した。
ルースの全身に、その場にいる者全員の視線が射殺さんばかりに突き刺さる。

――――だが、

「まぁ、良いじゃねぇか」

と、サイモンが軽い調子で言うと、嘘のように静まった。

 それにルースが安堵し息をつくが、それが間違いであった事を証明するようにサイモンの言葉が続く。

「侯爵家のぼくちゃん―――失礼、ご子息様や、その考えに染まり切ったバ、いや使用人の方々の思惑や、その所業がどれ程だったとしても姐さんや俺らにゃ餓鬼の悪戯程度だ。命の取り合いっこにゃ至らねぇ。

 この国の中枢を担うお貴族様である筈なのにその程度の稚拙? いや幼稚? なお頭(つむ)だった事だけは、感謝しないといけねぇなぁ」

「!!」
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