43 / 66
最終章 まさかの展開
やっと見れた! ……でも喜べない
しおりを挟む
「侯爵家のぼくちゃん―――失礼、ご子息様や、その考えに染まり切ったバ、いや使用人の方々の思惑や、その所業がどれ程だったとしても姐さんや俺らにゃ餓鬼の悪戯程度だ。命の取り合いっこにゃ至らねぇ。
この国の中枢を担うお貴族様である筈なのにその程度の稚拙? いや幼稚? なお頭(つむ)だった事だけは、感謝しないといけねぇなぁ」
「!!」
サイモンの言葉は、生まれてからずっと侯爵令息として生きて来たルースには痛烈に響いたようだ。俯いていて顔は見れないが、膝でギュッと握った拳の震えと耳が真っ赤になっている事で分かる。
それでもようやく顔をあげ、ミュゼにまっすぐな視線を向けた。そして、
「……わ、悪かったと、思っている。いや、思うようになったんだ……。
でも君は結婚後もいつも僕の前では……言い方は悪いけど、だらーっとしていたし。そのクセ、僕が色々言っても『分かりました』しか言わないし、ルミカや使用人達に出しゃばった事もしない。彼らの分かりやすい嫌がらせにも全く傷ついた様子もなくて」
と、ルースが言う最中にも
“文句がないなら別に良いじゃん”
“サイモンの兄貴もさっき、悪戯程度って言ったしなぁ”
“まぁ小侯爵サマの奥さん的にゃ、だらけていたら問題だけど姐さんだぞ? 金入れてくれるんだから、だらける位でなぁ……”
“ならいっそ自分が姐さんに替わって家仕切ったらいーんじゃね? どうせ暇なんだし”
“自称幼馴染とネンゴロにする事しか頭にねーじゃねぇの”
という情け容赦ない囁きが、絶えずルースの耳を攻撃した。
ルースなりに覚悟を決めて、ここに来たのだ。
しかし……覚悟が足りなかったと、じわじわと実感する。自分の住む屋敷と言えど、ミュゼがいるこの部屋だけは敵地なのだと。
自分が侯爵家の跡取りだという最強のカードさえ、彼らには通じない。むしろ想定外の反撃に遭う予感しかない。
全身を針で突かれているような居心地の悪さに、本音を言えば逃げ出したい。顔をあげ、ミュゼと目を合わせるだけでも精いっぱいだ。
そんな自分の考えの激アマさに、後悔していたら……
「―――で、どうしてここに来たのですか?」
ルースを見るミュゼの目だけは、あくまで平静だった。
それは入って来た時と同じ。今までずっと、自分の胸の内を吐露し続け、周りからは呆れや侮蔑の声が上がっていたのに。
―――これが……彼らが信を置くミュゼなのか。
「つ、つまり、その……、貴女から見た父の印象を聞きたいんだ。
貴方との契約である来年までに、領地を立て直せると父は言っていたが……なのに僕に君を落せと唆す。本当に立て直せるなら、そんな事は言わない筈だ。そこで……父がそこまで出来るのかと、疑わしくなった。なので………。
教えてくれないか? 父はリュドミラ侯爵としての器なのか?」
そう尋ねるルースの心には、まだ一片の希望があったのだろう。
父はルミカを引き取って、世話する事を許してくれた。そんな父なら当然、何かトラブルがあったとしても、それを想定した上で備えも万全にしていたはずだ。詐欺にあって多少被害を被っていても、挽回できるはずだ。
しかし……ミュゼから出た言葉は
「………………それぶっちゃけマジで言いたくない奴…………………!」
今初めて、ミュゼが頭を抱えて顔を顰めた。
以前のルースならそれに“やってやった!”と快哉をあげたと思う。ずっとミュゼの困った顔を見たかったから。
だが皮肉にも、その要因は自分の父の能力に対しての事だった。
その事実にルースは喜ぶべきか嘆くべきかと悩んだのだった。
この国の中枢を担うお貴族様である筈なのにその程度の稚拙? いや幼稚? なお頭(つむ)だった事だけは、感謝しないといけねぇなぁ」
「!!」
サイモンの言葉は、生まれてからずっと侯爵令息として生きて来たルースには痛烈に響いたようだ。俯いていて顔は見れないが、膝でギュッと握った拳の震えと耳が真っ赤になっている事で分かる。
それでもようやく顔をあげ、ミュゼにまっすぐな視線を向けた。そして、
「……わ、悪かったと、思っている。いや、思うようになったんだ……。
でも君は結婚後もいつも僕の前では……言い方は悪いけど、だらーっとしていたし。そのクセ、僕が色々言っても『分かりました』しか言わないし、ルミカや使用人達に出しゃばった事もしない。彼らの分かりやすい嫌がらせにも全く傷ついた様子もなくて」
と、ルースが言う最中にも
“文句がないなら別に良いじゃん”
“サイモンの兄貴もさっき、悪戯程度って言ったしなぁ”
“まぁ小侯爵サマの奥さん的にゃ、だらけていたら問題だけど姐さんだぞ? 金入れてくれるんだから、だらける位でなぁ……”
“ならいっそ自分が姐さんに替わって家仕切ったらいーんじゃね? どうせ暇なんだし”
“自称幼馴染とネンゴロにする事しか頭にねーじゃねぇの”
という情け容赦ない囁きが、絶えずルースの耳を攻撃した。
ルースなりに覚悟を決めて、ここに来たのだ。
しかし……覚悟が足りなかったと、じわじわと実感する。自分の住む屋敷と言えど、ミュゼがいるこの部屋だけは敵地なのだと。
自分が侯爵家の跡取りだという最強のカードさえ、彼らには通じない。むしろ想定外の反撃に遭う予感しかない。
全身を針で突かれているような居心地の悪さに、本音を言えば逃げ出したい。顔をあげ、ミュゼと目を合わせるだけでも精いっぱいだ。
そんな自分の考えの激アマさに、後悔していたら……
「―――で、どうしてここに来たのですか?」
ルースを見るミュゼの目だけは、あくまで平静だった。
それは入って来た時と同じ。今までずっと、自分の胸の内を吐露し続け、周りからは呆れや侮蔑の声が上がっていたのに。
―――これが……彼らが信を置くミュゼなのか。
「つ、つまり、その……、貴女から見た父の印象を聞きたいんだ。
貴方との契約である来年までに、領地を立て直せると父は言っていたが……なのに僕に君を落せと唆す。本当に立て直せるなら、そんな事は言わない筈だ。そこで……父がそこまで出来るのかと、疑わしくなった。なので………。
教えてくれないか? 父はリュドミラ侯爵としての器なのか?」
そう尋ねるルースの心には、まだ一片の希望があったのだろう。
父はルミカを引き取って、世話する事を許してくれた。そんな父なら当然、何かトラブルがあったとしても、それを想定した上で備えも万全にしていたはずだ。詐欺にあって多少被害を被っていても、挽回できるはずだ。
しかし……ミュゼから出た言葉は
「………………それぶっちゃけマジで言いたくない奴…………………!」
今初めて、ミュゼが頭を抱えて顔を顰めた。
以前のルースならそれに“やってやった!”と快哉をあげたと思う。ずっとミュゼの困った顔を見たかったから。
だが皮肉にも、その要因は自分の父の能力に対しての事だった。
その事実にルースは喜ぶべきか嘆くべきかと悩んだのだった。
35
あなたにおすすめの小説
疑惑のタッセル
翠月 瑠々奈
恋愛
今、未婚の貴族の令嬢・令息の中で、王国の騎士たちにタッセルを渡すことが流行っていた。
目当ての相手に渡すタッセル。「房飾り」とも呼ばれ、糸や紐を束ねて作られた装飾品。様々な色やデザインで形作られている。
それは、騎士団炎の隊の隊長であるフリージアの剣にもついていた。
でもそれは──?
【短編】お姉さまは愚弟を赦さない
宇水涼麻
恋愛
この国の第1王子であるザリアートが学園のダンスパーティーの席で、婚約者であるエレノアを声高に呼びつけた。
そして、テンプレのように婚約破棄を言い渡した。
すぐに了承し会場を出ようとするエレノアをザリアートが引き止める。
そこへ颯爽と3人の淑女が現れた。美しく気高く凛々しい彼女たちは何者なのか?
短編にしては長めになってしまいました。
西洋ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。
安らかにお眠りください
くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。
※突然残酷な描写が入ります。
※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。
※小説家になろう様へも投稿しています。
元恋人が届けた、断りたい縁談
待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。
手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。
「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」
そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる