ミュゼ・シルフィーの結婚の行方

みけの

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最終章 まさかの展開

目撃者の証言

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※料理人見習の証言

―――ええ、厨房では夕食の仕込みの最中でした。

 皆バタバタとしていましたが、隅っこで休憩している侍女達の事は、皆ソワソワと気にしていました。ええ、俺も含めてです。

 何故かって? あの時いた子達は新入りばかりだったから、どんな子かなー? って興味があったんです。

 何か差し入れをもらった! って嬉しそうにしているのも、慣れない職場で苦労しているだろうと思って良かったな、って思ってました。
 
 でもあの子らが茶を飲もうと腰を下ろそうとした時、

『それ、サイモン様からのお土産よね?』

 って、あの子らの側にいつの間にかザッコ元男しゃ、いやルミカ様が立ってた。めっちゃビックリしたけど、侍女達はもっと驚いてました。あんたどうしてここにいるんだ!? って感じで。

 だってルミカ様は主達にとって大切なお方だ! ってそう、執事さんも言ってたから、こんな厨房に来るなんて思わなかったし。

 でも、何か病弱な人だって聞かされていたから、気分悪くなったのかなとか、何か飲みたくなったのかなって位にしか思わなかった。そこで、

『おい! 何ぐずぐずしてる』

 って料理長に怒鳴られたから、慌てて仕事に戻ろうとしました。そして鍋の様子を見ようとしたら聞こえて来たんです。あの騒ぎが。

『これはサイモン様が、私ら侍女に下さった差し入れです!』

 強い声で言いながら、入れ物を守るように抱える侍女と、

『何よ侍女の癖に! 私が欲しいって言ってるのに!』

って入れ物を力づくで奪おうとしているルミカ様。

 その後、どんどんヒートアップして、最後には掴み合いになりました。そこで厨房の皆が一斉に止めに入ろうとしたんですが、どっちも女だから、どうしようかって考えあぐねていたんです。

 そこで若奥様が止めて下さって、ホッとしました。


※八百屋(野菜の搬入元)からの証言

  ありゃあ俺が、ご注文の食材をお届けした後の事でした。

 お屋敷の裏口で、いつもみたいに注文書を確認してもらって認め印を押してもらった用紙をしまってそのまま帰ろうとしました。

 そしたら戸口にふらりと、女が入っていくのを見ました。上品な身なりだから、このお屋敷の方のご親戚かな? 程度に思っていました。

 しかし何年もここにお世話になってますが、あんなお人を目にした事はありませんでした。でも見た感じ、子供だと思いました。だって背丈はありましたがその……体つきが細っこすぎたので。

 その女の人は、侍女さん達と言葉にやり取りをしているようでした。ほんの2,3言葉を交わした後、侍女さんは手元の小皿に、何やらお菓子を少しだけ盛って渡そうとしました。

 でも……

侍女さんが目を離した隙に、女の人は素早く菓子を奪おうとしたんです。

 つまり…その……。

女の人、―――ルミカ様と言うのですか?―――は、侍女さんが渡そうとした皿じゃなく、

 テーブルに置いてあった菓子の器の方に、手を伸ばしたんです。

※侍女の証言

 ええ、私は確かにルミカ様の『頂けるかしら?』とのお言葉に従いました。

 でもそれはあくまで『お裾分け』だけで、まさか菓子箱全部寄越せなんて事だなんて思いませんよ、ええ全然!

 お菓子は焼き菓子でしたので、お茶がいるな、でも私達の飲むお茶は安物だから、別に淹れたものと一緒にお届けしようと思って

『何ならお茶とお持ちしますので、いったん部屋にお戻りください』

って言おうとしました。けどそれは言葉になる前に消えました。

―――ルミカ様は、差し出した小皿だけじゃなく、お菓子の入れ物も持って帰ろうとしたんです! 私達がもらったものなのに……。

 でもそこまでは、ルミカ様の事を多少ですが……信じていました。だから私達も仕事だと当たり障りない冗談で済まそうと、

『そっちではありませんわ』

って言って、器をルミカ様から遠ざけ、菓子の乗った小皿を目の前に推しだしました。

 これで帰ってくれると思いました。
どんな気の迷いでも、元はご令嬢だったお人が、人へのもらい物の菓子に手を付けるなんて真似しないだろう、って。

 でも、現実は全く違いました。驚きましたよ、ええ本当に!


 入れ物を持った私の腕を、ルミカ様は両手で掴んで力づくでもぎ取ろうとしたんです! すごい力でした! お疑いですか? ならこの腕を見てください! 袖の下でこの位跡が出来たんです!

 あの人が病弱? どんな冗談ですか! 

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