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最終章 まさかの展開
ルミカの心情
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「……とまあ、こんな証言が揃っているんだけど……」
その場にいた者達の話が終わった。
その内容にミュゼは呆れるべきか怒るべきかと少しだけ悩む。
――――けんかの原因がお菓子の取り合いって……子供かよ
が、今は事態を治める事が先決と、向かい側に座る相手に声をかけた。
「ルミカさん、何か申し開きがありますか?」
ミュゼに訊かれるも、ルミカは額から汗をダラダラ流しながら何も言えず俯いたままだ。
そんな彼女の頭の中では、ひたすら同じ言葉が繰り返されていた。
~ルミカ視点~
――――まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい………!
―――最悪の場面を見られてしまった。
サイモン様からの差し入れというお菓子がどんなものかが気になって、初めて厨房に足を運んだ。
仕事中だからか、シェフも料理人達も動き回っていて、私の事に気が付かない。
誰も彼も厳しい表情で目の前の事に没頭している。様々な作業に取り組む彼らを見て、私は自然に顔を顰めていた。
―――何て醜いのかしら
どれもこれも、あんなに真剣にするべき仕事には思えない。切ったり洗ったり煮たり焼いたり。見てるだけで大した事じゃないと分かるのに、そこまで真剣にするのはどうして? って不思議だったけど、答えはすぐに出た。
―――この人達が、バカばかりだからね。
だってこんな作業をする仕事に就く人が頭が良い訳ないもの。バカだから必死にならないと出来ないんだわ、気の毒ね。
でもバカなのは自分のせいですもの、仕方無いわよね。
そんな事を考えつつ、目的のものを探していると……。
―――あった。
厨房の片隅に置かれた貧相なテーブルセット。その上に目当てのものが置かれていた。
でもそれを囲んでいるのは……
『おいしそう! しかも綺麗!』
『さすがサイモン様! 美形は気配りも違うわぁ……』
馬鹿みたいに浮かれた侍女達だった。
その光景に沸々と怒りが湧いた。
どうして彼女らが、サイモン様に贈り物をもらえるの? 私は一度も頂いていないのに。
そんな私に気付く事もなく、彼女らはカップにお茶を注いでいる。
つまり……これからあのお菓子が、彼女らの口に入るのだ。
―――間違っているわ。
彼女らがここで休憩するという事は、今せわしなく働いている彼らと同等って事でしょう?
つまり、体を懸命に動かす事しか出来ないバカと同類って事。そんなバカがサイモン様の贈り物を口に入れるなんて、身の程知らずも良いところよ!
それをもらえるのは私こそふさわしいのに。
と、思ったから彼女らに近づいて、『頂けるかしら?』って彼女らの気持ちを推し量ってあげたわ。本来なら『寄越しなさい』と言うかもだけど、お菓子を取られる事で、悲しい気持ちになるのを分かっていたから、敢えて言い方を変えたの。親切にね。
でも侍女の癖に、いえ侍女程度のヤツだからかしら? 私の要求を正確に取らなかったみたいで、お菓子の入った器を引き寄せようとした私を妨害した。
『そっちではありませんわ』
とか言って、私からお菓子を遠ざけた。
―――そこからは……記憶にない。
怒りのままに暴れていたら、突然、脳天をゴツッと殴りつけられた。
体が勝手に動きを止める。見れば私に逆らってた侍女も同じように頭を抱えているわ。ふん、いい気味! ざまぁよね!! って嘲笑おうとした私の耳を……冷え切った声が貫いた。
「食べ物を粗末にするな」
ミュゼさんが私達を、冷え切った視線で見下ろしていた。
その場にいた者達の話が終わった。
その内容にミュゼは呆れるべきか怒るべきかと少しだけ悩む。
――――けんかの原因がお菓子の取り合いって……子供かよ
が、今は事態を治める事が先決と、向かい側に座る相手に声をかけた。
「ルミカさん、何か申し開きがありますか?」
ミュゼに訊かれるも、ルミカは額から汗をダラダラ流しながら何も言えず俯いたままだ。
そんな彼女の頭の中では、ひたすら同じ言葉が繰り返されていた。
~ルミカ視点~
――――まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい………!
―――最悪の場面を見られてしまった。
サイモン様からの差し入れというお菓子がどんなものかが気になって、初めて厨房に足を運んだ。
仕事中だからか、シェフも料理人達も動き回っていて、私の事に気が付かない。
誰も彼も厳しい表情で目の前の事に没頭している。様々な作業に取り組む彼らを見て、私は自然に顔を顰めていた。
―――何て醜いのかしら
どれもこれも、あんなに真剣にするべき仕事には思えない。切ったり洗ったり煮たり焼いたり。見てるだけで大した事じゃないと分かるのに、そこまで真剣にするのはどうして? って不思議だったけど、答えはすぐに出た。
―――この人達が、バカばかりだからね。
だってこんな作業をする仕事に就く人が頭が良い訳ないもの。バカだから必死にならないと出来ないんだわ、気の毒ね。
でもバカなのは自分のせいですもの、仕方無いわよね。
そんな事を考えつつ、目的のものを探していると……。
―――あった。
厨房の片隅に置かれた貧相なテーブルセット。その上に目当てのものが置かれていた。
でもそれを囲んでいるのは……
『おいしそう! しかも綺麗!』
『さすがサイモン様! 美形は気配りも違うわぁ……』
馬鹿みたいに浮かれた侍女達だった。
その光景に沸々と怒りが湧いた。
どうして彼女らが、サイモン様に贈り物をもらえるの? 私は一度も頂いていないのに。
そんな私に気付く事もなく、彼女らはカップにお茶を注いでいる。
つまり……これからあのお菓子が、彼女らの口に入るのだ。
―――間違っているわ。
彼女らがここで休憩するという事は、今せわしなく働いている彼らと同等って事でしょう?
つまり、体を懸命に動かす事しか出来ないバカと同類って事。そんなバカがサイモン様の贈り物を口に入れるなんて、身の程知らずも良いところよ!
それをもらえるのは私こそふさわしいのに。
と、思ったから彼女らに近づいて、『頂けるかしら?』って彼女らの気持ちを推し量ってあげたわ。本来なら『寄越しなさい』と言うかもだけど、お菓子を取られる事で、悲しい気持ちになるのを分かっていたから、敢えて言い方を変えたの。親切にね。
でも侍女の癖に、いえ侍女程度のヤツだからかしら? 私の要求を正確に取らなかったみたいで、お菓子の入った器を引き寄せようとした私を妨害した。
『そっちではありませんわ』
とか言って、私からお菓子を遠ざけた。
―――そこからは……記憶にない。
怒りのままに暴れていたら、突然、脳天をゴツッと殴りつけられた。
体が勝手に動きを止める。見れば私に逆らってた侍女も同じように頭を抱えているわ。ふん、いい気味! ざまぁよね!! って嘲笑おうとした私の耳を……冷え切った声が貫いた。
「食べ物を粗末にするな」
ミュゼさんが私達を、冷え切った視線で見下ろしていた。
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