ミュゼ・シルフィーの結婚の行方

みけの

文字の大きさ
49 / 66
最終章 まさかの展開

ルミカの心情

しおりを挟む
 「……とまあ、こんな証言が揃っているんだけど……」 

その場にいた者達の話が終わった。

 その内容にミュゼは呆れるべきか怒るべきかと少しだけ悩む。

――――けんかの原因がお菓子の取り合いって……子供かよ

 が、今は事態を治める事が先決と、向かい側に座る相手に声をかけた。

「ルミカさん、何か申し開きがありますか?」

 ミュゼに訊かれるも、ルミカは額から汗をダラダラ流しながら何も言えず俯いたままだ。
 そんな彼女の頭の中では、ひたすら同じ言葉が繰り返されていた。

~ルミカ視点~

――――まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい………!

 ―――最悪の場面を見られてしまった。

 サイモン様からの差し入れというお菓子がどんなものかが気になって、初めて厨房に足を運んだ。

 仕事中だからか、シェフも料理人達も動き回っていて、私の事に気が付かない。
 誰も彼も厳しい表情で目の前の事に没頭している。様々な作業に取り組む彼らを見て、私は自然に顔を顰めていた。
  ―――何て醜いのかしら

 どれもこれも、あんなに真剣にするべき仕事には思えない。切ったり洗ったり煮たり焼いたり。見てるだけで大した事じゃないと分かるのに、そこまで真剣にするのはどうして? って不思議だったけど、答えはすぐに出た。

―――この人達が、バカばかりだからね。

 だってこんな作業をする仕事に就く人が頭が良い訳ないもの。バカだから必死にならないと出来ないんだわ、気の毒ね。

 でもバカなのは自分のせいですもの、仕方無いわよね。

そんな事を考えつつ、目的のものを探していると……。

―――あった。

 厨房の片隅に置かれた貧相なテーブルセット。その上に目当てのものが置かれていた。
 でもそれを囲んでいるのは……

『おいしそう! しかも綺麗!』

『さすがサイモン様! 美形は気配りも違うわぁ……』

 馬鹿みたいに浮かれた侍女達だった。

 その光景に沸々と怒りが湧いた。
どうして彼女らが、サイモン様に贈り物をもらえるの? 私は一度も頂いていないのに。
 そんな私に気付く事もなく、彼女らはカップにお茶を注いでいる。
つまり……これからあのお菓子が、彼女らの口に入るのだ。

―――間違っているわ。

 彼女らがここで休憩するという事は、今せわしなく働いている彼らと同等って事でしょう? 

 つまり、体を懸命に動かす事しか出来ないバカと同類って事。そんなバカがサイモン様の贈り物を口に入れるなんて、身の程知らずも良いところよ!

 それをもらえるのは私こそふさわしいのに。

と、思ったから彼女らに近づいて、『頂けるかしら?』って彼女らの気持ちを推し量ってあげたわ。本来なら『寄越しなさい』と言うかもだけど、お菓子を取られる事で、悲しい気持ちになるのを分かっていたから、敢えて言い方を変えたの。親切にね。

 でも侍女の癖に、いえ侍女程度のヤツだからかしら? 私の要求を正確に取らなかったみたいで、お菓子の入った器を引き寄せようとした私を妨害した。

『そっちではありませんわ』

 とか言って、私からお菓子を遠ざけた。

―――そこからは……記憶にない。

 怒りのままに暴れていたら、突然、脳天をゴツッと殴りつけられた。

体が勝手に動きを止める。見れば私に逆らってた侍女も同じように頭を抱えているわ。ふん、いい気味! ざまぁよね!! って嘲笑おうとした私の耳を……冷え切った声が貫いた。

「食べ物を粗末にするな」

 ミュゼさんが私達を、冷え切った視線で見下ろしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

疑惑のタッセル

翠月 瑠々奈
恋愛
今、未婚の貴族の令嬢・令息の中で、王国の騎士たちにタッセルを渡すことが流行っていた。 目当ての相手に渡すタッセル。「房飾り」とも呼ばれ、糸や紐を束ねて作られた装飾品。様々な色やデザインで形作られている。 それは、騎士団炎の隊の隊長であるフリージアの剣にもついていた。 でもそれは──?

【短編】お姉さまは愚弟を赦さない

宇水涼麻
恋愛
この国の第1王子であるザリアートが学園のダンスパーティーの席で、婚約者であるエレノアを声高に呼びつけた。 そして、テンプレのように婚約破棄を言い渡した。 すぐに了承し会場を出ようとするエレノアをザリアートが引き止める。 そこへ颯爽と3人の淑女が現れた。美しく気高く凛々しい彼女たちは何者なのか? 短編にしては長めになってしまいました。 西洋ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

安らかにお眠りください

くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。 ※突然残酷な描写が入ります。 ※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。 ※小説家になろう様へも投稿しています。

利害一致の結婚

詩織
恋愛
私達は仲のいい夫婦。 けど、お互い条件が一致しての結婚。辛いから私は少しでも早く離れたかった。

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

ジルの身の丈

ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。 身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。 ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。 同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。 そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で─── ※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。

6回目のさようなら

音爽(ネソウ)
恋愛
恋人ごっこのその先は……

処理中です...