ミュゼ・シルフィーの結婚の行方

みけの

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最終章 まさかの展開

サイモン様がロマール先生の……~ルミカ視点~

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 「え?」

ミュゼの一言に周りがざわついた。けど一番混乱しているのは私だ。

 エー・ロマール先生が、サイモン様とお付き合いがあった?

 「まぁ、だからあいつの書くヒーローはサイモンがモデルなんだけど」

「はぁ……あいつ、人の事勝手にネタにしやがって……!」

 人の悪そうにニヤリ、と笑うミュゼと、苦々しい顔でぼやくサイモン様。どんな表情も私を惹きつけて離さない。

でも……と、自分のがさついてしまった両手を見て思う。

―――こんなみっともない処ばかりを見られた私を、彼はもう好きになってくれないだろう。


 サイモン様を見た時、胸が高鳴った。こんな理想の殿方が実際にいるなんて! って。そこからはもう、頭の中がサイモン様で一杯になっちゃった。

 サイモン様に比べたら、ルースとしている事なんて子供の頃の延長のおままごと遊びにしか思えなくなった。


 ―――でも……

 こんなに好きなのに、サイモン様は私をあくまで“ザッコ元男爵令嬢”としか呼んでくれない。

ああ、何てつれないの……と、どれだけ涙で枕を濡らしたことか。でも、それのせいでやらかしてしまった。

 サイモン様から、あの侍女達がお菓子をもらっているのを見てキレてしまった。そこからは坂を転がり落ちるように、私を囲む状況は変わってしまった。

 下働きの侍女になって、目まぐるしく労働するばかりの私はちっとも、キレイでも可愛くもない。

それに加えてルース相手にした醜態迄、晒してしまった。

 こんな私が……サイモン様に興味を持ってもらえる事なんか、ない。

 そう思うだけで心が、奈落の底に落ちていくようだった。


 そんな絶望の中にいる私の頭上で、ミュゼの声がした。

 「……まあ今回は未遂だったから、不問にしましょうか」

 空気がざわつく。その場にいる全員が、耳を疑った。あちこちから反論があがる。

「お、奥様! それは甘過ぎます!」

「こやつは無礼にも、侯爵家ご当主様方を欺いてきたものですぞ! 情をかける価値などありません!」

 侍女長と執事が口々に文句を言っている。……以前は私の味方だったのに、人なんて当てになりやしない。

 彼らに続くように、

「そうです! 屋敷の財産をだまし取ろうとしたの、聞いたぞ!」

「しかも奥様とルース様の間に割って入り、邪魔し続けていたじゃないか! それがなければ奥様達はうまく行けてたのに!!」

 って、狭くない室内がブーイングが溢れるけど、

 「……そういう意味でなら、貴方達にも多少思う処はあるのよ」

 ジロ、とミュゼの冷ややかな視線が向けられた途端静かになる。その様子に笑いだしそうになるのを堪えた。

いい気味だわ。あいつらだって嫌がらせを実行したり、それを見ないふりしていたんだ。ざまーみろ! と思っていたら、

「……とにかく次はないから、今やるべき事をするのよルミカさん。もう、自分で稼ぐしかお金を得る方法はないのだから。……好きな人に近づく為にもね」

まるで私が考えていた事を見透かしたように言われてしまった。

 そこで返答に詰まる。

 自分の自由になるお金は欲しい、けど得られないなら稼ぐしかない。割り切れないけどそれが正しい、それは分かるわ。

でも……こんな仕事をずっと続けるのは……嫌だ。

私が悪いからだとしても、ここまでしなきゃいけないの? 

心も体も限界のズタズタで、なおもこの扱いが続くなら体より前に心が壊れてしまう。

 そこまでの事を、私はしたの?

「ところで、貴女。昼間にサイモンから差し入れをもらったのよね。その時どう思った?」

 ―――分かっているけど分かりたくない、けどこのままではいたくない、けどどうすれば良いのか分からない―――

って、けどけどを繰り返す私から視線を外し、ミュゼは私と喧嘩していた侍女に問いかける。

 いきなり振られた彼女は、何故私? って顔をしながらもたどたどしく答えた。

「? と、当然みんな、嬉しかったですよ。このお屋敷でそんな労いしてもらった事ありませんでしたので」

「そう、嬉しかったのね。……じゃあ、その後はどう思ったの?」

「当然お返しを何にしようかって思いました。抜け駆けって言われたくないから皆でになるけど」

 え、もらったらお返しをしなきゃいけないの?

 家族を亡くして、リュドミラ家に引き取られてからずっと、私は与えられる事はあってもそれを返した事は何もないわ。

でもまあ、侍女ごときならそんなものかしら……。

「何故かしら?」

「それは……嬉しい事をして頂けたから、その気持ちを返したいし、それに……」

「そうすればなお親しくなれるから?」

「え! ……えーっと……はい、そんな感じです……」

「それが切っ掛けで会話が増えたり、サイモンの好きなモノが何かが知れたり、どこかで会えば声をかけてくれたり?」 
 
「はい、それです!」

 ミュゼの例えが的を射てたのか、侍女は下心を堂々と認め……

「い、いやぁ……出来れば、です」

と、照れくさそうに胡麻化した。

 そんな彼女をよそに、私は初めて知る事実に驚いていた。

 プレゼントとは、私という人間の魅力に対しての報酬だって思っていた。ルースも色々くれたけど、それには『ありがとう』って笑うだけで良かった。

だから……

―――お返しをすれば少しでも親しくなれて、情報をもらえるの?


 初めて知った事実だった。


~※~※~※~※~※~※

すみません、夏風邪にかかったようなので火曜日の更新はお休みします<(_ _)>。
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