ミュゼ・シルフィーの結婚の行方

みけの

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最終章 まさかの展開

幼馴染2人の決別

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―――どうやら、食いついたようね。

 さっきまで絶望的な表情だったルミカの目に、小さい光が生まれている。それを確かめてミュゼは内心ニヤリと笑った。

 ミュゼがここで、侍女相手にした質問と応答。それは全てルミカに聞かせるものだった。

 ただ毎日疲れるだけの肉体労働。

 そこに称賛や自己肯定が入る余地はほぼない、ひたすら体力と精神力を削られるだけ。

しかし、そこにも喜びはある。

 例えばいつもは苦労して出来る仕事が、その日は呆気なく終わった時とか。

 ほんの小さな提案を、皆が認めてくれた末で達成された時に。

 が、ずっとお嬢様扱いだったルミカでは、その価値が分かるまでに神経が壊れてしまう。だから10日間という期間で様子を見ようと思ったのだが……逃亡だけでなく、金をだまし取ろうとするとは呆れた性悪っぷりだ。しかし安心出来る事もあった。

―――あれでルース様はルミカへの未練が切れたみたいね。

 ミュゼの耳でも分かる程、拒否する言葉もしっかりしたものだった。そして、

「ミュゼ、本当に良いのか? もし僕に気を使っているなら必要ない」

  声をかけられ、おや? と思う。

 あら……私に気遣ってくれているのかしら? 珍しい。

とミュゼの思っていたのが顔に出たのか、

「ぼ、僕だって色々考えているさ!」

「いやそんな大声出さなくても聞こえます」

「ご、ごめん……!」

 つい大声を出してしまった事を詫びてから、ルースは次にルミカに近づいた。
 
そして跪き彼女とまっすぐ目を合わせた。そしてルミカのボロボロになった手を両手で包みこむ。

「ルミカ……僕らに、変わる時が来たんだ。離れて自分の人生を歩んでいかなきゃいけない」

「……ルース?」

 ルミカが驚いたように目を見開く。

 彼女が今見ているのは、今まで知らなかったルースだ。出会ってからずっと、自分を守ってくれる騎士だったルース。侯爵子息と男爵令嬢なんていう、世間の目などを気にする事無く、ルミカをいつもお姫様扱いしてくれていた、―――都合の良い“トモダチ”。

 でもそんな彼は、自分を突き放そうとしている。

そこにまず思ったのは―――

「………裏切るの?」

 信じていたのに、この裏切り者! とキッと睨むルミカにルースは苦笑を浮かべていた。しかしそれはどこか、自嘲しているようにも見える。

「裏切るか……。さっきまで僕を利用して、金を巻き上げようとしていた人の言葉とは思えないね。

こんな事を言えば、僕が責任逃れをしていると思うだろうけど事実だから言わせてもらう。

 先に裏切ったのは君の方だよルミカ。僕に親を騙せと言った時点で、僕の中にあった、君への情は消えたんだ。

 君が病弱だと言う言葉と、目の前で嘆いている様子を見て……僕が守ってあげなきゃと思った。
だからあらゆる無理を通して、君を特別扱いにし続けていた。僕自身が“薔薇の貴公子”なんて言われて、誰からも請われる立場だったからそれを通すのは楽だった。――今では後悔しているけどね。
でも君と一緒にいられて、楽しいと思った思い出も確かにあった。だから僕1人だけでも味方になろう、って思ったけど間違いだった」

「え」

「ミュゼが、いやシルフィー卿が、今回だけは不問にすると言ってくれたんだ、後9日頑張れば、次は少しだけ楽な仕事にしてもらえる。

大丈夫だよ、離れていても君を大事に思う気持ちは変わらないから」

「な、何よ何よ何よ!! 要するに私を見捨てるんでしょう? 

私の事ずっと一番だって言っておいて、都合が悪くなったからって見捨てるなんて! 

 何とも思わないの? 良心はないのルース、あなたはこれからずっと……ずっと後悔し続けるわ! 耐えられる?」

 これが最後のチャンスよ! とルースの良心に訴えるルミカ。これだけ言えば、彼だけは味方になってくれる。

―――そう思ったのに。

「ずっと、君を見捨てた男として苦しむ? そんな筈ないよ。むしろやって良かったって思うだけだ」

“薔薇の貴公子”と称される、華やかなその顔を笑顔が彩った。
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