1 / 27
プロローグ
しおりを挟む
ステンドグラスからの光が、暗い教会の中を照らす。
この日の為に集まった、僕と同じ10歳の子供達。彼らもきっと今の僕のように、恐いようなワクワクするような気持で並んでいるんだろう。――当然だ。
今日は僕らにとって、一生のかかった運命の日だから。
この世界では全ての人が、10歳になると神様からスキル・アイテムを授かる。
スキルとはその呼び名の通り、技能だ。アイテムはそれに使用する道具。それが何かによって、僕らが向いている能力が決まるのだ。大抵は職業に通じるものが多い。
ごくごくたまに複数持ちとか、レアスキルと言って“神官”とか“聖女”を示す杖とか錫杖とか出る時もあるけど、本当にたまにだ。
――なら、他の仕事は出来ないのか、って?
やれば出来るけど、大抵は半端止まりで趣味から出ない。やりたい事が別にある人には嫌なものだろうけど、ない人間にはありがたい。色々に手を付け、失敗を繰返す時間が省けるからだ。まぁアイテムがあったらあったで、同業と鎬を削るのは不可欠だからそれなりに障害はあるんだけど。
僕の番まではまだありそう。少しだけ体をずらし、祭壇の方を眺めてみた。
今、祭壇に立っているのは女の子だ。着ている服のくたびれ具合から見て、あまり裕福では無いお家の子のようだ。神父さまが促す。
「さあお嬢さん、聖水に手を入れなさい」
言われるままに、女の子が腕を大きな瓶に入れた。
パアッ!
瓶が発光し、白い球体が空中に出現した。それはやがて女の子の前で止まる。
光が消え、形になった。
それは彼女がやっと抱えられる位の大きさの箱だった。普通の木工細工の箱。空かさず神父様が鑑定。それが何かを明かした。
「神が貴女に下されたスキルは裁縫です」
「え~?」
すぐ仕事に出来るという点では当たり、だ。でも女の子は不服らしく、ぷくっと頬を膨らませている。
「踊り子さんとかが良かったなぁ……」
「これっ、贅沢言わないの、神様が下さったものなんだからね」
「裁縫なら、仕事は引く手あまただろう?」
待っていた両親が、ブスッとした女の子をたしなめているけど、ホッとしているのは明らかだ。踊り子だと衣装とかどっかに弟子入りとか、手間もお金もかかるしね。
その後も、喜んだりガッカリしたりが繰返される。
そして、僕の番が回ってきた。目の前の瓶を改めて見る。遠目で見るより中は深くなさそうだ。
「聖水に手を入れなさい」
言われるままに、手を入れた。ちゃぷん、と付けた感じは熱くも無く冷たくもない、普通の水だ――と思っていたら。
水面がゆらり、と動いた。そしてパッと発光し……光の玉が現れる。けど……何か、小さい。女の子の時は抱える程だったのに、今度は両手の平に収まりそうな大きさだ。
(……何だろう……?)
光が消え、物体が現れた。
それは――。
「こ、これは……!?」
鑑定した神父様がよろけた。そこままドスッと腰から倒れる。それでもなお、驚きの収まらない顔で僕の手の平にある、小さい箱を凝視する。
「神父様……あの……僕のスキル・アイテムは?」
僕が訊くと、ハッと我に返った神父様。まず僕に“落ち着いて聞いて下さい”と念を押す。いや……落ち着いて欲しいのは、神父さんになんだけど。
そう、呑気に思っていた僕に、神父様の言った答えは……。
「…………“オリガミ”、です……」
ざわつく室内。
「なんだ? オリガミって」
「透明の箱に小さい正方形の紙が入ってるだけじゃないか」
ヒソヒソと囁く声。それは全て疑問形で、答える人は誰もいない。
――でも僕は知っている。これがどう使う物なのかを。
ずっと――生まれる前から。
この日の為に集まった、僕と同じ10歳の子供達。彼らもきっと今の僕のように、恐いようなワクワクするような気持で並んでいるんだろう。――当然だ。
今日は僕らにとって、一生のかかった運命の日だから。
この世界では全ての人が、10歳になると神様からスキル・アイテムを授かる。
スキルとはその呼び名の通り、技能だ。アイテムはそれに使用する道具。それが何かによって、僕らが向いている能力が決まるのだ。大抵は職業に通じるものが多い。
ごくごくたまに複数持ちとか、レアスキルと言って“神官”とか“聖女”を示す杖とか錫杖とか出る時もあるけど、本当にたまにだ。
――なら、他の仕事は出来ないのか、って?
やれば出来るけど、大抵は半端止まりで趣味から出ない。やりたい事が別にある人には嫌なものだろうけど、ない人間にはありがたい。色々に手を付け、失敗を繰返す時間が省けるからだ。まぁアイテムがあったらあったで、同業と鎬を削るのは不可欠だからそれなりに障害はあるんだけど。
僕の番まではまだありそう。少しだけ体をずらし、祭壇の方を眺めてみた。
今、祭壇に立っているのは女の子だ。着ている服のくたびれ具合から見て、あまり裕福では無いお家の子のようだ。神父さまが促す。
「さあお嬢さん、聖水に手を入れなさい」
言われるままに、女の子が腕を大きな瓶に入れた。
パアッ!
瓶が発光し、白い球体が空中に出現した。それはやがて女の子の前で止まる。
光が消え、形になった。
それは彼女がやっと抱えられる位の大きさの箱だった。普通の木工細工の箱。空かさず神父様が鑑定。それが何かを明かした。
「神が貴女に下されたスキルは裁縫です」
「え~?」
すぐ仕事に出来るという点では当たり、だ。でも女の子は不服らしく、ぷくっと頬を膨らませている。
「踊り子さんとかが良かったなぁ……」
「これっ、贅沢言わないの、神様が下さったものなんだからね」
「裁縫なら、仕事は引く手あまただろう?」
待っていた両親が、ブスッとした女の子をたしなめているけど、ホッとしているのは明らかだ。踊り子だと衣装とかどっかに弟子入りとか、手間もお金もかかるしね。
その後も、喜んだりガッカリしたりが繰返される。
そして、僕の番が回ってきた。目の前の瓶を改めて見る。遠目で見るより中は深くなさそうだ。
「聖水に手を入れなさい」
言われるままに、手を入れた。ちゃぷん、と付けた感じは熱くも無く冷たくもない、普通の水だ――と思っていたら。
水面がゆらり、と動いた。そしてパッと発光し……光の玉が現れる。けど……何か、小さい。女の子の時は抱える程だったのに、今度は両手の平に収まりそうな大きさだ。
(……何だろう……?)
光が消え、物体が現れた。
それは――。
「こ、これは……!?」
鑑定した神父様がよろけた。そこままドスッと腰から倒れる。それでもなお、驚きの収まらない顔で僕の手の平にある、小さい箱を凝視する。
「神父様……あの……僕のスキル・アイテムは?」
僕が訊くと、ハッと我に返った神父様。まず僕に“落ち着いて聞いて下さい”と念を押す。いや……落ち着いて欲しいのは、神父さんになんだけど。
そう、呑気に思っていた僕に、神父様の言った答えは……。
「…………“オリガミ”、です……」
ざわつく室内。
「なんだ? オリガミって」
「透明の箱に小さい正方形の紙が入ってるだけじゃないか」
ヒソヒソと囁く声。それは全て疑問形で、答える人は誰もいない。
――でも僕は知っている。これがどう使う物なのかを。
ずっと――生まれる前から。
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる