2 / 27
カヤラ・オリガの前世の記憶
しおりを挟む
誰にも話した事は無いけど、僕には前世の記憶がある。
この世界に生まれる前、僕は日本という国で生きていた。死んだのは多分15歳。死因は分からない。
僕はずっと大きな病気持ちだったせいで、入退院を繰返していた。学校にもあまり通えず友人も少ない。馴染んだと思ったらまた入院。そんなだからクラスメイトの話題にもついて行けず、いつも浮いていた。だから学校もあまり好きでは無かった。
家も完全に、安らげる場所では無かった。家族も僕の治療費で生活が削られ、心身共に疲弊していたから。
そんなだから、誰の為にも僕が死んだ事は良かったと思う。
そしてこの異世界に転生した。今世は大病など患わないよう、健康に気遣って過ごすのが第一目標だ。
あれから帰宅し、僕は家族に囲まれた。
皆、僕がどんなスキルを授かるかが気になっていたらしい。注目される中、申し訳ない気持でそれを告げる。
「「「……オリガミ……?」」」
皆、呆然と呟いてから、問いかけるようにお互いの顔を見交わす。けど直ぐに全員、一様に首を振った。
「……何か、ごめん……」
僕はあの後。神父様に残るように言われ、“オリガミ”の説明を受けることになった。
この世界では“オリガミ”はレアスキルであり、用途が未だ謎ならしい。
確かに思い返しても、この世界で折り紙なんて見たこと無いな。僕は折り紙だと分かるけど、知らない人から見れば、ただの正方形の紙が入っただけの箱だもんね。
「後日、王家から魔術師が派遣される筈です。あちらの方が詳しいと思いますので、良きアドバイスを頂けると思いますよ?」
だから神の御心を信じて、悪く考えずにいて下さい。そう、言ってくれた。
小さくなっている僕に、母さんが笑顔で慰めてくれる。
「……なぜ、カヤラが謝るの? 気持は分からなくも無いけど、そう落ち込むものではないわ。何か利用出来るわよ」
兄さんも、
「どうとでもなる! スキルに関係なくても、出来る仕事はあるって!」
と、一緒に行ってくれた。その横で姉さんが
「それに王宮から探査が来るんでしょう? 専門家に調べてもらったら、何か分かるかもよ?」
現実に沿った意見を言ってくれる。最後に、
「何があっても力になろう。我々は、家族なのだから」
父さんが言って笑いかけてくれた。
「――ありがとう、皆」
ホッと肩から力が抜けた。笑顔になった僕に、家族もホッとしたように温かい笑顔をくれる。
「さ、ご飯にしましょう♪」
何もなかったように明るい声で、僕らに母さんは言った。それを合図に、皆食堂に向かう。
――優しい人達。
――僕がいなければ、前世の家族もこんな感じだったんだろうか?
そう思うとやっぱり、前世では……僕が死んで、良かったんだと思う。
この世界に生まれる前、僕は日本という国で生きていた。死んだのは多分15歳。死因は分からない。
僕はずっと大きな病気持ちだったせいで、入退院を繰返していた。学校にもあまり通えず友人も少ない。馴染んだと思ったらまた入院。そんなだからクラスメイトの話題にもついて行けず、いつも浮いていた。だから学校もあまり好きでは無かった。
家も完全に、安らげる場所では無かった。家族も僕の治療費で生活が削られ、心身共に疲弊していたから。
そんなだから、誰の為にも僕が死んだ事は良かったと思う。
そしてこの異世界に転生した。今世は大病など患わないよう、健康に気遣って過ごすのが第一目標だ。
あれから帰宅し、僕は家族に囲まれた。
皆、僕がどんなスキルを授かるかが気になっていたらしい。注目される中、申し訳ない気持でそれを告げる。
「「「……オリガミ……?」」」
皆、呆然と呟いてから、問いかけるようにお互いの顔を見交わす。けど直ぐに全員、一様に首を振った。
「……何か、ごめん……」
僕はあの後。神父様に残るように言われ、“オリガミ”の説明を受けることになった。
この世界では“オリガミ”はレアスキルであり、用途が未だ謎ならしい。
確かに思い返しても、この世界で折り紙なんて見たこと無いな。僕は折り紙だと分かるけど、知らない人から見れば、ただの正方形の紙が入っただけの箱だもんね。
「後日、王家から魔術師が派遣される筈です。あちらの方が詳しいと思いますので、良きアドバイスを頂けると思いますよ?」
だから神の御心を信じて、悪く考えずにいて下さい。そう、言ってくれた。
小さくなっている僕に、母さんが笑顔で慰めてくれる。
「……なぜ、カヤラが謝るの? 気持は分からなくも無いけど、そう落ち込むものではないわ。何か利用出来るわよ」
兄さんも、
「どうとでもなる! スキルに関係なくても、出来る仕事はあるって!」
と、一緒に行ってくれた。その横で姉さんが
「それに王宮から探査が来るんでしょう? 専門家に調べてもらったら、何か分かるかもよ?」
現実に沿った意見を言ってくれる。最後に、
「何があっても力になろう。我々は、家族なのだから」
父さんが言って笑いかけてくれた。
「――ありがとう、皆」
ホッと肩から力が抜けた。笑顔になった僕に、家族もホッとしたように温かい笑顔をくれる。
「さ、ご飯にしましょう♪」
何もなかったように明るい声で、僕らに母さんは言った。それを合図に、皆食堂に向かう。
――優しい人達。
――僕がいなければ、前世の家族もこんな感じだったんだろうか?
そう思うとやっぱり、前世では……僕が死んで、良かったんだと思う。
0
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る
がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。
その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。
爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。
爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。
『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』
人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。
『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』
諸事情により不定期更新になります。
完結まで頑張る!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる