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婚約者という人
しおりを挟む――15歳の秋――
陽が沈もうとしている。昼間は結構暖かかったのに、今は涼しいを通り越し肌寒く感じてきた。
カフェもそろそろ閉店時間だ。従業員達が客である僕をチラホラ見ているのを感じる。当然だ、昼前から陣取ってずっと席を立とうとしないんだから邪魔なんだろう。
迷惑をかけている自覚はある。でも、ここで待ち合わせしようと指定されたんだ。
なのに……当人は来ない。
「……遅いな……」
つい、呟いてしまったのは、待ち合わせの相手のことだ。
僕の婚約者、マリア・ナルシト。
スキルを授かってすぐに、引き合わされた婚約者。僕の父さんと彼女のお父上が親友で、その縁で出来た約束らしい。僕の父さんオリガ伯爵と、彼女のお父上であるナルシト伯爵が幼馴染みだった事から出来た婚約だ。僕らが結婚する事で結びつきを強化し、お互いの領地を発展させようという意図を汲んだものだ。
で、婚約した当人の僕は……迷惑だなと思った。
僕がでなく、相手のマリアがだ。謎スキル持ちでそれ以外は平凡な僕との婚約なんて、彼女にはイヤでしか無い。そうに違いない。
え、僕? 僕は別にイヤじゃ無かった。マリアは可愛いし明るい、僕なんかにはもったいないような良い子だから。
婚約という契約が終わり、当人である僕ら2人だけになって。
僕はポツンと、マリアに言った。
「マリアは、迷惑だよね」
「どうして?」
僕の呟きにキョトンと、本当に意味が分からないという感じのマリア。
「その……僕となんか、婚約するの。君ならもっと素敵な人が似合うのに」
そうだ。――こんな僕より、彼女ならもっと素敵な人が似合う。
でもそう言った僕に、彼女はブンブンッと首を振って怒ったみたいに詰め寄った。
「何故、そんな事を言うの? カヤラにはカヤラの良いところがあるのに!」
「マリア……?」
「カヤラと仲良くなれて、私は嬉しい! だからカヤラも、自分を卑下したりしないで!」
「…………!」
自分の事のように必死で言ってくれる様子に、何かが揺さぶられた。
――良い子だ。
前世でも、まともでなかった僕には、もったいない位の良い子だ。
こんな子が僕の婚約者なことに、感謝した。
そして……この子が喜んでくれるなら、出来る限りの事をしよう、と思った。
何年かの小遣いを貯めて、アクセサリーをプレゼントしたり。
誕生日や記念日には花束と、彼女に似合う装飾品もあげた。と言ってもマリアが欲しいと言ったのはすごく高価なものだったから、それと良く似たデザインの物を、あちこち駆け回って、探してプレゼントした。僕の懐だと、それが精一杯だったから。
マリアは、そんな僕からの贈り物に、不平も言わず、笑って受け取ってくれた。
「ありがとう、カヤラ。これからも私の事、大事に思ってね」
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