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舐められてるぞ
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なのに……最近は、あまり顔を合わせていない。
しばらくしたら友達から、“王太子殿下とその側仕えの方々と仲が良いらしい”って話を聞いた。様子を見る限り、かなり気安そうにしていたと。
即座に2人で話をしようと、待ち合わせした。聞いた話を全てして最後に思い切って指摘する。
「あまり良い事じゃあ、ないんじゃないかな」
僕らは下位なのだから弁えないと。
けど僕の意見に、マリアはクスッと上目使いで笑った。
「いやぁね、カヤラったら焼き餅?」
流し目みたいな表情が何だか妙に色っぽくて、顔がカーッと熱くなった。慌てて目の前で両手を振る。
「そ……それもない訳じゃないけど! いくら学園では身分の隔てはないと言っても、相手は高貴な方々だよ! 僕たちが近付いても良い訳がないから」
それに殿下はもちろん、側仕えの人達にもきっと婚約者はいる。そのご令嬢達かもしくは家が、マリアに危害を加える可能性だって。
でも僕がそう言ったら、ぴしゃりと否定される。
「ん、もう! カヤラは弱気なんだから……。私はね、私達の家の為にやってるの!」
「家の為?」
家族が関わるなら聞かないと。そう思っている僕に、マリアは堂々と言い放つ。
「そぉよぉ♪ 私が殿下達と仲が良ければ、何かあった時に心強いじゃない! 助けてもらえるかもでしょ」
――一理はある。
でも、いくら親しくなったからと言って、僕らの間で王家の方々に頼るような問題が起きるかな? と言うか万が一助けてくれても、その後のリスクはあるんじゃないか? そんな疑問が心の隅にフッと浮かんだ。けど、
「昔からずーっと、カヤラは気弱で、こういう事ダメでしょ? 私がやんなきゃ」
そう、言われたら……納得しなきゃいけないように思う。
タダでさえ僕は、前世でも人とうまく関われなかったんだから。
マリアみたいな人が、良いと思って行う事に反対してはいけない。だから僕は頷く。
「…………分かった……」
「ふふっ、カヤラ、大好き! だから……いつもみたいにパパとママには言わないでね! 頼んだからね!」
それだけ言うと、“じゃあ私、殿下達と遊びに行ってくるねー”と手を振って、行ってしまった。
「お前、絶対に舐められてるぞ」
翌日。
学園の食堂で僕が昨日の顛末を話し終えたら、ビシって感じで鼻先に指を突きつけられた。
入学してから初めて出来た友達である、エドワルド・ザッカードだ。騎士団長の息子で、お父上は父さんと同じ伯爵位。
「そ、そうかな……?」
「そうだよ! 多少仲良くなったからって、数多ある一貴族に王家が力を貸すか? 俺は貸さないに賭けるね。よっぽど国に貢献していない限り、特別扱いなんてしない。むしろお前の言った、排除される心配の方が俺は正しいと思う」
高位貴族全てがそう、とは言わないが……一部では、自分達より下の者に、危害を加える事に躊躇しない傾向がある。僕の前世の知識でも、やれ影を踏んだだの刀に少し触れただの、そんな理由で無礼討ちがまかり通っていた時代があったらしいし。
と、そこで、
「それになぁ……」
さっきまでの勢いがいきなり消えて、エドは渋い顔で口元を引き結んだ。彼に似合わないためらい。そんな状態が数分。その後、どうにか吹っ切れたのかとんでもない話を始めた。
「宰相閣下のご子息が婚約破棄したって話、聞いたことあるか? あれ、マリアが原因だぞ。何だか、そう……“真実の愛”に目覚めたからとか」
「ええっ!?」
思わず大きな声を上げる。――宰相閣下のご子息がそんな事をするなんて。
――貴族同士の婚約は宿命であり、義務だ。貴族同士打算で縁を結ぶこと、当人達の意思は関係無く、国の損益が1番に優先される。
“真実の愛”などという、一個人の感情でどうにか出来るものじゃない。
そんな事は……宰相閣下の子息なら知っていて当然だと思うのに。
でも、そう言った僕に、エドは彼らしくない、皮肉な笑みを口元に浮かべる。
「……重要なポジションだから知っていて当然なんて、それこそないぞ。重要だけに、誰もみーんな、耳に入れない事だってあるんだ。だからだろうな、家同士の関係がぶち壊されるとまでは考えなかったらしい。宰相子息様は婚約者に、堂々と婚約破棄を告げていた」
「うわ」
それって……国の先行き的には、まずいヤツでは……?
でもそこで、何故かエドがククッと笑う。おかしくて仕方ないというように。
「でも婚約者、ってのが……あ・の、ケイト・ラッセン公爵令嬢だったんだよなぁ……!」
「ラッセン嬢……?」
そんな僕らの会話がどこに届いたのか。
「ラッセン嬢! また貴女はそんな、珍妙な装いをして!! どれだけ周囲に悪影響を与えているのかお考えください!!」
噂をすれば、だ。
ヒステリックな声で注意する先生を前に、女生徒が平然として立っている。
ウェーブが緩くかかった黒髪をツインテールに結った、お人形のような美少女。
ケイト・ラッセン公爵令嬢が、そこにいた。
しばらくしたら友達から、“王太子殿下とその側仕えの方々と仲が良いらしい”って話を聞いた。様子を見る限り、かなり気安そうにしていたと。
即座に2人で話をしようと、待ち合わせした。聞いた話を全てして最後に思い切って指摘する。
「あまり良い事じゃあ、ないんじゃないかな」
僕らは下位なのだから弁えないと。
けど僕の意見に、マリアはクスッと上目使いで笑った。
「いやぁね、カヤラったら焼き餅?」
流し目みたいな表情が何だか妙に色っぽくて、顔がカーッと熱くなった。慌てて目の前で両手を振る。
「そ……それもない訳じゃないけど! いくら学園では身分の隔てはないと言っても、相手は高貴な方々だよ! 僕たちが近付いても良い訳がないから」
それに殿下はもちろん、側仕えの人達にもきっと婚約者はいる。そのご令嬢達かもしくは家が、マリアに危害を加える可能性だって。
でも僕がそう言ったら、ぴしゃりと否定される。
「ん、もう! カヤラは弱気なんだから……。私はね、私達の家の為にやってるの!」
「家の為?」
家族が関わるなら聞かないと。そう思っている僕に、マリアは堂々と言い放つ。
「そぉよぉ♪ 私が殿下達と仲が良ければ、何かあった時に心強いじゃない! 助けてもらえるかもでしょ」
――一理はある。
でも、いくら親しくなったからと言って、僕らの間で王家の方々に頼るような問題が起きるかな? と言うか万が一助けてくれても、その後のリスクはあるんじゃないか? そんな疑問が心の隅にフッと浮かんだ。けど、
「昔からずーっと、カヤラは気弱で、こういう事ダメでしょ? 私がやんなきゃ」
そう、言われたら……納得しなきゃいけないように思う。
タダでさえ僕は、前世でも人とうまく関われなかったんだから。
マリアみたいな人が、良いと思って行う事に反対してはいけない。だから僕は頷く。
「…………分かった……」
「ふふっ、カヤラ、大好き! だから……いつもみたいにパパとママには言わないでね! 頼んだからね!」
それだけ言うと、“じゃあ私、殿下達と遊びに行ってくるねー”と手を振って、行ってしまった。
「お前、絶対に舐められてるぞ」
翌日。
学園の食堂で僕が昨日の顛末を話し終えたら、ビシって感じで鼻先に指を突きつけられた。
入学してから初めて出来た友達である、エドワルド・ザッカードだ。騎士団長の息子で、お父上は父さんと同じ伯爵位。
「そ、そうかな……?」
「そうだよ! 多少仲良くなったからって、数多ある一貴族に王家が力を貸すか? 俺は貸さないに賭けるね。よっぽど国に貢献していない限り、特別扱いなんてしない。むしろお前の言った、排除される心配の方が俺は正しいと思う」
高位貴族全てがそう、とは言わないが……一部では、自分達より下の者に、危害を加える事に躊躇しない傾向がある。僕の前世の知識でも、やれ影を踏んだだの刀に少し触れただの、そんな理由で無礼討ちがまかり通っていた時代があったらしいし。
と、そこで、
「それになぁ……」
さっきまでの勢いがいきなり消えて、エドは渋い顔で口元を引き結んだ。彼に似合わないためらい。そんな状態が数分。その後、どうにか吹っ切れたのかとんでもない話を始めた。
「宰相閣下のご子息が婚約破棄したって話、聞いたことあるか? あれ、マリアが原因だぞ。何だか、そう……“真実の愛”に目覚めたからとか」
「ええっ!?」
思わず大きな声を上げる。――宰相閣下のご子息がそんな事をするなんて。
――貴族同士の婚約は宿命であり、義務だ。貴族同士打算で縁を結ぶこと、当人達の意思は関係無く、国の損益が1番に優先される。
“真実の愛”などという、一個人の感情でどうにか出来るものじゃない。
そんな事は……宰相閣下の子息なら知っていて当然だと思うのに。
でも、そう言った僕に、エドは彼らしくない、皮肉な笑みを口元に浮かべる。
「……重要なポジションだから知っていて当然なんて、それこそないぞ。重要だけに、誰もみーんな、耳に入れない事だってあるんだ。だからだろうな、家同士の関係がぶち壊されるとまでは考えなかったらしい。宰相子息様は婚約者に、堂々と婚約破棄を告げていた」
「うわ」
それって……国の先行き的には、まずいヤツでは……?
でもそこで、何故かエドがククッと笑う。おかしくて仕方ないというように。
「でも婚約者、ってのが……あ・の、ケイト・ラッセン公爵令嬢だったんだよなぁ……!」
「ラッセン嬢……?」
そんな僕らの会話がどこに届いたのか。
「ラッセン嬢! また貴女はそんな、珍妙な装いをして!! どれだけ周囲に悪影響を与えているのかお考えください!!」
噂をすれば、だ。
ヒステリックな声で注意する先生を前に、女生徒が平然として立っている。
ウェーブが緩くかかった黒髪をツインテールに結った、お人形のような美少女。
ケイト・ラッセン公爵令嬢が、そこにいた。
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